シェア買いアプリ カウシェ 広報PR 大塚早葉 Otsuka Sayo

連載③カウシェPR大塚早葉さんと考える「シェアされるTwitter発信とその魅力」

こんにちは。営利と非営利、両分野で頼られるPRパーソンになりたい麓(ふもと)です。全6回でスタートアップの広報PRについて連載しています。今回はTwitterの活用について、シェア買いアプリ「カウシェ」を運営する株式会社カウシェのPR、大塚早葉さん(以下、sayo)とお話ししました。

大塚 早葉  Otsuka Sayo / カウシェ・PRマネージャー

早稲田大学国際教養学部卒。 新卒で丸紅に入社し、台湾に駐在。帰国後ウォンテッドリーに参画し、ビジネスデベロップメントとして国内クライアントの開拓から東南アジアへの海外展開等を行う。2016年よりメルカリに広報PRとしてジョインし、IPOや金融子会社メルペイのサービス発表、危機管理等のPR業務に携わる。2020年より香港在住、カウシェや香港のスタートアップの広報をサポート中。
Twitter:https://twitter.com/Sayo_OTK

商社からスタートアップ、そして広報PRへ

―sayoさんのご経歴がとても挑戦的で興味深くて、ターニングポイントをお聞きしたいです

大学卒業後、就職は「海外と日本を繋げる仕事をしたい」という思いで総合商社の丸紅へ入社しました。大好きな台湾で働きたくて、右も左もわからない半導体の部署を希望し、トレーニーとして1年半駐在しました。帰国後しばらくしてキャリアを改めて考えた時に、もっと経営層に近いところで変化の大きい仕事がしたいのだと気づき、当時まだ規模の小さかったウォンテッドリーに転職しました。私は7人目の社員で、当然アシスタントなんていない。前職とは環境がだいぶ違いましたがとてもやりがいがありました。

―商社からスタートアップへ。見事な転身ですね

事業開発のポジションで営業や業務提携など何でもやって、仕事の楽しさは倍増しましたね。自分の好きなことや楽しいことを周りに伝えたい性分なので、会社のことを度々SNSで発信していたら社外の方からは広報PRの人と間違われることが増えて(笑)その流れでメルカリから「広報のポジションがあるのだけど興味がある?」と誘っていただきました。
広報未経験でしたが、こうも間違われるということは素質があるのではないかと思ってキャリアチェンジの転職をし、2016年から2020年まで、メルカリがサービスを急成長させた時期に、広報として関わらせていただきました。

―ではPRパーソンとしてのキャリアはメルカリからなのですか?

そうなんです。しかも入社半年で実は育休に入ってしまい、スキルが身に付いていないのに休むことに焦りを感じていました。このコンプレックスを打開するために、週末は広報関連の塾に通い座学し、実践はメルカリで積んでいくことで、少しずつ自信をつけていきました。炎上時の危機管理から、上場や米国でのサービス展開、メルペイのローンチ時のカンファレンス運営など、様々な経験をさせてもらいました。

―現在は香港にお住まいだとお聞きしています。

はい、2020年から夫に帯同する形で香港在住です。香港に移住することが決まりメルカリを退職する時に、それをSNSで発信したら、カウシェCEOの門奈さんがDMをくれ、2020年9月からカウシェに複業PRとしてジョインしました。働いているうちに、カウシェでの仕事がとても楽しくなり、今年の1月からは海外からの完全リモート&時短正社員として参画しています。

トップの思考を覗き、アウトプットを助けるPRパーソンの役割

―とてもチャレンジングなご経歴の中で、PRパーソンとして心掛けていらっしゃることはどんなことですか。

「トップの思考を知る」ということでしょうか。経営層の思いや思考を、PRパーソンは一番よく知っていなければならないと考えています。トップの頭の中にあることって、相当意識して発信しないと社員全員に浸透しないですし、ましてや社外の方々に届かないのですよね。

―思考を知る。興味深いです、具体的にはどうやって知るのですか。

定期的に「今何が頭の中を占めていますか?」と聞いてしまう(笑)。それからカレンダーを見て誰と会っているかを把握するのも効果的です。あとは読んだ本。インプットとアウトプットは直結しています。時には徹底してヒアリングして、アウトプットとしての言語化のお手伝いをするのも大切な役割だと思います。「トップの言語化」あっての外向きの発信ですので。

