SmartCraft 浮部史也(代表取締役)

Vol.005 株式会社Smart Craft / 代表取締役・浮部 史也 さん

第5回は、「モノづくり産業のニュースタンダードを創る」をミッションに掲げ、挑戦されている株式会社Smart Craft代表取締役・浮部 史也さんにインタビューさせて頂きました!

浮部 史也 Ukibe Fumiya  /代表取締役 

新卒でキーエンスに法人営業として入社、その後アクセンチュアで戦略コンサルタントとなる。それぞれの経験を活かし、2021年6月にSmart Craftを創業。10月にβ版サービスを開発、2022年1月プレスリリースを正式発信した。

 

プロダクト・マーケット・フィットに向けてのスピード感

NovolBa原(以下、原): 2021年6月に創業され、10月にはβ版をリリースされていますが、これだけスピード感を持ってβ版をローンチできたポイントは何だと思いますか?

Smart Craft 浮部(以下、浮部):プロダクトはお客様に使ってもらい、フィードバックをもらうことで成長していくものだと思っています。トライアルで使って頂くことで、机上では考えつかない予想外のフィードバックをたくさん頂けます。だからこそ、なるべく早く形にして、実際に使って頂き、ブラッシュアップしていくことを重要視しました。早い段階でリリースし、スピード感をもってPDCAサイクルを回していくことが、求められるプロダクト開発に繋がると思います。

創業後すぐのVCからの出資

原: 創業前からVCの方とディスカッションをされていたそうですが、VCの目に留まったポイントは何だったと思いますか。

浮部:ポイントとして3つあると思っています。

1. 製造業という大きなマーケットに着目したこと

製造業はGDPの約2割を占め、約1,000万人もの従事者がいる国内最大のマーケットです。巨大産業である製造業で大きなチャレンジをすることがポイントであったと思います。

2.マーケットの大きな変化を見据えたビジネスモデルであること

製造業のDX化やクラウドサービスの普及などは注目度が高く、今後も続くトレンドな領域です。私たちが提供するSaaSのビジネスモデルは、初期費用を抑えて導入ができるため、大企業だけでなく、中堅・中小企業も含めて導入余地が広がると考えています。今後は更にハードデバイスの普及やネットワーク環境の整備が行われ、テクノロジーの導入が進む未来のあるマーケットと言えます。

*DX=Digital Transformation    *SaaS=Software as a Service

3.「Why you? なぜ私がやるのか」が明確であったこと

創業前に実施した数多くのユーザーヒアリングを通じて顧客解像度を高められていたことに加え、前職の経験から現場業務をよく理解していたことが大きかったと思います。自分事として体感した課題を語ることで、熱い想いを伝えられたと感じています。
他の人が挑戦するより自分がチャレンジする意義が明確であるのも重要です。

原:なるほど、3つのポイントを伝えられたことで、創業期からVCの方に参画頂けたのですね。

浮部:VCの方に、創業期からご支援頂けたのは大きかったと思います。
他の投資先の事例を交えて、スタートアップが失敗するポイントや、事業のイロハなど、多くのことを教えて頂きました。起業にあたり初めてのことばかりだったのですが、スタートアップに精通しているVCの方がいつもそばに居てくれるからこそ、いつでも相談できるし、大きな失敗につまずくことなく進むことができたと思います。

誠実であることがプロダクトの期待値を最大化させる

原:スタートアップは事業成長を進める中で、多くの失敗があると思います。今までに経験した失敗や反省の中で、ここは他のスタートアップに伝えたい!ということはありますか?

浮部: 成長段階にあるスタートアップにとって、お客様の期待値にいかにプロダクトを合わせられるかは重要ですが、誠実であることが何より大切だと痛感しています。
お客様からの要望に対して「その機能は無いです」と答えることが、相手の期待に応えられないことになると感じて、予定が決まっていない開発も「出来る」ように話してしまうことがありました。しかし、お客様の期待値が大きくなることで、実際のプロダクトに対する満足度は低い状態となり、結果、お客様が離れる原因になりました。

お客様と誠実に向き合い、私たちの現状を示した上で、プロダクトの創る世界観や今後の発展性を伝えることが、共感を頂くことに繋がると思います。

事業会社とコンサルティングファームの経験から起業に至る

 

原:浮部さんが、どのような経緯でSmart Craftを起業するに至ったかお聞かせください。

浮部:私は新卒でキーエンスという会社に入社しました。大手企業から中堅・中小企業まで、幅広い製造業のお客様に対し、IoTやFA(ファクトリーオートメーション)等に関連するセンサー・測定器などを販売していました。10~20種類の商品をもって実際に工場に行き、製造現場を見させて頂く中で、自動化・省人化に繋がる商品を提案するコンサルティング営業を行っていました。
製造現場を見て、お客様の働き方が具体的にイメージできることは、後に大きな強みになりました。
キーエンスで働いていた時にも「起業」に興味はあったのですが、営業しか経験していなかったため、自分が起業して事業を拡大させていくイメージを持つことができずにいました。
営業としてのキャリアが3年になったタイミングで、経営視点で事業を捉えられるようになりたいと思い、コンサルティングファームのアクセンチュアに転職しました。

