革新的な挑戦に躍動するスタートアップとベンチャーキャピタル、大企業の次期経営幹部などキーパーソン限定の新産業創造プラットフォーム『STORIUM』。
8月24日にオンラインで開催されたスタートアップ企業のピッチに潜入した。
※新産業創造プラットフォーム STORIUM https://storium.jp/about/
企業が真に必要とするITエンジニアを的確に育てる
1. 株式会社TechBowl・小澤 政生 氏
社会全体としてDX化が進む中で、ITエンジニアの需要は10倍前後で推移し、他の職種と比べて非常に高いものとなっている。そのため、企業の間ではITエンジニアの獲得が大きなポイントとなっている。しかし、「企業が求める内定レベルとエンジニアの目指す人の実力の乖離」、「プログラミングスクールの講師の質の低さ」の2つの要因により、自社開発企業でも通用する実力あるITエンジニアが増えない、という問題は根深く残っている。
それらの問題を解決するのがTechTrainだ。このサービスでは、メガベンチャーのテックリードやスタートアップのCTOなど50社100名以上の現役ITエンジニアが、メンターとしてユーザーのスキルアップとキャリアアップをサポートする。彼らのノウハウを基に作成されたスキルチェックリストで今まで数値化されにくかった実力値を可視化する。これによりユーザーはレベルの高い環境かつ最適な学習プランでスキルアップが行える。現在ユーザー数は5,000名を超え、取引先企業は200社以上となっている。
また近年は、独自の教育パッケージを活用し、企業の若手向けスキルアップ研修や、学校向けのリスキリングにも注力している。50社100名の「トップエンジニアのノウハウの集合体」を活かし、業界の評価水準や独自の教育コンテンツを武器に今後もさまざまな事業を展開予定だ。
アナログな手段による煩雑なセキュリティ管理を自動化する
2. SecureNavi株式会社・井崎友博 氏
昨今、サイバー攻撃による情報漏洩などが問題視され、企業はセキュリティ管理の更なる強化が必須となっている。対策に関しては、公的機関の定める法令や、セキュリティ業界の提示するガイドラインに乗っ取った方法が求められる。しかし、多くの企業は膨大なガイドラインをアナログな手法である。Word・Excelで管理しており、年々数を増し、また、改定スピードが速い法令に追いつくことが難しくなっている。
この問題を解決するのがSecureNaviだ。セキュリティ要件の内容がシステム内に初めから保管されており、改定があっても自動的にアップデートされる。そのため、企業のセキュリティ担当者は改定内容を追い続ける必要がない。セキュリティ対策の実施状況の確認も、*¹APIを活用することで、多くの業務を自動化することができる。現在リリースしているものは*²ISMS、*³Pマークに対応したものだけだが、その他様々なセキュリティ要件に対応できるように追加開発を行っている。
*¹API:アプリケーションやソフトウェアの一部を外部に公開し第三者が開発したソフトウェアと機能を共有すること。
*²ISMS: 組織の情報セキュリティを管理するための仕組み
*³Pマーク:個人情報保護体制に関する認証制度
リソースシェアリングを通じ、圧倒的に早く安く楽な研究開発を実現
3. 株式会社Co-LABO MAKER・古谷優貴 氏
化学メーカーなどの研究開発はラボ施設の立ち上げで数か月、試作工場の立ち上げに数年という長い期間が必要で、機動的な研究開発の難しさが問題となっている。
この課題を解決するのが研究開発リソースシェアリングサービス、コラボメーカーである。ライフサイエンス・化学系企業を中心とした利用者側は、目的に即したラボや人員が既に揃っている大学や研究室などに資金を提供することで、スピーディーな研究開発が可能となる。ラボ・人員を提供する側も、不足している資金獲得機会や研究開発を通じた経験値、データの蓄積といったメリットがあり、双方に大きなメリットをもたらすサービスである。実際の事例として、自社での実施の場合、4000万円程度プラス半年のコストがかかるものが、月30万ほどで利用可能という大きなコストカットが実現されている。現在、対応依頼数は1500以上、マッチグループ300以上という実績を出している。
自治体施策一元集約プラットフォームがスタートアップ連携を活発化
4. 株式会社FromTo・宮城 浩 氏
現在、大都市圏に限らず様々な自治体が企業を呼び込み、地元を実証実験の場として活用させる動きを見せている。このような自治体を通じた活動は広報効果も高い上にプロダクトの導入実績も作られる上に、補助金も得られ、企業にとっては大きなメリットと捉えられている。一方で、公的機関特有の申請までの煩雑さから、時間に余裕のないベンチャー・スタートアップからは忌避されてしまうという傾向がある。
この課題を解決するのが47passである。このサービスは自治体施策を一元集約し、容易に検索、条件理解、申請ができ、企業側の参入障壁を下げる。ビジネスモデルとしては、企業は基本無料で利用でき、自治体側に対して有償サービスとして提供している。自治体側は、情報一元化による広報力の強化、これまで繋がれなかったスタートアップ・ベンチャー層とも連携を図れるメリットが得られる。*¹デジタル田園都市国家の予算も視野に事業拡大を計画しているが、まずはスタートアップ支援策に力を入れているグローバル拠点都市を中心に広げていく予定。現在10自治体がサービス導入検討しており、登録企業はスタートアップを中心に160社となっている。
*¹デジタル田園都市国家:「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」という、政府が目指す持続可能な経済社会への基本方針
【編集後記】
今後の日本は少子高齢化と人口減少による労働人口や様々なリソースの低下という問題にぶつかる。そんな中で限りあるリソースを効率的に使い適切な場所に適切な人やモノを送り出し、無駄な時間を減らすことのできる様々なプラットフォームの重要性はより高まっていくだろう。スタートアップによる挑戦が、未来の社会を豊かにするということを改めて実感させてくれる4社のピッチであった。
取材日:2022年8月24日
記事作成:佐々井 統太
校閲:原 康太