skillnote高橋悠

対談 Vol.003 「大企業向けSaaS導入を進めるSkillnoteの戦略」facing株式会社 x 株式会社Skillnote

スタートアップ対談 ~CS編~ ①株式会社Skillnote
「CS」と聞いて「顧客満足」「カスタマーサポート」「カスタマーサービス」… 何を思い浮かべますか?

近年サブスクリプション(定期購入)型サービスを中心に「カスタマーサクセス」という概念が注目されるようになりました。利用ユーザーの課題を解決し顧客の成功体験をつくりだすことによって、継続を促すカスタマーサクセス。「顧客が成功するためのあらゆる活動を支援すること」」と定義されるため、役割も広範囲にわたっています。

顧客の機微を感じ取り、日々CSに取組むfacing株式会社の若手グループリーダーが、CSに力をいれる話題の企業にインタビューする企画を全2回でお届けします!彼女たちが抱える課題をぶつけながら、各社の業務成功の秘訣、チーム作りのヒントを探ります。

facing株式会社
大企業からスタートアップまで事業フェーズ問わず、インサイドセールスやカスタマーサクセスをBPOにて請け負っている。「100年後も、ヒトが主役の世界を創造する」をビジョンに掲げ、カスタマーサクセスの戦略立案から運用実行、コンサルティング業務まで総合的に伴走支援。バリューは、「ぬくもり」と「成果」にコミットすること。
https://facing.co.jp/

加藤せりん (愛称 せりん)

出身:大阪育ちのトルコハーフ
役職:アカウントマネージャー
お肉は食べないペスカトリアン!食べることも料理も大好き!
Twitter: https://twitter.com/selin_facing

facingのせりんです!
現在アカウントマネージャーとして窓口業務を行いながら、社内ではチームマネジメントに取り組んでいます。不合理なCSと向き合う中で、自分自身はいかに合理的判断ができるかを大切にしています。

梶川麻衣 (愛称 かじ)

出身:神戸
役職:CSマネージャー 兼 広報PR
三種の神器は、銭湯・ラーメン・スタバ!
Twitter: https://twitter.com/kajikawa_facing

facingのかじです!
CSチームのマネージャーとしてマネジメントをしながら、クライアントの窓口業務、採用や広報活動にも携わっています。自分自身を貫きつつも、クライアントの立場に立った判断を常に心がけております。

CS編の第1回は、「つくる人が、いきる世界へ」をビジョンに掲げる株式会社Skillnote(以下、Skillnote)で、カスタマーサクセスグループのマネージャーをされている髙橋 悠さん。
Skillnoteは、スキルマネジメントシステムをSaaSで提供しており、大企業をターゲットとした、いわゆる「エンタープライズセールス」に強みを持っています。特に人材のスキル管理のニーズが高い製造業や建設工事業から人気を集めているサービスです。

髙橋 悠
Takahashi Yu

株式会社Skillnote / CSグループ マネージャー

【Profile】早稲田大学法学部卒。2011年に三井金属鉱業株式会社に経理として入社、その後はコンサルティング会社を中心にキャリアを築きながら製造業の領域に携わる。2022年4月、株式会社Skillnoteに入社。CSマネージャーとしてチームを統括しながら、お客様のサクセスを生むべく日々奔走している。

エンタープライズ向けにSaaS導入を進めるカギとは?

facing 梶川(以下、かじ):Skillnoteさんは新規営業に力を入れているとのことですが、お客様とのファーストコンタクトは、どのような流れで生まれますか?

skillnote 髙橋(以下、髙橋):当社の場合は、お客様からのアクションが起点となる「インバウンド」の比率が高いです。ホームページから資料をダウンロードしたり、ウェビナーに参加していただいたりすることから始まるケースが多いですね。組織として「THE MODEL型*」を採用しているので、そこからインサイドセールスの担当者がお客様に電話をかけてファーストコンタクトを取り、フィールドセールスに引き継ぐ流れが主になっています。その後に実際の導入や運用をサポートするのが、私たちCSの仕事です。
*営業活動を分業する体制のこと

かじ:大手企業様向けのSaaS導入はハードルが高いように感じます……。どこに難しさがありますか?

髙橋:そうですね。お客様の組織が大きい分、既存のスキルや教育、資格などが多種多様であり、それらが十分に整理されていないため、これらを整理しながら進める必要があります。「入口」の段階で各部門に関係する方々をうまく巻き込むことでしょうか。

かじ:「入口」と言うのは、お客様がSkillnoteを使い始める段階でしょうか?

