対談 Vol.006 株式会社SEAM× スマドリ株式会社

対談企画第6回は、株式会社SEAM・代表取締役/CEOの石根友理恵氏と、スマドリ株式会社・ブランドマネージャーの加藤寬康氏、お二人の対談インタビューをお届けします。

2023年3月、低アルコールクラフトカクテル『koyoi(コヨイ)』を販売する株式会社SEAMと、「スマートドリンキング」という飲み方の多様性を提唱するスマドリ株式会社は、生活者巻き込み型の商品開発プロジェクトを発足した。

お酒を「飲まない/飲めない」人も楽しめ、シーンを起点とするレシピ、低アルコール飲料を開発し、「新しいお酒の楽しみ方」を提案したいという想いが一致。お酒を無理なく楽しめる文化創造の実現に挑戦するという。

両社共通のビジョンから共創に至った経緯、二人が思う理想のチーム像はどのようなものか。飲み方の多様性や低アルコールドリンクの可能性についてお話を伺った。

石根 友理恵  Ishine Yurie (左)
株式会社SEAM ・代表取締役/CEO
【 Profile 】神戸大学卒業後、サイバーエージェント→ワンオブゼムへ。マーケティング・PRに従事し、2017年にSEAMを設立。「ココロとカラダを満たす食体験を創る」をミッションに、食のD2C事業業、食ブランドのプロデュース事業を行っている。会社は臨月の時に設立し、現在6歳の子どもの子育て中。

加藤 寛康  Kato Hiroyasu(右)
スマドリ株式会社・ブランドマネージャー
【 Profile 】「飲み方を、もっと自由に、もっと自分らしく。」スマートドリンキング(お酒の飲み方の多様性)のVisionに共感し、スマドリ社に中途入社。飲む人も、飲まない人も、それぞれの体質・シーンに合わせた多様な飲み方=スマドリが当たり前の社会実現に向けて、SUMADORI-BAR SHIBUYAから、活動・発信している。

 

「低アルコール」と運命的な出会いを果たすまでの軌跡

NovolBa 鄧:石根さんが株式会社SEAMを立ち上げたきっかけ、なぜ低アルコール飲料にこだわるのか、どのような原体験があるのでしょうか。

SEAM 石根 :私は、公務員の父、専業主婦の母という一般的な家庭で育ちました。その反動からか、起業・独立への想いが強く「30歳になるまでに自分の名前で仕事ができるようになりたい」と漠然と考えていました。

「起業」をはっきり意識したのは、父がアルコール依存で急死した時です。私は24歳でした。身近な人が突然亡くなる、という現実に直面し「失敗してもいいから、後悔だけはしない人生にしよう」と心から思い、自分がこの世からいなくなっても残る「組織と事業」をつくろうと決意しました。それからしばらくして会社を辞め、フリーランスの期間を経て、その決意を実現するために会社を設立しました。

「事業と組織」に拘った理由は、自分がこの世から居なくなった時を想像し、“生きた証となる事業”と“同じ夢を本気で追える組織”を残したいと思ったからです。お金とか、財産とか、いろんな価値観がありますが、私はその中でもコトとヒトに強くフォーカスが当たりました。

私はお酒を飲むのが好きで、お酒は人と人を繋ぐ力がある「幸せなもの」だと思っています。一方で、アルコールで命を落とした父を思うと、お酒の負の部分を痛感し、様々な葛藤がありました。そこで、お酒の良いところを享受しながら、人の健康を害さず、より安全・安心に楽しめるものはないのかと考え、低アルコール飲料『koyoi』ブランドをつくりました。

:なるほど、koyoiは「人と人を繋ぐ」というコンセプトで開発されたブランドなんですね!
加藤さんは「スマドリバー」で低アルコールドリンクの価値を届けていますが、なぜこの事業に携わるようになったのでしょうか?

