ペット・空間演出・セキュリティ・再エネ スタートアップが届ける4つのサービス

革新的なビジネスに挑戦するスタートアップを始め、ベンチャーキャピタルや大企業の次期経営幹部など、キーパーソン限定の新産業創造プラットフォームである『STORIUM』。
今回は、10月26日にオンラインで開催されたスタートアップ企業のピッチ#8に潜入したので、その内容をお届けする。

ペットの価値観を再定義し、家族のように愛せる社会へ

1. 株式会社PETOKOTO

株式会社PETOKOTOは、ペットを家族として再定義し、保護犬猫マッチングサイトやペットメディア、完全食のペットフードを提供している。

現在の日本は、ペット数が子供の数を上回っているものの家族と同じという価値観が定着していない、と代表の大久保氏は言う。実際、大久保氏が飼っている犬は、足が内股という理由だけでペットショップの流通で捨てられてしまっていたとのこと。また、ペットショップで販売されているペットフードはドライフード中心で原材料は不透明であり、人間の食品の基準のようには作られていない。

そんなペットを取り巻く環境を変えるために、「出会い」「情報」「食事の体験」の3つを軸に、PETOKOTOはサービスを提供している。まず、「出会い」は「OMUSUBI」という保護犬猫と家族として迎えたい人をマッチングしているサービスだ。そして「情報」は、「PETOKOTOMEDIA」であり、日本No.1のPV数(250万PV/月)を誇るペットメディアを運営しており、ペットを持つ方に有益な情報を提供している。そして、「食事の体験」は、「PETOKOTO FOODS」という、国産食材がメインで産地情報の透明性があり、保存料無添加の完全食を提供するサービスだ。現在、2020年から年次で300%の成長、ARRは6億円まで達成しており、かなり勢いを感じる事業となっている。

そして、今年9月にはオフライン戦略としてイオン110店舗に出品し、来年からは独自アプリの提供を開始する。アプリ経由で犬・猫のデータを取りながら、食事だけに留まらず病気の予防なども含めて、1匹1匹に合った最適な提案をしていくような総合コンシェルジュのプラットフォームを目指している。

デジタル技術で、新しい空間体験を届ける

2. 株式会社GATARI

株式会社GATARIは、ARクラウド技術などを使った空間演出を得意とする未来のインフラ構築企業である。

簡単に説明すると、現実の空間にデジタル音声データなどを加えて、これまでと違った空間体験をサービスとして提供している、という。プレゼンテーションの中でデモが紹介されていたが、現実の博物館を歩く際、その場所ごとにデジタルで加えられた音声データ(恐竜の鳴き声など)を聞きながら展示物を見ることができる。これが新しい空間体験となる。

デモ画面(黄色の枠に入ると、指定した音声が流れるように設計することが可能)

このように、空間に配置された様々なバーチャルセンサーより音声を加えて、その空間を演出していくことができ、ウェアラブル装置を利用者にレンタルするなどして、音声による新たな体験機会を提供している。博物館の例を上げたが、例えば観光地のお城で体験できるインバウンド向けのコンテンツや、駅からスポーツスタジアムまで行くまでの道のりに音声を加えてエンターテイメント性を加えるなど、用途は多岐に渡る。また、直近は東京ドームシティのお化け屋敷に導入されているとのこと。現実の空間に手を加える必要がないので営業をストップせずに様々な新しい体験を加えていけるのが魅力だ。

今後、どのような施設や空間でこのサービスが展開されていくのか、GATARIの動きに注目していきたい。

イスラエル国防軍出身者が開発する、超実践型サイバーセキュリティ訓練システム

3. AironWorks株式会社

AironWorks株式会社は、サイバーセキュリティ実践型の訓練により企業のセキュリティレベルを高める事業を行っている。
具体的には、インターネットから顧客の情報を収集し、顧客のセキュリティの弱点を洗い出して、訓練攻撃を自動生成していくようなシステムだ。このシステムに、従業員の氏名やメールアドレスが入力された情報をアップロードすると、AIが分析を開始して、金融機関を装ったショートメッセージなど、個別最適化した訓練攻撃を継続的に実行する。そうすることで、顧客のセキュリティレベルを一段と高めていく。

訓練後は、結果をダッシュボード上で確認でき、社内の弱点が分かる。また原因を深堀りしてデータを蓄積し、従業員一人一人に合ったセキュリティ訓練教育のプログラムを提供していくようなことも可能。これは、イスラエルに研究施設があるAironWorksの強みであり、イスラエル国防軍で使われているエッセンスも加えているということだ。

導入後は、3ヶ月でセキュリティレベルが飛躍的に改善するという効果をすべての顧客で検証済みであり、横浜銀行も有償で導入している。また、プレシリーズAで約3.9億円の資金調達を完了しており、この資金で国内とアメリカ、ヨーロッパ、APACの主要市場でPoCを進めていく計画だ。海外で活躍する日本発のスタートアップとなる可能性を秘めていて、今後もAironWorksの名前をぜひ覚えておきたい。

再生エネルギーを、最適に調達できるプラットフォーム

4. 株式会社エナーバンク

株式会社エナーバンクは、脱炭素をベースとした、法人と電力サプライヤーのマッチングサービス、「エネオク」を提供している。

2020年、日本は温室効果ガスの排出を2050年までに全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを宣言したことにより、環境省、自治体からもこのサービスに注目が集まっているとのことだ。サービスの特徴の一つは、需要家(電力を必要とする工場等)が登録料無料で利用でき、最適な価格の電力サプライヤーと再エネ契約が可能なことである。オークション方式を取っているため、決まった期間内で電力サプライヤーが他社の価格を確認しながら再入札が可能なので、需要家はオークション終了後に最も条件が良い契約を決めることができる。また、再生可能エネルギーを利用した電力の契約を最初から100%に切り替えするのではなく、その需要家のロードマップに沿って、最初は再エネ率30%からスタートするなどの条件追加も可能だ。

現在、このプラットフォームを介した電力契約は総計約140億円まで伸びており、施設単位では3,000件を超え、自治体は北海道から九州まで30以上に採用されている。

今後、現在は需要家・施設単位の単独オークションとなっているものを、共同オークションに進化させていく予定だという。複数の需要家や地域ベースの共同オークションを行うことにより、需要家ごとに大きく異なる電力の利用状況を(例:利用量は冬に多い、夜に多い、など)、複数の需要家をミックスして平準化することができる。電力サプライヤーにとっては、平準化された電力需要のほうが価格も最適化しやすくなるとのこと。

今後も、脱炭素やグリーンテックにさらに注目が集まり企業・自治体も対応を迫られると予想されるので、エナーバンクの更なる成長が期待される。

記事作成:山田 直哉

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