髙橋:いえ、それよりも前です。製造現場は日々の業務が忙しいので、スキル整理の優先順位は低くなりがちですし、 片手間な対応にもなりやすいです。早い段階から立ち上げを支援することが大切だと思い、運用前からコンサルティングを提供しています。

facing 加藤(以下、せりん):なるほど。導入企業側の「誰を巻き込むか」もポイントになりそうですね。

髙橋:基本的には営業段階の窓口担当者につなぎ役をお願いして、工場長や開発センター長といったコア技術に精通する方々に参加いただくようにしています。ただ、製造業に限った話ではありませんが、エンタープライズ向けにSaaS導入を進めると、結果的に関わってくる部署、担当者が多くなりがちです。

かじ:関係者が増えるほど意見は分かれやすくなり、オンボーディングが進まないようにも思います。何か工夫されていますか?

髙橋:たしかに、新しい取り組みを始めることに対して社内でも意見はさまざまで、合意形成は非常に重要です。また、製造業や建設業界では、多くの企業様がまだSaaS導入の経験が少ないという印象を持っています。「スキル定義や現場を動かす決定権をもつ方」を中心にしながら、現場の「変化に前向きな層」をどんどん巻き込んで味方を増やすことが大切ですね。

導入に向けて「効率は意識しない」

かじ:SaaSに慣れていない企業にアプローチする秘策があれば教えてください!

髙橋コンサルティングからオンボーディングまで一貫して大切にしているのが、導入までのスピード感と接触の頻度を増やしながら細かくケアすることです。CS用語で言う「ハイタッチ」ですね。
私の経験から、歴史の長い会社の場合は対面での打ち合わせを希望される方や、密なコミュニケーションを期待される方が多いように思います。ハイタッチを重視して人と人との直接的なやり取りを増やすと、信頼が築けて結果的に全体がうまく回るようになりますので、コンサルの工数はあえて意識しすぎず、しっかり寄り添いサポートすることを徹底しています。

せりん:Skillnoteは解約率が低いと伺いました。「ハイタッチ」を重視していることが、解約率の低さにもつながっているのでしょうか?

髙橋:おっしゃる通りです。
ハイタッチを大切にすることで、初期の段階で重要度の高い課題を把握できますし、企業のニーズに合わせたアプローチが可能になります。そのことによって計画的な人材育成の実施やPDCAの効率化など、様々な提供価値が生まれますし、解約率の低さにつながっているのかもしれません。また、Skillnoteを導入すれば「ISO9001」という品質マネジメントの国際規格の監査があっても、効率的に対応できることもメリットです。ISO対応が必要なお客様は従来のExcelと比べ、Skillnoteの利便性を強く感じていただき、継続いただいている側面もあります。

モノづくりの拠点である工場を支えたい。髙橋さんの”人”への思い

せりん:髙橋さんは製造業に対する思いが強いように感じましたが、何か原体験がありますか。

髙橋:社会人1年目の工場勤務の経験が影響しています。当時、私は経理を担当していたのですが、工場で働く人たちが地域のお金を循環させていることを肌で感じていました。モノづくりの拠点である製造工場は、地域経済を支える上で必要不可欠な存在です。工場がなくなるとその地域は衰退してしまうと言っても過言ではありません。「日本を良くするために製造業を支えたい」という思いが、私のキャリアの基軸になっています。

かじ:そうした思いを抱かれた上で、Skillnoteにジョインした理由を教えてください。

髙橋:以前勤務していたコンサルティング会社で基幹システムの導入に従事していたことがありました。コンサルティング会社やSIerは導入後にプロジェクトリリースになるケースも多いですが、そもそもシステムは導入後の活用と成果が大事と感じています。「システム導入後」を知らないままプロジェクトを離れることに、私個人は消化不良感を覚えたのかもしれません。その点、SkillnoteのCSは導入後からがむしろ本番であり、ここに貢献することこそ、自分自身の介在価値と捉えています。

せりん:髙橋さんは現在どのような役割を任されていますか?

髙橋:お客様向けのCSを担当し、主に製品の立ち上げやプロセス構築の過程にアプローチしています。社員数が数千人を超える大規模な会社で、Skillnoteを導入するにあたって関係部署、関係者が多数いらっしゃる案件を担当することが多いです。Skillnoteの事業成長に貢献できるやりがいのある仕事です。

チームづくりで気を付けるべきは、「ズレ」を埋めるコミュニケーション

せりん:1年間で従業員数が倍増するほどの成長をされていますが、チームづくりで何に気を付けていますか?