スマドリ 加藤:私は「スマートドリンキング」のコンセプトに共感し、2022年3月にアサヒビールへ中途入社し、『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー渋谷)』の立ち上げから携わってきました。

プライベートな話になりますが、妊娠中の妻が入院したのを機に、外に飲みに行くのを控え、自宅でノンアルコールビールに切り替え、「1日の終わりにノンアルコールビールも良いな」と思うようになりました。しかし、一緒に飲んでいた友人からはお酒を飲まない選択は不思議に映ったようで、自分の新しい飲み方に、なぜか引け目のようなものを感じていました。

そんな時に出会ったのが「スマドリ」です。自分らしい飲み方を肯定してくれる考え方が素晴らしいと感じ、より広くその価値を届けていきたいと転職を決意しました。

ライフステージの変化でお酒との付き合い方が変わったからこそ、みんなが自分に合った飲み方を楽しむ。それは自分らしく生きる上で、とても大切な事ではないでしょうか。今は飲める人も、飲まない/飲めない人も一緒に楽しめる空間として、スマドリバー渋谷を展開し、その「スマドリ」の考え方を世の中に広めていきたいと思っています。

 

 

共通ビジョンをベースに、互いの強みを活かした共創へ

:お二人とも、お酒を飲まない/飲めない人も楽しめるという、共通したビジョンをお持ちですが、どのような経緯で出会い、共創プロジェクトまでに繋がったのですか?

石根:SEAMが2022年春に資金調達し、プレスリリースを書いていた時、ちょうどスマドリ株式会社のリリースが目に留まりました。その内容が、自分の考えていたミッション・ビジョンとほぼ一緒だったので、ビックリしました!居ても立ってもいられず、直ぐに、当時スマドリの代表だった梶浦さんにFacebookでメッセージを送りました。しばらく経って梶浦さんからご返信がありました。

その時は、お互いの考えや掲げる「想い」への共感は強かったものの、「まだ顕在化していないが、ニーズは絶対あるから、新しい市場を一緒に作っていきたいね」という話にとどまりました。

その後『セブンルール』の番組取材を受ける機会があり、koyoiブランドが成長してきたタイミングでもあったので、お声掛けするなら今だな!と思い、何か一緒に取り組めないか、私から改めてお話を持ち掛けました。そこで加藤さんと出会いました。

「想い」で繋がっていたからこそ、ずっとご一緒したいという気持ちも消えずにあった気がします。

 

:石根さんの行動力が、運命的な出会いに繋がり、共創が動き出したんですね!その時加藤さんはどのように感じましたか?

加藤:私はkoyoiのウェブサイトを初めて拝見した時から共感していました。そこには機能の価値訴求よりも、お酒を飲まない/飲めない人たちが飲むシーンや空間、情緒などが、ストーリーとして表現されていました。シーンに合せて商品を選ぶ診断コンテンツもあり、まさに私がスマドリバー渋谷でやりたいことが詰まっていました(笑)。さらに、ターゲット層であるZ世代との親和性やビジョンが一致していることから「ぜひ一緒に取り組みたい」と思っていました。

だからこそ、koyoiさんとビジネスとしてどうご一緒できるかは、社内で議論を重ねました。

実はスマドリ社はアサヒビール株式会社と株式会社電通デジタルが共同で立ち上げた会社で、お酒を飲まない/飲めない人が本当に楽しめる商品を作るミッションを持っていました。また、スマドリバー渋谷を立ち上げるときから、お酒が飲めない人と一緒に試飲して、メニューや空間作りを共創したからこそ、呼び込みたい方に届けることができました。

今度は空間から商品に挑戦したいと思っていた時に、ちょうど石根さんと出会いました。イベントなどいくつかお話しいただく中で、koyoiさんと組んだら、世の中への新しい価値提供がスピードアップできると思ったので、よりニュース性やインパクトが出せるコラボ商品開発を逆に提案しました。

共感に終わらず、共創が実現できた理由

 

:企業同士の場合、共感し合っても、共創にまで発展しないケースは多いと思います。2社の共同開発が実現できたのは、何がポイントだったのでしょうか。

石根:今回、スマドリさんとご一緒できたのは、加藤さんの「情熱」「調整力」「柔軟性」があったからこそだと感じています。

私たちのようなスタートアップ企業はスピードが強みですが、走りながら事業を進めるため、体系化が追い付いていません。一方、大企業だと組織がしっかり構築されていて、事業の進め方も組織化されています。

ビジョンに共感しても一緒に動くところまで実現しないのは、その進め方の違いに折り合いを付けていくのが難しいからではないでしょうか。

その点、加藤さんは私たちが詰め切れてない部分を理解して、大企業の中でもスピード感を持って社内協議し、調整して下さっています。リスクもあるはずなのに、一緒に考えながらやりましょうと言ってくれて、いつもそのフラットな姿勢に助けられています!

