「スタートアップの働く場」にフォーカスする連載記事。
第6回は、事業の成長と組織拡大に伴い、今年8月に東京都新宿区に本社オフィスを移転した株式会社助太刀さんを訪問。スタートアップにとってのオフィスという“場”の役割や価値をどう考えているのか、お話を伺いました。
背景
従業員数は昨年対比約3倍に拡大し急成長を遂げている。「仲間とつくる」というバリューを掲げ、社内の「コミュニケーション」を大切にしている。執務エリアとオープンスペースを330坪超のワンフロアに集約することで、全社員が集うことのできるオフィスを実現した。
・計画から移転までの期間:10ヶ月
・移転プロジェクトメンバー:5名
・移転のキーワード:「工事中」
取材メンバー紹介
添田 優作 Soeda Yusaku
/ 取締役COO
(写真右)
大塚 裕太 Otuska Yuta
/ PRグループ グループ長
(写真左)
同じ場に集うことが組織としての「一体感」を生む
NovolBa 原:助太刀さんにとって、オフィスはどのような役割を果たしているのでしょうか?
助太刀 添田 :オフィスがあることの価値は、2つあると思っています。
1つは、組織の一体感です。リモートなどデジタル上でも情報交換はできると思うのですが、チームとしての意識は場を共有しないと生まれないです。雑談はもちろん、ちょっとした行動・表情の変化、その場の熱量など非言語コミュニケーションを通して、メンバー全員で一緒に事業を進めている感覚を常に感じられます。
もう1つは、組織の成長を加速させることです。今、組織が急スピードで拡大してきて、社員が150人ほどになりました。1年で約3倍の人数です。そうなると、顔と名前が一致しなかったり、ちょっとした距離感が生まれる問題が生じてきます。Slackなどのテキストコミュニケーションではニュアンスが強めに伝わってしまったり、スタンプを使用しても伝えきれなかったりすることもあります。業務においても、重視すべきことは日々変わっていきます。ドキュメントやマニュアルの作成では追いつかないことも。。。そういった変化にスピード感を持って対応できるのが、場の魅力だと思います。場を共有することで、その時、その時に必要なコミュニケーション・体制を瞬時に創ることができ、組織の成長を加速させます。
原:一体感とスピード、スタートアップにとってオフィスが果たす役割は大きいですね。
添田:そうですね。代表は元現場監督なので、その経験を活かして、デザイナーと相談しながら代表自身がオフィスのデザインをしています。代表自らオフィスのデザインに関わっているのは、弊社の特徴の1つでもありますね。
オフィスはワンフロアで、全員が集まりやすい環境です。フリードリンク制も整えており、休憩時間や就業後に自然と社員同士が集まって会話が生まれるオープンな雰囲気があります。
オフィスは目指す組織としての姿を可視化する1つの手段
原:大塚さんは、早い段階で会社にジョインし、会社の成長を共に歩んで来られたお一人だと聞きました。オフィスはどのような変化を遂げられてきたのですか。
助太刀 大塚:私が入社した時、社員は4人ほどでした。雑居ビルの一室のオフィスで、十数人でいっぱいになる大きさでした。2つ目のオフィスは80坪で、社員数は10人程度しかいない状態で構えました。10人で80坪のオフィスはなかなか広いですよね。しかし「社員が100人の時に100人しか入らないオフィスにいたら、500人や1000人の組織は作れない」という代表の考えもあり、移転することを決意しました。
現在のオフィスへの移転話が持ち上がったのは、前のオフィスを増床した2ヶ月後のことで、社員数もまだ60人ほどしかいない時期でした。早いですよね(笑)。経営陣も驚いていたくらいです。でも、意外と移転直前にはオフィスに入らないぐらい社員が増えて、4人掛けデスクに5人で座るような感じになっていました。
目指す組織の姿を可視化する一つの手段が「オフィス」だと考えていて、早い段階からより規模の大きいオフィスへの移転を繰り返してきました。
原:毎回思い切った移転を繰り返して来られたのですね。
大塚:社員としても、毎回ワクワクするんです。新しいオフィスに引っ越すことで、成長を肌で実感できるからです。せっかくオフィスを構えるのであれば、 デザインにもこだわって、我々の目指す世界観が伝わるオフィスにするんだ、という気持ちで取り組んできました。移転をきっかけに、組織の士気が更に高まる感覚があります。
業界のブランディングにも期待できる新オフィス
原:新オフィスのコンセプトやこだわりについて、教えてください。
大塚:コンセプトは「工事中」です。建設関係の事業ということもあって、建設現場感を出すということと、スタートアップ企業なので、まだまだこれからも発展していくんだぞ、という思いから このテーマになりました。
原:このオフィスでは、社内だけでなく社外に向けた発信もされていらっしゃるのでしょうか?
