fastalabel CEO 上田英介 NovolBa

Vol.039 FastLabel株式会社 / 代表取締役 ・上田 英介さん

第39回は、「AI革命のインフラになる」をミッションに掲げ、AI開発に関わる幅広いソリューションを提供するFastLabel株式会社(以下本文中は、FastLabel)、代表取締役CEO・上田 英介さんにインタビューさせて頂きました!AI領域に挑戦する背景から、日本全体の産業改革を目指す上でのエコシステム戦略に迫ります。

上田 英介 Ueta Eisuke / 代表取締役

九州大学理学部物理学科情報理学卒。株式会社ワークスアプリケーションズでソフトウェアエンジニアとして2年間従事。2年目にエンジニアとして初となるロサンゼルス支社へ赴任。その後、イギリスのAIベンチャーでMLOpsのアーキテクチャ設計や開発を担う。AIの社会実装をする中で感じた原体験をもとにFastLabelを創業。(Wantedlyより引用)

「人生をかけて解決したい」強い気持ちが起業の原動力に

NovolBa 原:創業の経緯についてお聞かせください。

FastLabel 上田:もともとワークスアプリケーションズという会社で働いており、主に会計システムを開発するエンジニアを務めていました。2年目にはロサンゼルス支社に赴任し、請求書管理サービスの開発・設計をする中で、AIが今後のソフトウェアの進化において重要な役割を持つことを強く認識しました。*¹教師データ作成や*²アノテーションの部分で多くの企業が課題を感じていると実感した経験から、イギリスのAIベンチャーへ転職し*³機械学習の領域に関する知見を深めました。その後、次のキャリアステップを考えていた際、共同創業者の鈴木と出会いました。

*1:AI開発のプロセスにおいて、データに情報を付加するプロセスのこと
*2:AIに学習させるために必要なデータのこと
*3:コンピュータが大量のデータを学習することで、データのルールやパターンを抽出する技術です。

AI開発におけるアノテーションについて、「大量なデータが必要であること」、そのために、「エンジニアの方が労働集約的な仕事に集中している」という課題を二人とも実感していたことで意気投合しました。テクノロジーを使い、その課題を解決したい思い、起業・現在のサービス提供にたどり着きました

:起業に興味があってもなかなか踏み切れない方も多いと思います。上田さんがそこに踏み切れた一番の想いは何ですか。

上田AIは、人生をかけてやっていく大きなテーマとして意味があると考えたからです。WindowsやmacOSなどのソフトウェアは、この20~30年で大きく進歩してきました。次はAIが進歩する時代だと思います。よく「Software is eating the world.」と言われますが、今は「AI is eating the software.」に変わってきています。今後中長期的にも、AIは世の中に広く浸透し、人々の働き方や産業構造を変えていくものだと思います。AIの分野に挑戦することで、世の中に対して新たな価値を生むことができると考え、選択肢の一つとしてあった起業を選びました。

:起業を「リスク」と捉えなかったのですか?

上田:たとえ起業がうまくいかなくても、業界で何かしら仕事をして食べていけると思っていたため、リスクとは考えていませんでした
考えるべきことは、起業するかどうかでなく、まずは自分にとって何が一番大切なのかの基準を明確にすることだと思います。「世の中に新しい価値を提供すること」なのか、「趣味・暮らしの時間」なのか、など自分の思考・価値観を整理することで、取るべき行動が自然と見えてくるはずです。

プラットフォームを提供し、AIのエコシステムを実現する

日本産業のAI領域における課題点、またそれをどう解決していこうとされているのかお聞きしたいです。

上田:日本の産業において、DXやAIのニーズが高まっている一方で、なかなか現場レベルでは浸透していないです。業界構造の変え方、どうやって今の現場の仕組みを改善していくところで多くの企業が苦戦しています。これは企業単体の課題ではなく、業界・日本の産業全体の課題だと捉えています。だからこそ、私たちが多くの企業の方々と共にAIのエコシステムを実現し、産業全体に新しい価値を提供していくことが重要だと考えています。