コンサルティングファームで学んだマーケットを俯瞰する視点

浮部: コンサルティングファームでは、事業をマーケットインで見る視点、構造的に捉える視点を学びたいと思っていました。
一般的な事業会社の営業は、お客様に正しくプロダクトの価値を提供するという明確な答えがあるのですが、コンサルティングファームが取り組むクライアントの問題解決には、そもそも答えがありません。
事業戦略・新規事業を考えるときに、お客様の意見を尊重した上で、物事を構造的に正しく捉えて進めていくことが重要です。そのために、問題や課題等の論点を立てて議論を進めていく「論点思考」と、論点を検証するために、常に仮説を持って検証を進めていく「仮説思考」の理解は必須です。
こういったアプローチは、戦略コンサルならではの頭の使い方で、とても学びが多かったです。


事業会社で得た現場感覚と、コンサルティングファームで学んだ様々な手法が掛け合わさったことで、Smart Craftの創業を実現することに至ったと思います。

原:浮部さんのこういった実体験から、マーケットサイズが十分大きいか、マーケットのトレンドを捉えているか、といったことに着目して事業内容を考える視点が生まれたのですね。

サービスへの共感を生むために必要な「定量」と「定性」

原:営業・コンサル経験豊富な浮部さんが、Smart Craftというサービスを提供する上で大切にしていることはありますか?

浮部:「定量」と「定性」、両方の価値を顧客に伝えるようにしています。

「定量」の部分では、この製品を購入すると費用対効果がどれだけあるかというのは意識しています。Smart Craft を使用することで、日々の日報・生産記録の入力・転記・集計工数の大幅な削減ができ、人件費・作業時間をどれだけカットできるかを具体的な数値で説明するようにしています。

「定性」の部分では、私たちのありのままの状況と今後の展開についてお伝えしています。
6月に創業してまだ半年程度だからこそ、サービスの改善余地はたくさんあると思っております。SaaSモデルで提供することで、お客様のフィードバックを元にどんどん機能をアップデートし、付加価値を高めていくことができると考えています。
現場の声に耳を傾け、開発予定や目標をロードマップで示していくことで、Smart Craftの今後の発展性に共感いただけるようお話をしております。

Smart Craftが描く未来とは

日本の製造業の「新しい当たり前」を創り、レガシー産業を変革する

浮部:今はβ版で機能も限定的ですが、将来的には、“モノづくりのニュースタンダードを創る”というミッションのもと、製造現場のデータを集約し、データの共有や活用を促進していくことで、現場業務のデジタル化を進めていきたいと考えています。
Smart Craftの強みは「データの蓄積」です。将来的にはそのビッグデータを利活用して、設備のメンテナンス時期を事前に把握する予兆保全や、需要を予測できるようになるのが理想です。
製造現場の幅広い業務のデジタル化を進めた上で、IoT、AIも絡めながら、製造現場が圧倒的に生産性を上げられる仕組みを作っていきたいです。

Smart Craftを使っていただくことで、日本の製造業の99パーセントを占める中小企業の競争力が向上し、日本のモノづくり産業が今よりもっと魅力ある市場になっていくことを目指します!

0→1に挑戦するオーナーシップマインドを持ったメンバーと共に

原:今後がますます楽しみなSmart Craftさんですが、これからどんなメンバーと共に進んでいきたいですか?

浮部:個人のスキルセットも重要ではありますが、それよりも事業をゼロから自分の力で作っていきたいと言う成長意欲の高い方、日本一大きな製造業というマーケットを0から変えていきたい!という強い想いをもった方と働きたいなと思っています。

私自身が起業に興味を持ったのは、大学時代にスタートアップでインターンをしたことが関係しています。社員全員が生き生きしていたのが印象的で、目指す世界へ全員で行くぞー!みたいな熱狂している雰囲気に、とても魅力を感じていました。

創業期は辛いこともあり、やるべきことも本当に沢山あります。だからこそ、Smart Craftの目指す世界観や事業内容に共感頂き、創業メンバーの私たちと同じ立場でやっていける熱い人にジョインしてもらえたら嬉しいです。

株式会社 Smart Craft

生産現場の情報を一元管理し、自動で集計を行う業務効率化ソフトウェア『Smart Craft』サービスを提供。これまで手書きだった生産日報や、Excelで行っていた生産実績の集計をデジタル化し、現場を見える化。製造現場のカイゼン案創出の実現をサポートします。(webサイトより引用)


取材日:2021年12月28日
インタビュアー:原 康太
写真/ 編集:神成 美智子

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