VC Vol.010 株式会社サイバーエージェント・キャピタル / シニア・ヴァイス・プレジデント・竹川 祐也 さん

VC 第10回は、数々のインターネットビジネスを生みだしてきたサイバーエージェントグループの事業創出・拡大の経験をもとに、成長産業であるインターネット関連ビジネスに挑戦するベンチャー企業へ投資を行う、サイバーエージェント・キャピタルの竹川 祐也さんに取材させていただきました!

竹川 祐也  Takegawa Yuya / シニア・ヴァイス・プレジデント

証券会社VC部門、ベンチャー企業CFO/CEOを経て2012年サイバーエージェント・キャピタルへ入社。ベンチャーキャピタリストとしてシードステージの投資に携わる傍ら、事業会社とスタートアップのオープンイノベーションコミュニティ”CROSSOVER”の立ち上げや、シリーズA以降のスタートアップ向けピッチイベント”RISING EXPO”のプロデューサーを経験。2014年、シード特化型ファンド(投資枠)のSeed Generator Fund(シード・ジェネレーター・ファンド)を創設し、現在に至る。(プロフィールnoteより引用)

シード期の答えのない挑戦を共にしたい

NovolBa 原(以下、原):竹川さんの担われている役割や、お仕事の内容を詳しく教えてください!

サイバーエージェント・キャピタル 竹川(以下、竹川):役職はシニア・ヴァイス・プレジデントになりますが、投資業務や投資先スタートアップへのサポート、社内の若手社員の育成まで様々な役割を担っています。
これまで行ってきた業務を少しお話しますと、2012年にサイバーエージェント・キャピタルのベンチャーキャピタリストとしてのキャリアをスタートした当初は、新規投資・投資先支援といった業務を中心に活動しており、その後、事業会社とスタートアップを繋ぐコミュニティ「CROSSOVER」の立ち上げや「RISING EXPO」というピッチイベントの企画・実行にも携わってきました。

また、サイバーエージェント・キャピタルがシード投資を行っているVCとしてのイメージが薄いという課題に対しての解決策として、シード特化のファンドを投資枠という形で2014年に立ち上げ、シードスタートアップへの積極的な投資を行うVCとしての立場を確立してきました。

答えが見えない難しい状況の中でも、常に問いを立て続け、挑戦し続けるスタートアップに魅力を感じていますし、投資家として一つでも多くの挑戦を応援していきたいと思っています。
私自身もスタートアップ企業の経営者としての経験があるからこそ、起業家にとって、単に投資家と起業家という関係でなく、もう少し近い、気軽に相談できる関係であることを大切にしています。

スタートアップのバリューアップを支える「グロースチーム」

原:サイバーエージェント・キャピタルさんの特徴についてお聞きしたいです。

竹川:2006年から投資を行ってきた実績・歴史があるベンチャーキャピタルです。
投資領域は、後の成長支援とのシナジーも考えて、我々が深く理解・支援のできる事業内容であることを大事にしており、主にインターネット・IT領域にフォーカスしています。
また、シード期のスタートアップへ主に投資をしており、リード投資も積極的に行うファーストインベスターでありたいと考えています。

投資スタンス以外の特徴のひとつに、「グロースチーム」の存在もあります。

技術、広報、人事、採用、ロビイング、といった各領域をサポートする担当メンバーがおり、彼ら自身がサポートするだけでなく、ハブとなって外部の専門家やサイバーエージェントグループとのつなぎ込みも行うなど、幅広くスタートアップの支援を行っています。
支援チームの中にはグループ会社のCTO経験があるメンバーがいるなど、他に例をみないプロフェッショナルなメンバーで構成されています。
また、各種勉強会やミートアップなども随時開催しており、シード期スタートアップのバリューアップのため、サポート体制を充実させながら、チームメンバー全員でしっかりフォローしていきます。

起業家同士が繋がれる「きっかけ」の場を

原:スタートアップの成長にとって必要なこと、それに対して行われている施策を教えて頂きたいです。

竹川:
スタートアップの成長のためには、起業家同士・起業家と投資家、ともに「良質なコミュニティ」が必要です。

まず起業家同士という意味では、投資家に中々相談しにくい悩みや課題も、良質な起業家コミュニティがあれば、起業家同士が相談でき、お互いに成長を支え合えると考えています。国内だけでも100社以上を超える投資先スタートアップがある我々ならではの取り組みができると思っているので、投資先の起業家それぞれの事業への想いやひととなりを把握した上で、私たちが繋ぎ役となり、起業家と起業家が出会う「きっかけ」を提供していきたいと考えています。
具体的には、年に一度の投資先全社を集めた忘年会や小規模でのランチ会・勉強会の開催、各種イベントなどネットワーキングのサポートを行っています。