加藤:ほぼ毎週SEAM社との定例会があるのですが、意思決定のスピードがとても速くて、どんどんブラッシュアップされていくところは素晴らしいです。我々も日々多くのことを学ばせて頂いています。

共同での商品開発も、アサヒビールではなく、スマドリだからできたことです。スピード感を持ってチャレンジするためにこの会社があるのです。
当時スマドリの代表だった梶浦がGOサインを出して、後押ししてくれたことも、今回の共創が実現できた大きな要素だと思います。

:お互いの強みを理解し、謙虚さと熱意をもって進む、そういったスタンスが一致しているからこそ、実現できたのですね。まさにワンチームの印象を受けますが、お二人が考える、理想のチーム像についてもお伺いできますか。

石根同じ目線でプロジェクトを進められる、それが理想のチームです。今回のプロジェクトも二人三脚で進めてきましたが、どこかのタイミングで「考え直す?」「どうする?」ってなる可能性は、今後もあると思います。でも、同じ目線で進んでいれば、建設的な解決方法を一緒に模索できますからね。

加藤:私も同じで、目的やビジョンが一緒なら、途中ぶつかることがあっても良いと思っています。それは目標達成に必要なことでもありますし、同じ目的を持ち、お互いを尊重して進めていける、そういうチームでありたいですね。

低アルコールという新しい文化をつくる、第一人者となる

:最後に、お二人が思い描くこれからのお酒の場の在り方、低アルコールドリンクの可能性、そこにかける想い、をお聞かせください。

加藤:石根さん含め「スマドリ」は、多くの方に受け入れていただけるコンセプトだと思いますし、プロジェクトを進める中で、共感してくれる熱量の高い人が集まっているのを実感しています。

スマドリバー渋谷や共同プロジェクトの商品提供を通して、「スマドリ」の輪を広めていき、新しい文化として定着させていきたいです。

10年後には「スマドリ」が当たり前になって、ノンアルコールや低アルコール飲料が、多くのお酒の場で選べる時代になるのではないでしょうか。そのとき、スマドリバー渋谷が始まりの場所と認知され、飲まない/飲めない人の「聖地」になる状態を目指していきたいです。

石根:加藤さんがおっしゃるように、近い将来「スマドリ」が当たり前になって、お酒の場に居る誰もが幸せを感じていると思います!私たちがその先駆者となって、新しい価値と文化を創っていきたいです。

:相思相愛ですね!本日は素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

 

会社情報

株式会社SEAM

「ココロとカラダを満たす食体験を創る」をミッションに、食のD2C事業を展開。低アルコールカクテルブランド『koyoi』を2021年9月にローンチし、パーソナライズ診断を行い、好みに合わせて数十種類のラインナップの中からナチュラル製法のクラフトカクテルを提供。食の価値観が多様化する中、一人ひとりのライフスタイルに沿った食ブランドを展開する”食のライフスタイルカンパニー”を目指す。

https://koyoi.jp/shop

スマドリ株式会社

「お酒を飲まない/飲めない」方に焦点を当て、デジタルを中心としたコミュニケーション活動の設計やデータマーケティングを行う。多様な生活者ニーズの把握や理解を促進することで、アサヒビールの「お酒を飲まない/飲めない」方との関係強化、多様性を尊重し合える環境づくりを推進する商品やサービスの展開、体験の場の創出など様々な取り組みを支援する。

https://www.asahibeer.co.jp/smartdrinking/

 

【編集後記】
まさに時代の変化を感じさせられた対話でした。10年後の当たり前をいま自分たちの手で創っていく、両社(者)がかけている想いと謙虚さがあるからこそ共創が実現されました!私もお酒が好きだけど沢山飲めないものなので、コラボ商品とこれからの展開がとても楽しみです! (とう)


取材日:2022年4月25日
インタビュー:鄧 雯
文・撮影:原 康太
編集:山田 直哉、神成 美智子

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