これがカウシェのTwitter発信成功のコツ!準備8割を念入りに

―直近、カウシェの広報PRとして注力していたことを教えてください

カウシェは2021年から採用に力を入れています。2度の資金調達の発表というモーメントも、採用につながる何かを仕掛けたいと考えていました。広報PRの仕事として、プロダクトの認知拡大等も重要ですが、当時は採用広報のための発信に注力して、一緒にカウシェを強くしてくれる将来のメンバーへ向けて情報を届けていました。
ターゲットに情報を届ける手段は様々ありますが、当時私たちが特に力を入れたのはTwitterです。

―カウシェが発信のメインにTwitterを選んだのはどういう理由からでしょうか?

カウシェの潜在転職候補者を想定した時に、彼らがよく見ていていることが想像できたこと、またカウシェのメンバーの繋がりによってもリーチが出来るのではないかと考え、注力先をTwitterに決定しました。
一番仲間になって欲しい方と繋がれる場所としてTwitterを狙い、2021年11月の「ストックオプションのリリース」と今年6月の「22億円資金調達」の発信時、ツイッターで大きな盛り上がりを作ることを目標にしました。結果として「Twitterがカウシェにジャックされている!」などとおっしゃる方がいるなど大きく盛り上がり、認知も拡大したことから、私たちの狙いは間違っていなかったとわかりましたし、採用PRのSNS戦略としても成功したと考えています。

―Twitterで発信を盛り上げるコツを教えてください。

Twitterは拡散力が高いツールなので、思わずシェアしたくなる仕掛けを考えました。また、仕掛けは準備が8割だと考えているので、念入りに仕込みました。
私たちが気をつけたのは、1つ目が目を引くカラフルなビジュアル2つ目が拡散される元になるTweetを集中させること3つ目が発信の山を作ること、です。

―6月のキービジュアルはカウシェカラーが映えて素敵でした!

6色のカウシェカラーに合わせて、背景も着る服もカラフルにしたのです。さらに、通常の資金調達は投資家と経営層のみで撮影する企業が多いのですが、今回カウシェは正社員や複業メンバーにも撮影に参加してもらい「大家族感」を出しました。併せてHPに掲載するための個人写真もカラフルにしたところ、SNSアイコンもそちらに変えてくれた社員が多く、「Twitterで呟くとカウシェの人たちが全力でいいねしてくれて、通知欄がカラフルになる!」と喜んでくださる方もいて、よかったなと思いました。

―2つ目の元Tweetを集中させるとは?

キーになる発信をする「時間」「人」「Tweet」をあらかじめ決めておき、リスト化して社内で共有していました。例えば予定の時間になったら門奈がTweetして、それをみんなでいいね、RTする。次のタイミングでは別の人のTweetを拡散するという段取りをしました。

―なるほど!元Tweetをバラけさせないのは効果的ですね。3つ目の発信の山を作るというのはどういうことでしょうか。

6月の資金調達の時、Twitterの盛り上がりを瞬間風速的に終わらせたくなくて、各チームに書いてもらったnoteのストックを数時間おきに出していくことにしました。これが結果として3日程度続くことになり、アイコンのカラフル効果もあり「タイムラインをカウシェがジャックしている」とまで言っていただける結果になりました。

―まさに準備8割の情報の先読みと整理、そして徹底した社内共有の結果の”タイムラインジャック”だったのですね。

カウシェのTwitter発信の成功2例

―カウシェを「働く場所として興味をもってもらう」という採用目線で準備されたと思いますが、成功した事例をお聞かせください。

1つ目は昨年2021年11月のストックオプションの新制度に関する発信です。退職してもストックオプションの権利を継続できるということは、北米では普通のことですが、日本のスタートアップ界隈ではまだまだ珍しい制度でした。日本のスタートアップ界に新たな選択肢を提案するという意味でも、新しい制度にチャレンジするカウシェを一緒に強くしていく仲間を集めるという意味でも、社内制度という内向きの発表を、あえてTwitterを中心に外向きの発信としても挑戦してみました。