また、国内外に拠点を持つ弊社ならではの取り組みとして、月に1回「グローバルミーティング」を開催しています。このミーティングは、7か国9拠点に広がるサイバーエージェント・キャピタルの国内・海外メンバー全員が集まり、各国スタートアップの動向や経済状況、投資先の共有や意見交換などをしています。
この場に、投資先の起業家の方にも参加していただくことで、自国以外での事業機会や競合の動向などを知る機会になるのとともに、後日他国を訪問した際にその国の投資家・起業家と繋がるきっかけの機会提供の場にもなっています。
直近で言うと、海外のWeb3やNFT周りの事業環境やプレーヤーの状況などもリアルタイムで把握できるため、我々キャピタリストおよび投資先のスタートアップの皆様にとっても、大きな役割を担っている場となっています。

また、投資家との良質なコミュニティ形成の場として、毎月第二水曜日の夜に招待制のピッチイベント「Monthly Pitch(マンスリーピッチ)」を開催しています。
このイベントは、毎月応募・推薦いただいた企業の中から、厳選なる選考をもとに選ばれた8社程度のスタートアップが、投資家の前で登壇をするピッチイベントです。
国内でアクティブに投資を行っている著名VC・エンジェル等の投資家・CVCや事業会社、そして同時に参加している起業家とも一気に繋がりをつくることができるのが、大きな魅力ではないかと思います

挑戦する上で「問い」の立て方が成長を左右する


原:投資される上で特に気を付けて見ているのは、どんなところでしょうか。

竹川:
「起業家」とそれを支える「チーム」、そして「狙うマーケット」、この3つの観点につきると思います。

私個人としては、特にスタートアップ・起業家がどのような「問い」を立てているかを見ています。日本人は与えられた問いを解くのは上手な人が多いと思いますが、スタートアップは起業家自らが解くべき課題、「問い」を設定するところからはじまります。
流行りの事業や既存ビジネスのフォロワーではなく、誰のどのような課題を解決するのか、その課題を解決することで世の中にどのようなポジティブなインパクトがあるのか、それは自分たちじゃないとできないのか。
0から「問い」を立て、周りに反対されてもその解決に挑戦していく、気概のあるスタートアップに私は共感しますし、応援していきたいと思っています。

成長する過程で得たものが、新たなスタートアップの誕生に

原:今後の展望をお聞かせください。

竹川:
スタートアップが生まれるエコシステムを創っていきたいと考えています。

そのために、グロースチームをハブにした社内外の専門家ネットワークやサイバーエージェント本体の出資である藤田ファンドとの連携、Monthly Pitch等の良質な投資家コミュニティへのアクセスの提供など、有望なスタートアップが成長しやすい環境を整えていくことが私たちの使命だと思っています。
サイバーエージェントはインターネットビジネス黎明期から環境の変化を機会ととらえ、様々な事業を立ち上げてきたスタートアップであり、その遺伝子が組織に受け継がれていると思います。
その意味でも我々サイバーエージェント・キャピタルのベンチャーキャピタリストが、その遺伝子、0→1を創り上げる過程やその後の成長の中で得た経験・知識を、次々と生まれてくるスタートアップに適切な形で還元することで、継続的にスタートアップのエコシステムを盛り上げることができると考えています。

これからも、起業家ファースト、起業家へのリスペクトを忘れずに、サイバーエージェントグループのベンチャーキャピタルならではの独自のスタイルでスタートアップ支援をつづけ、エコシステム、業界全体を盛り上げていくことを念頭に頑張っていきます。
応援よろしくお願いいたします。

サイバーエージェント・キャピタル

サイバーエージェント・キャピタルは成長産業であるインターネット関連ビジネスにおいてマネジメント・リーダーシップに秀でた起業家が率いるベンチャー企業へ投資を行うベンチャーキャピタル。 数々のインターネットビジネスを生みだしてきたサイバーエージェントグループの事業創出・拡大経験のもと、シード・アーリー期の投資のみならず、投資先企業の成長支援を行っている。
2006年の設立以来、急速な経済成長を遂げるアジアを中心に7カ国9拠点にてベンチャーキャピタル事業を展開し、グローバル展開を目指すスタートアップを支援している。(会社HPより引用)

サイバーエージェント・キャピタル (cyberagentcapital.com)


【編集後記】
大学時代から株式投資に興味を持ち、投資に鋭い視点と独自の経験を持たれている竹川さん。ベンチャー企業での経営経験もあるからこそ、起業家の悩みや課題に対する理解度も高いと感じました。「課題かも分からないことに興味をもち、答えのない挑戦をするのが面白いです!」と、目を輝かせてお話される竹川さんのお姿に、起業家と同じくらいの熱量を感じました。(原 康太)


取材日:2022年5月19日
インタビュアー: 原 康太

撮影・編集:山田 直哉

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