昇る場case.04「“ヒトを育てる組織”になるために必要な場」株式会社ACROVE

「スタートアップの働く場」にフォーカスする連載記事。第3回は、今年7月に移転し、新オフィスを構えた株式会社ACROVEさんを訪問しました!出社を基本とするACROVEの働き方と、オフィスという“場”の捉え方について、お話を伺いました。

背景

独自開発のBIツール「ACROVE FORCE」を軸に、展開するECプラットフォーム事業を更に加速させていくため、事業拡大及び人員増加を見据えて新宿御苑前にオフィスを構築。

・計画から移転までの期間:約3か月

・移転プロジェクトメンバー:吉田、櫻木、佐藤

・移転のキーワード:社員が伸び伸びと働ける空間をつくる

取材メンバー紹介

荒井 俊介  Arai Shunsuke
株式会社ACROVE 代表取締役

1996年5月12日生まれ。日本大学法学部卒業。学生時代から複数のスタートアップ・ベンチャー企業で経験を積み、2018年に株式会社アノマ設立。2020年に株式会社ACROVEに商号を変更し、代表取締役を務める。旅行が好き。座右の銘は「人間本気になれば大差なし」

オフィス出社の背景にある「組織理論」

NovolBa 原:「出社」を基本とする体制をとられていると聞きました。オフィスというオフラインの場をどう位置づけているのでしょうか。

ACROVE 荒井仕事に対するモチベーションを維持する・高める場として非常に重要なものだと考えています。モチベーションとは「安心・安全」、「信頼と高い共通の目標」、「仕事との関係性」の3段階で構成されていると思っています。

その3段階のベースとなるのが、働く場所やヒトが敵でないと思える「安心・安全」という感情です。当たり前のように思えて意外に侵されやすい。例えば、全くの知らない人に「明日、地球が滅亡するぞ!」って言われても信じないじゃないですか(笑)信じるどころか、この人危険だなという感情も抱いてしまうと思います。それを防ぐために、メンバー同士が日常的にコミュニケーションを取って心理的に「安全・安心」の地盤を創ることが大切です。オフィスは、そのコミュニケーションを取る場として最適です。

次の段階の「信頼と高い共通の目標」とは、安心・安全をベースにして築いた互いの信頼をもとに、会社と個人が共通した目標を持っている状態を指します。
例えば、将来的に私がトレーニングジムを開いて独立しようと思っているとします。しかし、もし現在勤めている会社で営業を担当していたら、将来的にやりたいことと関連性を見いだし難くなります。でも営業のノウハウを身に着けることが、そのパーソナルジムで必要なマネジメント能力を培うことに繋がるとしたら、取り組む姿勢も変わってくると思います。要は、会社と個人で必ず目標において共通する部分があるはずで、そこを導きだすことで、よりパワーを発揮できる組織に成長すると思います。
一方で、会社において個人の目標を表に出すことが消極的な方も多いと思います。それを解決するのがオフィスでの「雑談」だと思っています。個々の目標を、オフィスのたわいもないコミュニケーションから知ることで、「会社と個人の高い共通目標」を見つける?(掲げる)ことができると思います。

最後の段階の「仕事との関係性」に関しては、会社の社会的価値を感じられる状態を指します。その状態をつくるためには、営業であってもCSの仕事を知れたり、CSがエンジニアの仕事を知れたりと横のつながりが重要です。会社全体の動きが見えることで、自分の仕事が事業のどの部分を担っているのか、社会の何を解決するために進めているのか常に認識することができます。その会社全体の動きが常に見える環境が、オフィスになります。さらに、同じ場所にいることで、打ち合わせに対する素早いフィードバックができ改善スピードが格段にあがります。また、受注に繋がった場合は、なぜうまくいったのかという成功体験を会社全体で共有することができます。このように、仕事との良い関係性を保てる要素がオフィスにはあります。

「安心・安全」、「信頼と高い共通の目標」、「仕事との関係性」のモチベーションを構築する3つを実現する場として、オフィスは非常に重要だと考えています。

「ヒトを育てられる組織」になるために、場が必要

:フルリモートのスタートアップも最近増えていますね。オフィスを持つことで、どのような組織が作りやすいのでしょうか?

荒井:リモートだけでできる組織というのは、プロフェッショナル集団に近い形態だと思います。それこそ、自らの想い・思考を開示して安心・安全な環境を創りだし、共通の目標を掲げ、仕事との良い関係も築いていけると思います。

でも私が創りたい組織は「ヒトを育てられる組織」です。一人の経営者として、「経営」とは何かを考えた時、“普通のヒトでも、そのメンバーが伸び伸びと働くことによって大きな成果を生み出せる組織を作ること”だと思いました。だからこそ、組織として、自分たちの創り出すもの、目指す世界に対して、互いに信頼し合い、信じてやり切れる環境を創っていきたいと思っています。それを実現する場としてオフィスが非常に重要だと捉えています。世の中に新しい価値・雇用を生み出していこうとするスタートアップは、オフィスはもつべきだと思います。

