NovolBaライターの麓(ふもと)です。ずっとパラレルキャリアを歩んできました。
複数のキャリアを同時並行で、それぞれ複数の目的と目標を設定して歩む仕事人生はちょっと大変かもしれませんが、楽しくやりがいがあります。自分自身のやりがいだけでなく、関わる会社や人たちにも私と関わったメリットがあるようにと願って進んできました。
複業人材を活用する会社さんはどこも柔軟性に優れています。その柔軟性はオフィスの素敵さにも表れているように思います。複業と採用とオフィス環境、どんな相関があるのでしょうか。切っても切れない2つの視点でイベントを取材しました。
イベント概要
- テーマ:『柔軟性』こそが採用強”社”の絶対条件!?
~自社関係人口&採用母数爆増のカギは「オフィス環境」と「複業」?~ -
開催日:2023年10月25日(水)19:15-21:15
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場所:マネーフォワードオフィス
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〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
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登壇者:逸見 勇太(株式会社Another works執行役員 兼 営業部長)
林 昌毅(株式会社NovolBa スタートアップオフィス エバンジェリスト) -
共催:NovolBa、Another works
ファシリテーター、登壇者
イベント内容
強い会社、強い採用に「柔軟性」は不可欠
林:テーマが「柔軟性こそ採用強“社”の絶対条件!」ですが、柔軟性が不可欠とはどういうことでしょうか。
逸見:会社として強い採用をしたいと考えたときに、いろいろな側面で柔軟性が必要だということです。コロナ禍の前後で会社の在り方が変化しています。採用の面で言うと、一緒に働くメンバーが変わるスパンが圧倒的に速くなったと皆さんも実感していらっしゃると思います。トヨタの社長が言うように終身雇用はもはや難しい雇用形態です。人材が流動する前提で、事業も採用も組み立てていかなければなりません。
事業は立ち上げた時点で10年後も存続しているかはわかりません。そんな状況で正社員雇用を行うのは被雇用者にとっても企業にとってもハイリスクです。業務委託は事業拡大の過程ではメンバーを増やしやすく、事業縮小の場面では状況に合わせたチームで蘇生ができます。雇用形態に柔軟性を持たせるためには、複業の活用が不可欠です。
外部人材活用の先の「真の複業活用」とは
林:複業の活用とは業務委託として外部人材の活用ということでしょうか。
逸見:ただ外部人材を入れて活用しているだけではもったいないというのが、Another worksが掲げていることです。もちろん世の中の企業の多くが副業活用に着手できていないのですから、活用できているだけで先行、差別化できています。その先に「真の複業活用」があるのです。
適材適所で「真の複業活用」ができたら、
①正社員と同等かそれ以上のパフォーマンスが望める
②外部人材による多様性が生まれる(例)新規事業の種など)
③高エンゲージメント&高コミットメント状態
を望むことができます。
「複業」は”副業”ではない
林:ところで「複業」と「副業」は違うのでしょうか。
逸見:違います。僕らの定義する「複業」は金銭報酬のみではない、スキルを伸ばしたい、成長したいなどという感情報酬や経験報酬といった複数の目的を持った仕事のやり方です。「副業」金銭報酬のみを求めて実施することがほとんどですが、「複業」はそれだけに留まりません。そしてこの「複業人材」を巻き込んでいくうえで必要な金銭以外の報酬を形作れるのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
MVVを持ち合わせたうえで外部人材を活用することで、働いてもらう人に感情的な欲求を満たしてもらうことも可能になります。
それが充足された状態の例を挙げると、業務委託とのあるあるのコミュニケーションに「御社」があります。社員は自社のことを「弊社」と言います。そこが異なってしまいがちです。外部人材の方に自社を自分ごと化してもらい、「私と御社」の関係を「私の弊社」にし、「私が弊社」まで持っていきたい。それを可能にするのがMVVです。
複業×MVVで向上するもの
林:MVVと「真の複業活用」について説明してください。
逸見:業務委託の方の感情報酬は、MVVを織り込むことで生まれてきます。「この会社に携わりたい!」という想いは採用の瞬間にはあまり高くなく、一緒に働くことで高まっていくものです。業務委託の方との日常的なコミュニケーションは少ないことが多いので、意識して評価を伝えることで高めていくことができます。
MVVを伝えると良い人材、フィットする人材が来てくれる、というのはもちろんなのですが、同じ感性の人が集まりやすいというメリットもあります。MVVはフィルターです。優秀な人に優秀な仕事、高いパフォーマンスを出してもらうには、帰属意識が大切です。そのためにMVVが重要になってくるのです。
複業人材にはモチベーションを高く保って仕事をしてもらうのが大切です。金銭報酬のみを目的としていない複業こそ、「自分が複業していることで得られるもの」や「成長」が見えることがモチベーションのエンゲージメントを上げるのです。MVVを重視した複業だと目標が明確になり、前進感が得やすく、エンゲージメントにつながります。企業にとっても複業人材にとっても、価値ある就業体験と就業環境が生まれます。
林:複業とMVVを掛け算するとエンゲージメントとパフォーマンスの両方が上がるのですね。
「複業転職」を成功させるために
林:複業活用のメリットは他にもあるのでしょうか。