大塚:私たちは、オフィスを訪れてくださる方々に、「建設業ってかっこいいんだ」というイメージを持っていただきたいと思っています。建設業は3K、「きつい」「汚い」「危険」な仕事だと言われることもあります。これを、「かっこいい」「稼げる」「健全」など新しい3Kに変えたいと思っています。我々のオフィスや事業を通して、建設業のかっこよさや魅力を伝えていきたい。そんな思いを体現している場です。
オフィスのフリースペースは外部の方にも使って頂いており、勉強会やミートアップなどのイベント用に、会場を貸し出すなどの取り組みをしています。先日は、株主の勉強会で使用して頂きました。オフィスをどんどん活用して頂くことにより、弊社のPRだけでなく、建設現場のかっこよさなど、建設業界全体のブランディングにもつなげていけたらと思っています。
建設業界のイメージをアップデートしていきたい
原:今後の展望について、教えてください。
添田:「建設現場を魅力ある職場に。」というミッションは変わらないと思っています。マッチングがうまくいくことで職人さんの待遇が良くなったり、人・会社の適材適所を実現する世界を作りたいと思っています。
今は、取引先をデータ化してお客様自身が管理できるプラットフォームを作っています。CRM (顧客管理システム)やタレントマネジメント機能の職人版のようなものです。仕事をお願いする際に、どの職人さんに頼むか、候補は頭の中にあるわけですが、覚えられる数にはどうしても限りが出てきてしまいますよね。結局なじみの職人さんに頼んでしまう。そこにプラットフォームを導入することで、取引先や職人さんのつながりを拡張していけるようなシステムを構築中です。
将来的には、データを活かすことで、それぞれに見合った待遇や、希望する働き方を実現できる建設業界を作っていきたいと思っています。
原:組織に関しては、どのようにしていきたいと考えてますか?
添田:新しく入社したメンバーが、チャレンジできる、成長できる、と感じられる組織にしたいと思っています。何でも上司が決めるトップダウンより、ボトムアップで成長していく組織です。建設現場の環境と一緒に、会社の雰囲気も、より良くなっていく組織作りを目指したいと思っています。
原:より多くの方に、建設業界にチャレンジしていただきたいですね。
添田:ぜひ、若手にも来ていただきたいと思っています。職人さんに「自分の子どもにも同じ仕事に就かせたいですか?」とアンケートを取ると、9割は「就かせたくない」という回答が出てきます。建設業の辛さを実感しているからでしょうね。小さいころ、将来の夢の1つに「大工さん」を挙げている子は少なくなかったと思うんです。でも、大人になるに従って、魅力を感じなくなっていってしまう。そういったイメージを変えていきたいです。
チャレンジしたい人、お待ちしています!
【助太刀は絶賛メンバー募集中!】
弊社のミッション「建設現場を魅力ある職場に。」に共感していただける方にぜひ来ていただきたいです。事業としてはまだまだ発展途上です。新しい仕組みを作ってみたい、これまでの経験を活かしてみたい、そんな方のご応募をお待ちしています。
こだわりの「場」
株式会社助太刀
「建設現場を魅力ある職場に。」というミッションを掲げ、職人と工事会社の新しい出会いが見つかるアプリ「助太刀」を運営している。登録事業者数は18万を超え、建設業界におけるマッチング領域では圧倒的なシェアを誇る。「助太刀」は発注側の工事会社と受注側の職人・工務店をマッチングし、長期的な取引先と出会えるサービスとなっている。また、「助太刀社員」においては、求人意欲のある工事会社がアプリ内で求人広告の掲載および職人へのダイレクトスカウトが送付できるサービスとなっている。このように、助太刀は取引先探し・採用どちらからも人手不足解決をサポートしており、今後は、建設業界のあらゆる課題を解決するべく提供サービスを更に拡大していく。
【編集後記】
オフィスはなるべくコストや手間を削減することが重要視されます。ただ、組織として成長を考えると、オフィス=場をどれだけ大切にできるかが重要だと感じました。自分たちの目指すべき姿をイメージするためにも、それを可視化できるオフィスは、会社としての意志を示す場にもなります。デザイナー出身の私としては、そこで過ごす人の行動を軸に、素材を通して会社の世界観を創り出すように設計された空間は非常に面白かったです。事業をはやく、確実に成長させるためにも大きくオフィスを構えることは、コスト以上に組織の意志を強くする非常に重要なことなのかもしれません。(原康太)
取材日:2022年11月10日
インタビュー/編集/撮影:原 康太
校閲:山田 直哉