―ワクワクしますね。どんな反応が得られましたか。

共感してくださる方が多く、反応してくださったのは嬉しかったですね。これまでの制度をモヤっと感じられていた方が多く、特にスタートアップ界隈のオピニオンリーダー的な方が予想以上にTwitterなどで取り上げてくださったのは嬉しい流れでした。また、この発表以降、「働く」というテーマでトップの門奈への取材や登壇依頼が増えたことは、想定外にポジティブな流れになりました。

―もう1つの成功事例は今年の6月、22億円の大型資金調達ですね。

はい。この時は「Twitterのタイムラインが凄まじくカウシェ!」とまで言ってもらえてとても嬉しい結果でした。3日間続けて盛り上げたので、カウシェを今まで知らなかった方々にも情報を届けることができ、「カウシェってどんな会社だ?」と調べていただくきっかけを作ることができました。

―社内の変化で嬉しいことはありましたか?

社員の皆さんの「発信に対するハードル」が下がったことでしょうか。空気ができたということもありますが、noteを出す時には社内Slackで記事の意図や思いを共有することで言葉選びのハードルを下げることができたのも大きかったです。発信することで得られるメリットや楽しさをみんなで共有できたので、PDCAを回しやすくなりました。

カウシェPR・sayoさんが考える魅力的なTwitter発信とは

―sayoさんがカウシェのTwitterで最も伝えたいと考えていることは何ですか。

カウシェ社内のポジティブな雰囲気もそうですが、カウシェは会社のバリュー(行動指針)に「Enjoy Working」というものが入っています。バリューに「Enjoy」が入っている会社はそうないと思うので、それを伝えるためのカラフルなビジュアルでした。社内のデザイナーに協力してもらって実現できてよかったです。

―魅力的なTwitter発信とはどんなものか、sayoさんのお考えをお聞かせください。

社内に溢れるポジティブな雰囲気を、社外の方が感じ取れる発信でしょうか。Twitterって140文字と写真とURLの小さな発信じゃないですか。その小さな発信で、カウシェの社内に溢れるポジティブをどう伝えるか、挑戦しています。Good Vibesが伝わるTwitterを目指したいですね。

―Good Vibes!素敵ですね。それが伝わるTwitterは理想的です。

「楽しい」の未来に「C2M」を見据えるカウシェと共に

―Good Vibes溢れるカウシェがこれから目指すところを教えてください。

まずは近い未来として、カウシェは「楽しいEC」を追求していきます。これまでのネットショッピングにはなかった、賑やかさや人との交流、リアルなショッピングの楽しさをネット上でも実現します。少し先の未来としては「C2M(Consumer to Manufacture)」という新しい循環の実現を目指していきます。あるものの中からより良いものを選ぶという選択から、購買者の欲しいものを製造者が無駄なく作るという、逆回転を生み出していきたいですね。

−製造者にも購買者にも事業者にも地球環境にもやさしい、素晴らしい未来を描いていらっしゃいますね。今日は素敵なお話をありがとうございました!

株式会社カウシェ

カウシェは、”誰かと一緒に”を楽しむ、シェア買いアプリです。友人と家族、またはSNS上の誰かと一緒にお買い物をすることで、お得な価格で購入することができ、コミュニケーションを取りながらショッピングを楽しむことができます。

https://kauche.com/

次回予告

次回は「noteの活用法」をテーマに、株式会社カミナシ 広報PR・宮地正惠さんとの対談記事でお届けする予定です。お楽しみに!

【編集後記】

この原稿を書いている最中にも、カウシェのアプリダウンロード数100万突破というニュースが飛び込んできました。おめでとうございます!ポジティブなニュースがカラフルにポップに流れてくるカウシェのTwitterアカウントは本当にGood Vibesを伝えてくれます。今回はsayoさんにTwitterのタイムラインを盛り上げる方法に留まらず、PRパーソンの役割や醍醐味もお聞きすることができました。まさにGood Vibesを体現するPRパーソン sayoさんのお話を読者の皆さんと共有できて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。(ふもと)

取材日:2022年10月18日  
文:麓 加誉子  
編集:神成 美智子  
写真:カウシェ提供

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