逸見:はい、複業採用の先に正社員採用がある「複業転職」を、Another worksは複業採用のもうひとつの大きなメリットとして掲げています。複業を入り口に正社員へ転職するケースがあり、複業人材は強力な正社員採用候補なのです。Another worksでも複業クラウドご利用の企業でも、複業人材の30%くらいが正社員になっています。
転職市場には常に労働人口の10%がいると言われています。しかし、企業側としては優秀な人材には転職されたくないと考えているので、転職市場こそ非流動的でもあります。その点、複業市場には、社内で評価されている人材、スキルを多方面で活かしたい人材といった、転職市場にはいないタイプやハイスキル人材がいます。採用の釣りをするなら、池(市場)を変えよう!ということです。
林:正社員が欲しいならマーケットを見よう、ということですね。
逸見:それはそうですが、正社員を推しすぎると複業案件でなくなってしまうという課題もあるので、転職のキーワードを出さずに入口を作るところにコツが要ります。いきなり正社員!じゃなくて、業務委託というステップを挟む設計を企業側がするということです。ここも柔軟性ですね。いずれにせよ、MVVを織り込んでいくことが、「真の複業活用」という意味でも信頼関係を構築できますし、複業転職という点でも必要不可欠です。
リアルオフィスはMVVを浸透させるツール
逸見:ところで、MVVをどうやって社員にも業務委託人材にも浸透させていくか、という課題を林さんにお聞きしたいです。
林:後半のテーマ、「オフィスとMVVについて」ですね。MVVはすごく大切です。更に言うと言葉だけで上滑りしないこと、感じ取れることが大切なので、MVVを体現するリアルのオフィスという場はMVVを体感する場としてとても有用です。
例えば、建築DXの助太刀さんのオフィスは、バリューの言葉を全会議室に掲げています。
(過去WITH記事:https://novolba.com/media/sukedachi)
物流貿易クラウドサービスのShippioさんは、社内掲示に実際の船の帆の素材を使ったり、荷造りのパレットを組んでベンチを作ったりしています。
(過去WITH記事:https://novolba.com/media/shippio)
MVVを体感できる交流スペースを作って外部にも貸スペースとして開いているのはスペースマーケットさん。
(過去WITH記事:https://novolba.com/media/spacemarket)
社員を巻き込んで駄菓子屋を作ってしまったクラウド会計ソフトのfreeeさんもいらっしゃいます。
(過去WITH記事:https://novolba.com/media/freeeoffice)
オフィスには、機能的価値として働きやすさや仕事の捗りやすさがあり、それだけでなく情緒的価値もあります。こちらはそれぞれの会社“らしさ”や愛着が枠といったもので、これらに向かってどうデザインするか、が課題になります。
資金に限りがあるときのオフィスの作り方
逸見:事例のオフィスがみんな素敵すぎて…でも、資金に限りがある成長過程の会社って多いと思うのです。潤沢に資金があるわけじゃない会社のオフィスづくりの工夫を教えてください。
林:NovolBaの本業はこっちの伴走です。予算が限られている、でも席は増やしたい、新しいこともやりたい、事業も人も流動的で、働き方も多様な中で、出社すると会社の価値が上がるオフィスという場を作っています。会社への愛着は、社員みんなで過ごすことで増えていきます。働きやすさと愛着を作りたいと思ってやっています。
オフィスを作るときのNovolBaのアプローチは、ディスカッションから始まります。経営層にとってはMVVを伝え、社員にとってはありたい姿を考え、それらを発散してもらいます。これは全員にとって視座が上がると好評です。会社の“らしさ”を体現するのがオフィスです。その表現として、
・来社した人に語れるネタを提示しておく
・定期的なイベントでオフィスを開放する
・コミュニケーションのきっかけとなる場を作る(例)カフェスペースなど)
コストゼロでできることもたくさんあるので、ぜひカッコイイ内装だけじゃない、仲間意識を醸成し、業務委託の仲間も巻き込める工夫をお手伝いしたいですね。
全ては「いい仲間を作る」ために!
逸見:業務委託メンバーがうまく行っている会社さんは、オフラインイベントが上手です。愛着を一緒に作っていくってことなんですね、物理のオフィスと情緒としての仲間意識が複業人材の活用にも重要です。
林:複業人材の活用のための柔軟性と、オフィスの作り方、お話しする中でいろんな共通点がありました。リモートワークが主流になった後のオフィスの価値って、「自分たち」として同じ場、同じ時間を毎日じゃなくても一緒に過ごすことですよね。いい仲間を作っていきましょう!
参加者の声
MVVの大切さを改めて知りました
複業とオフィス、共通項なさそうなことに共通項が多いことに関心しました
MVVと業務委託人材が採用強化の鍵だということを学びました
関連情報
株式会社Another works (https://anotherworks.co.jp/)
「挑戦する全ての人の機会を最大化する」をビジョンに掲げるスタートアップ企業です。2019年9月のサービスリリース以降、一部上場企業からベンチャー企業まで、幅広く多くの企業に導入されています。
株式会社NovolBa (https://novolba.com/)
「挑戦するスタートアップの成長を支える」をミッションに掲げ、スタートアップ向けに最適なオフィス・家具のサブスクリプションサービスを展開。スタートアップに光を当てるメディア「WITH」では、起業や経営、投資にフォーカスした情報発信をしています。挑戦するスタートアップの”昇る場”を提供します。
取材日:2023年10月25日(水)
文 / 編集:麓 加誉子
写真:原 康太
編集/校正:原 康太