CoreTissueEngineerring城倉洋二(代表取締役)

Vol.004 CoreTissue BioEngineering株式会社 / 代表取締役社長・城倉 洋二 さん

第4回は、医療業界の再建手術の領域で新しい医療機器を開発し、日本発の世界展開を目指されるCoreTissue BioEngineering株式会社、代表取締役社長・城倉洋二さんにインタビューさせて頂きました!

城倉洋二  Jokura Yoji / 代表取締役社長

早稲田大学院時代の経験と教授との繋がりにより、2016年にCoreTissue BioEngineering株式会社を設立。再建治療に使用する人工靱帯の開発における日本発、世界発を目指している。

再生医療に新しい方法をミッションに掲げ挑戦する

CoreTissue BioEngineering 城倉(以下、 城倉):我々は、膝前十字靭帯の再建用人工靭帯を日本で開発しています。膝前十字靭帯は膝の大腿骨と脛骨をつないでいる重要な靭帯です。この靭帯をスポーツなどで切ってしまった患者さんの再建治療をする際に使用する、 “脱細胞化した動物の組織”から作られた人工靭帯を医療機器として開発しています。
通常は自分の身体の組織を一部採取し、移植する再建手術を行いますが、人工靭帯を代わりに使用することで、自分の組織を傷つけず再建することできる医療を目指しています。

NovolBa 原(以下 原):「再建手術」についてもう少し具体的に教えて頂けますか?

城倉:膝前十字靭帯の手術では、通常は腿の裏側にあるハムストリング腱や膝にある膝蓋腱を採取して、それを再建治療に使用しています。このように現在の再建治療の中で患者さん自身の健康な組織を採取して行う再建手術が多くありますが、移植するために「自分の身体の組織を採取する手術」と「採取した組織を移植する手術」、計2回も手術を行うため、身体への負担が大きいのです。
そもそも自分の健康な組織を採ることを避けたいと考え、私たちはそこを解決することをミッションに掲げ、挑戦しています。

 また膝前十字靭帯の他にも、乳房再建術や心臓バイパス術においても、自分自身の健康な組織の一部を採り移植することで再建治療を行っています。こういった再建治療は年間で10万件以上も行われています。

原:再建治療の実態を知り、「治療事例がこんなにもあるなんて」という驚きとともに、とても身近に感じますね。

日本にとどまらず、海外までを見据える事業の可能性

原:城倉社長がこの事業へ参画することになったきっかけを教えてください。

城倉:もともとは、私が社会人になってから通っていた早稲田大学・東京女子医科大学の大学院時代の教授の一人であった岩﨑清隆教授が、生体組織の脱細胞化の分野で技術開発をされたことがはじまりです。
岩﨑教授の研究が2014年に文部科学省のSTARTプロジェクト(当時。今はJST STARTプロジェクト)に採択され、ヒツジを使った試験で概念実証を成功させたことを機にCoreTissue BioEngineering株式会社が設立されました。
岩﨑教授との大学院時代の繋がりから、代表を引き受けてほしいと声をかけて頂きました。会社をつくるために創業したというよりも、研究の流れで創業したという形ですね。

原:素敵なご縁ですね!スタートアップの社長になられるということに不安はなかったですか。

城倉:もちろんリスクも考えました。でも、50歳になり、会社生活の総仕上げを考えた際に、リスクをとって仕事をしたい!と思うようになりました。これは働く中で芽生えていったことですが、やはりモノづくりや開発の現場の近いところにいたいと思っていました。
加えて、日本にいるとあまり感じることはありませんが、世界における日本産業の地位が低下していることは明らかで、そこを盛り返すことに挑戦したいという思いもあり、リスクより魅力を強く感じていました。

原:リスクをとって仕事をしたい!という城倉社長の強い想いを感じます。
そんな中でも色々とスタートアップとしての苦労は多かったのではないですか。

城倉:そうですね。私は長い間、外資系企業に勤めており、“助成金”とか聞いたことがなく、会社経営の経験もなかったので、かなり苦労しましたよ。

原:様々な苦労の中で、企業やVC(ベンチャーキャピタル)、投資家、助成金など出資や資金調達をできたのには、何が関係していると思われますか?

城倉:技術が良いことはもちろんです。それに加え、前職で医療製品の開発から薬事まで携わっておりました。研究開発から薬事承認、市場までのロードマップを理解していたため、どうすれば医療機器として完成できるかをアピールすることができ、投資家さんやVCからの出資や政府系の助成金を頂くことができたのだと思います。

原:これからも色々な障害や挑戦があるかと思いますが、いまどのようなことを超えていくことが一番重要だと考えていますか?