:多くの企業を巻き込み、エコシステムを形成していく考えは、起業当初から持たれていたのですか。

上田「産業全体に新しい価値を提供する」という未来を見据えたとき、起業当初からエコシステム戦略は頭の中にありました。AI開発におけるアノテーションにおいて、実は多くの企業が似たような作業を行っています。エコシステム戦略として、データ自体は個人情報などを含むため連携は難しいとしても、基盤となるモデルを色々な会社で活用できるプラットフォームを提供していきたいです。それを実現することで、それぞれの企業が「より新しい価値を生み出す」部分に注力していけると考えています。
今は国内で競っているだけではだめで、世界を見据えて戦っていくために日本としての競争優位性を上げる、産業全体を押し上げていくことが大事です。日本の産業全体で知見を再利用し合える仕組みを作り、産業の成長速度を上げることに繋げていきたいと考えます。

:同じプラットフォームを活用することに抵抗を覚える企業などはいないですか。

上田:重要なのは「プラットフォームを使う・使わない」ではなく、「クライアント固有のデータを使い、どんな学習をさせるか」ということです。それを作るための汎用的なモデルを構築し教師データを使う方が、業務効率を上げることができるため、企業にとってもメリットは多いと思います。クライアントのデータを各企業が持っているという部分が差別化や強みのポイントであり、本質的に重要なのはその部分だとお伝えしています。

その上で、全企業にとってプラスになるプラットフォームであるために、相手にどういったメリットを提供できるかを一番重要視しています。一社一社と向き合い、ディスカッションを重ね、懸念点を一つずつ解消していくことを大切にしています。

AIを通して日本の産業全体を押し上げる存在

:プラットフォームの更なる普及を目指す上で、会社の事業として目指すところをお聞かせください。

上田:これまでは、アノテーションの“データを作る部分“にフォーカスしていました。アノテーションの代行作業やツールの提供といった、ベンダー的な立ち位置は今後も成長させつつ、その周辺の領域もサポートしていきたいと思います。
例えば、AI開発のデータ収集やAIに学習させるためのデータ加工、学習後の推論やチェックといった一連のプロセスを、当社のツールで一気通貫で担えるように、事業を拡大していきたいです。
それを実現することが、当社のミッション「AI革命のインフラになる」に繋がると考えています。AI開発のために必要なものが全て揃うプラットフォームを創ることができれば、企業は個別のUIやユースケースに集中できます。結果、それが日本産業全体の発展に繋がっていくと考えています。

そのミッションを達成するため、どんな組織にしていきたいですか。

上田:AIはあくまでも手段と捉えています。人工知能が発達し、あらゆるものが便利になる時代、この進化は世界的に見ても今後ますます拡大していきます。FastLabelはそこに取り組むことで、日本企業全体を押し上げ、新しい価値を次々と生み出していきます。だからこそ、そこにやりがいを感じ、日本に留まらず世界に目を向けて挑戦できる組織でありたいと思います。
新しいことにチャレンジできる人、目標を高く持っている人、日本の産業の主軸を担う部分に関わりたい新しいメンバーも絶賛募集中です。スキルも大事ですが、それ以上に日々進化するAI領域を自ら積極的にキャッチアップしていくマインドを持っている方と、一緒に働きたいですね。

本日はありがとうございました!

FastLabel株式会社

人工知能(AI)が全世界の人々の生活を豊かなものとする社会のインフラとなることを目標として掲げる。具体的にAI開発を10倍のスピードで速くするために、教師データを作成するプロセスであるアノテーションを次世代のコーディング技術として捉え、特別な知識がなくとも革新的な製品を作成することができるよう、AIアノテーションプラットフォームである「FastLabel」を開発し、良質なデータを提供している。(PRTimesより引用)

FastLabel – 最高品質の教師データを。


【編集後記】

「起業をリスクと捉えていなかった」という上田さんの言葉が印象的でした。何かに挑戦するとき、思考を整理することで「リスク」そのものの概念がなくなるのだと感じました。これは起業に限らず、前に進むとき必要な考えとして、私も頭の中に叩き込んでおきたいと思います。(原康太)

取材日:2022年9月21日
インタビュー/編集/撮影:原 康太
校閲:山田 直哉

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