髙橋:コロナの影響もあってリモートワークのメンバーも増え、働き方が多様になりました。リモートワークで大切なのは、分からないことを気軽に聞ける体制や雰囲気だと思っています。当社ではバーチャルオフィスツールの『oVice』でコミュニケーションを取りながら、疑問や不安をすぐに解消できる状態をつくり、新しく入ったメンバーでも相談しやすい雰囲気をつくっています。

コミュニケーションを取るときに意識しているのは、「言葉を省かずに、前提を伝えること」です。対面だとニュアンスで伝わる内容も、テキストでは意図通りに伝えるのが難しい。小さな認識齟齬が積みあがっていくと大きな問題になってしまうこともあるので、日頃から丁寧な言語化を大切にしています。

かじ:髙橋さんの説明はとても分かりやすいなと思いました!どのようにして訓練されていますか?

髙橋:そのように言って頂けて嬉しいです!僕は、言葉は思考の上澄みだと思っています。自分が理解できていないことは言語化できないですよね。自分が何を理解し、理解していないのかを認識し、理解できていないことは、最後まで考え抜くというのを繰り返しています。

せりん:はっとしました…!当たり前のことですが、思考を鍛えないと、言葉も成長しませんね。
チームメンバーと一緒に思考の訓練をすることはありますか?

髙橋:試験的な取り組みとして、社内勉強会を開催しています。勉強会では、私の経験や知識を伝えたり、メンバーとコミュニケーションを取り普段の業務に対する内省の機会を一緒に作ったりしています。

そもそも、スタートアップ企業は社員のバックグラウンドが多種多様なので、同じ業務に対してでも判断基準がズレやすいです。このような取り組みを通して、そのズレを埋めて、チームとしてのまとまりをつくることも心がけています。

事業と結びつけたスキルデータの活用

せりん:今後の展望を教えてください。

髙橋:スキル単体に焦点を当てるだけでなく、「事業と結びつけたスキルデータの活用」にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。どんな事業計画も、最終的にそれを実行するのは「人」です。蓄積したデータを利用して、人材の力を最大化できるように、今後は要員計画や人材配置などにもサービスを広げたいですね。

かじ:お客様が使い続ける中で集めたデータをどう活かすか。そのような次のフェーズを作っている最中ということですね。

髙橋:はい。特に最近は、少子高齢化を背景とした人材不足の悩みが増えていますよね。「技術がしっかり受け継がれた」というような成功事例を一つずつ積み重ねた上で、自分たちにできることを明確にしていきます。
お客様の悩みに最も近い場所で寄り添うことができるCSの立場を活かして、成功体験の事例づくりやプロダクトづくりに貢献していきたいと思います。

かじせりん:本日はありがとうございました!

左から、facing株式会社 加藤さん、梶川さん、株式会社Skillnote 髙橋さん

株式会社Skillnote

「つくる人が、いきる世界へ」というビジョンのもと、製造業を支える日本発、世界一のサービスをつくるべく事業を展開している。Skillnote(スキルノート)は、社員のスキルを軸に教育情報、資格情報を一元管理し計画的な人材育成を実現するスキルマネジメントシステムで、製造業・建設工事業などから選ばれている。機能性の高さは多くの高評価を得ており、2022年に経済産業省が後援する「第7回HRテクノロジー大賞」で「イノベーション賞」受賞。同年1月からは海外でサービスを開始し、グローバルでの事業展開を本格化している。

公式サイト:https://www.skillnote.jp/


【編集後記】

Skillnoteさんはエンタープライズ向けのSaaS企業ということでしたが、共通点や共感できる部分もありながら、勉強になる点もありました。CSに関して先に効率的なところをあえて狙わずハイタッチからという点は意外性がありながらも、DX化が進む時代の中で人間の力を使う事に注力している弊社にとって、かなり共感できる点でした。
チーム体制については、チームで話し合う前に前提条件を伝えて、細かいニュアンスの違いを先に無くしておくことでバタフライエフェクトを防ぎ、論点がずれないように工夫しているとのことでした。CSという言語化しにくい分野を作っていくにあたり、チームの体制作りやマネージャーとしての在り方は弊社でも都度課題として挙がるところなので、髙橋さんとのお話はかなり良い刺激になりました。 (せりん)

「言葉は思考の上澄み」…インタビュー中に髙橋さんがおっしゃっていたこの一言が、ずっと心に残っています。シビれました!当たり前のことなのかもしれませんが、思考を磨かなければ言葉の成長は難しいですよね。その逆も然りだと思います。
「思考」「言葉」、これらは働いていくうえで絶対に自身と切り離せないものなので、より一層ビジネスウーマンとして磨き続けていこうと考えさせられたキッカケとなった言葉でした!ありがとうございました!(かじ)


取材日:2022年9月27日
インタビュアー:facing株式会社 加藤せりん、梶川麻衣
文:紺野天地
写真:西かな子

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