城倉:やはり開発費用の資金です。医療分野は、他の分野と比べても開発期間がとても長いです。弊社も、2013年に最初の開発が始まり、現在開発している製品は計画では2025年に承認取得予定です。患者さんに植え込む医療機器は、開発から製品化までに十数年かかるため、開発期間に資金を維持する大変さは一番のハードルです。私たちとは別に、開発期間の長い医療機器を開発していた日本の医療ベンチャー企業が1社ありましたが、大企業に買収されました。難しいからこそ挑戦したい、私たちは臨床試験まで自社のみで行い、それをきっかけにIPOを目指すとともに、海外に挑戦できる日本発の製品を生み出したいと思っています!

原:日本発世界へ、ワクワクしますね!

城倉:そう思って頂けてうれしいです!外資系企業に18年間に勤めていた時は、アメリカで開発された医療機器を日本に持ってきていました。その過去において、脱細胞化した生物組織由来の医療機器を取り扱っていたことを岩﨑教授がご存知で、お話を頂いたきっかけにもなりました。
先生からお話を伺い、3か月間、会社としての可能性を見させて頂き、「この製品であれば海外に持っていける!この事業でやっていける!」と感じました。
外資系企業に勤めていた時は、日本にない医療機器をもってくることがある一方で、日本から出ていく“日本発の製品”が無い状況に悔しさを感じていましたので、やるしかない!と思っていました。

原:今までのお話からも社長の熱い想いがあったからこそ、様々なハードルを乗り越えてこられたことが分かりますね!
お話の中で海外への想いが強く感じるのですが、もともと海外志向が強かったのですか。

城倉:はい、最初に勤めた日本の大手消費財化学メーカーでも海外領域を担当しており、その後、外資系企業に十数年勤めていました。
日米を渡り歩く中で、海外から日本へ新しいものが入ってくる現状を目の当たりにし、日本ももっと上手くやれば、海外へ積極的に日本の製品を出していけるのではないかと感じる部分がありました。

原:キャリアを積まれる中で、日本から海外への志向が強くなったのですね。

城倉:そうですね。加えて海外という市場に大きな可能性を感じていたこともあります。

医療分野で事業化するためには、正直、日本だけでは投資額に見合ったリターンが見込めないのが実情です。
そのためにも海外も視野に入れた事業にすることが重要と考えています。
例えば、膝前十字靭帯再建用の人工靭帯の市場規模を日本とアメリカで比較すると、日本は200億円、アメリカはその10倍の2000億円のマーケットと考えています。ニッチな市場なので、海外に挑戦していかないと利益がでないという難しさもありますが、逆に市場として大きすぎないことが、他の企業を入り込ませず、競合を生みにくいという利点がありますね。

 

CoreTissue BioEngineeringが描いていきたい未来とは

原:最後にCoreTissue BioEngineeringさんの目指される世界についてお聞かせください!

―ビジョンを実現するために、安全、安心できる良いものを

城倉: まず、弊社が掲げている「自己の組織を犠牲にすることなく治療が完了する再建手術を目指して」というビジョン通り、再建手術を受ける患者さんで、治療に適した組織を自身から採取できるか分からず困っている患者さんや、不十分な治療になってしまう方々を助けたいです。
私たちが安全・安心できる良いもの開発することで、そういった方々のニーズに応えていけたらと思っています。

―日本発の世界初にリスクをもって挑戦することを

城倉:外資系の企業に長く勤めていた経験から、画期的なものはどんどん海外から入ってきて、逆に日本から海外へは出ていってないということを感じていました。
私たちの持っている技術で、世界に挑戦したいと思っており、ベンチャー企業だからこそ、リスクをとって挑戦していけると思っています。
日本発の世界初、大学発ベンチャーを目指していきたいです。

CoreTissue BioEngineering株式会社

CoreTissue BioEngineeringは、膝前十字靱帯(ひざぜんじゅうじじんたい)の再建治療に使用する人工靱帯を開発しています。“自己の組織を犠牲にすることなく治療が完了する再建手術を目指して”というビジョンを掲げ、再建治療用の新しい医療機器を世の中に送り出そうと挑戦している企業です。

【編集後記】
CoreTissue BioEngineeringさんのミッション・ビジョンはもちろん、日本発に挑戦したい!という、城倉社長の熱く真っ直ぐな想いにとても感動しました。これから更に開発が進み、医療機器業界に日本の新しい技術が広まる日が来るのが楽しみですね。そうした世界が来ることで、スポーツ大国「日本」のスポーツ選手の寿命が伸びる未来も想像でき、とてもワクワクします!
今後の動きがますます楽しみです!ありがとうございました。(原康太)

取材日:2021年11月12日
インタビュアー:原 康太   写真:西 可菜子   編集:神成 美智子

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