実体験より導き出した、「教育」と「最適配置」の組織創り

:「組織」という観点を非常に大切にされていますね!組織作りに置いて重要視されているポイントをお聞きしたいです。

荒井「教育の重要性」と「最適配置の重要性」です
「教育の重要性」に関しては、私の学生時代の陸上での経験に基づいています。私が通っていた中学校は公立だったのですが、陸上部は県大会7年連続一番、日本一の実績もありました。なぜそれだけの成果を出せたかというとチームの教育環境が関係していました。例えば、メニューは自分たちで作り、先生に伝え、「自ら考える」ことを大切にしていました。また、陸上競技はケニアやエチオピアが強いのですが、実際に現地に足を運び、彼らのような陸上強豪国の組織の共通点は何なのか、自分の中で明確化する訓練を意識的に行っていました。
こうした教育を受けた経験により、経営の基本にもある、「まずはやらせてみる、任せてみる」、「自分の主張を大事にさせる」という組織開発を重要視するようになりました。

「最適配置の重要性」に関しても、やはり陸上部の経験が大きいです。陸上選手は言ったことをキチっと忠実に行える真面目な方が多いと思います。一方、私は抜けてしまう部分もあり、少し息苦しさを感じていました。ある環境に自分が合わない場合は、他のメンバーとの性格の違いが大きく起因すると思います。
世の中には、思考と感情でいうと思考が強い方、計画的にやるのが得意な方、行き当たりばったりで突破できる方、など様々な性格の方がいます。それらの性格が良い悪いという判断は、どのような環境に属しているのかが大きいと思います。
だからこそ、その性格が活きる組織の仕組みをつくることが大切だと考えています。組織の中で個人が教育されることで、前向きに働けるモチベーションを維持させられる側面もありますが、人それぞれ得意不得意があります。得意なところに適確にアサインすることで、より個のパフォーマンス・成長スピードもあがり、組織として強くなると考えています。

良いものが、より多くの消費者に届くプラットフォームになる

:移転を経て、これから目指される世界を教えてください。

荒井:「ECで人と物を繋ぎ、シアワセを届ける」と掲げている通り、その架け橋のような存在を目指していきたいと考えています。

世の中の多くのメーカーは、社内の部長クラスの年齢層の方は、ECやTikTok、AmazonといったITの分野を、あまり効果的に使えていない、手探り状態であることがほとんどです。そのため、消費者側に商品の価値を届けられていない課題があります。
だからこそ、私たちが入ることで、そこの販売チャネルを増やし、より多くのお客さんに届けられる環境をつくることは非常に意義あることだと考えています。今後は更に、マーケティング、物流やカスタマーサポートのバックオフィスなどECに関わる全てのことを提供できるプラットフォームにしていきたいと思います。そうして、より消費者に良いものが届けられる世界を実現していきたいと思います。

こだわりの「場」

ENTRANCE: 手前がオープンスペースになっており、”全社”会も行っているとのこと
ファミレスブース:窓際にファミレスブースがあり、社内打ち合わせに活用されている
テレキューブ:個室防音会議室スペース。WEB打ち合わせも多く重宝している。
窓際スペース:オープンスペース奥側に配置された空間は、少し籠って作業できるスペース
バーカウンター:月に1度、ユーザーさんの商品を利用する社内イベントもここで行っている。
OPENSPACE:オープンな空間で、社内メンバー同士でコミュニケーションが活発に行われる雰囲気があった。
OPEN SPACE:仲が良く、お互いを知り、会社と個人の目標を一致させる組織創りが垣間見えた。

【ACROVEは絶賛メンバー募集中!】

ACROVEは採用募集中です。将来経営したい、スタートアップに飛び込みたい、あるいはビジネスサイドでマーケティング、ECに興味あるとかいう方はもうぜひお待ちしています。楽しい会社だと思います。(荒井さん)

https://recruit.acrove.co.jp/

株式会社ACROVE

Amazonや楽天等のECマーケットプレイスでの成長をサポートする事業を展開する。独自開発のBIツール「ACROVE FORCE」を用いて、マーチャンダイジング(商品開発・MD)、ブランディング、パッケージング、サプライチェーン最適化、ロジスティクスを行う。

https://acrove.co.jp/about/outline/


【編集後記】

経営とは何かを追求され、その考えに基づいた組織作りをされるACROVEさん。だからこそ、個人の高いパフォーマンスを発揮できる組織であることが理解できました。組織の仕組み・思考で届けられる価値も大きく変わるからこそ、事業はもちろんのこと組織の在り方を問い続けることが重要なのではないでしょうか。モチベーションを構成する「安全・安心」、「信頼と高い共通目標」、「仕事との関係性」を担保できる場となるオフィスを、私たちも提供したいと思いました(原康太)


取材日:2022年9月13日
インタビュアー・編集・撮影:原 康太
校閲:山田 直哉

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