技術進歩の社会に生じる課題に挑む 話題のサービス4つ

革新的な挑戦に躍動するスタートアップとベンチャーキャピタル、大企業の次期経営幹部などキーパーソン限定の新産業創造プラットフォーム『STORIUM』
6月22日にオンラインで開催されたテクノロジー領域の最前線で活躍するスタートアップ企業のピッチに潜入した。
※STORIUM https://storium.jp/about/

AI開発を10倍速くすることで、業務推進を後押し

1. FastLabel 株式会社・上田 英介 氏

AI開発に必要なアノテーション作業は、手間・時間がかかる、リソース不足、という課題がある。加えて、アノテーション自体の品質の担保が難しく、AIが機能しないという様々な問題が発生している。
このような課題にAIを使って解決する「FastLabel」を開発。アノテーション作業を自動化し、AIの精度に悪影響を与えるデータを検出するサービスを提供する。
今までエンジニアが手作業で直していたものを自動化することで、手間やコストが削減でき、よりコアな業務に集中できるようになる。近年、アノテーション領域では、日本企業のグローバル参入が増加傾向にあるという。その中で、「テクノロジーを使って、エンタープライズ企業向けにデータの課題を解決する」という独自のポジションをとっている。
今後は、データ作りからAIの活用、開発まで一貫して構築可能なインフラ提供を展開していく。

FastLabel株式会社

小型の無人人工衛星で宇宙実証を推進

2. 株式会社Elevation Space・小林稜平 氏

国際宇宙ステーション(ISS)の代わりとなるプラットフォームを開発する、東北大学発の宇宙スタートアップ。
共同創業者の桑原研究室の技術を活用しながら、宇宙から地球に戻ってくる人工衛星の開発を目指す。
宇宙で実験したいものを衛星に乗せて打ち上げ、無人での実験後、地球上に戻ってきた人工衛星を回収し、ユーザーに実験物などを渡すというサービス。宇宙から地球に戻ってくる人工衛星を開発する技術をもっている民間企業はまだない。その技術を確立しようと、「技術実証機」と呼ばれる人工衛星の開発を行っており、2023年の打ち上げを目指している。
ISSは、厳しい安全基準や使用できる国の制限など、様々な課題を抱えており、さらに2030年には廃棄されると言われている。それに変わるプラットフォームを構築することは、今まで参入できなかった国への広がり、創薬や新規材料の開発など、宇宙での実証試験に大きく貢献することが期待されている。

株式会社ElevationSpace

ノーコードで誰でもAIを活用できる社会の実現

3. 株式会社MatrixFlow・田本芳文 氏

「テクノロジーで世界をつくる」をミッションに掲げ、誰でもAIを活用できる社会の実現を目指している。
これは、高度なテクノロジーによって人間の体を代替するデバイスを生み出し、全ての人から身体的な制約をなくすというものである。
業界や自社サービスを熟知するプロがAIを活用できれば、データサイエンティストが作るよりもいいものを作れるのではないか、と想い創業にいたる。ノーコードでAIを構築できるプラットフォームを提供する。
ブラウザさえあれば簡単に構築でき、AI構築に留まらずデータを更新し、継続的にメンテナンスできる形で提供する。この技術により、人件費の削減、AIを専門としない人でも活用できる世界を実現する。
また、AIのデータ分析・処理をオープンにすることにより、企業が簡単に説明できる透明性を確保している。
昨年、総務省後援の「アスティックAI部門」でニュービジネス賞を受賞し、本年、内閣推進の戦略的イノベーション創造プログラムに採択。
今後は、ノーコードでAIのノウハウや素材を売り買いするプラットフォームへの展開を考えている。

株式会社MatrixFlow

家賃保証業務支援で、個人の信用価値を最大化

4. リース 株式会社・中道 康徳氏

「個人の信用価値を最大化すること」をミッションに掲げた、クレジットテックのスタートアップ。
個人の信用に関わる融資実行額は、アメリカと比較すると6倍もの差があり、アメリカでは家賃の支払い履歴が個人格付けに利用されているという。単身世帯をモデルにしたとき、家計支出の2割を占めている家賃。家賃の支払い情報そのものは家賃保証会社にあるが、デジタル化の課題を抱えている。
そこで開発したのが、家賃保証業務を支援するSaaS、smetaクラウド
これにより、家賃の支払い情報を効率的に収集できるようになる。
具体的には、家賃保証会社が行っているメインの3業務、「審査・契約管理・督促」をワンパッケージ化することにより、クライアントによっては審査業務を1/4に圧縮できる。また、遅延損害金の自動算出&徴収による大幅な増益に貢献でき、支払情報も契約した保証会社を通じてSaaS上に蓄積されるようになる。
現在、住宅ローン最大手のアルヒと手を組み、蓄積されたデータを担保に利用極度額を広げることを試みており、住宅購入者の選択肢を増やすことを目指している。
今後、住宅ローンからオートローン、そしてショッピングローンなど、多様な領域へ拡大していく予定。

リース株式会社

【編集後記】
ITや宇宙の話題が多く語られるようになった時代に、コアな課題を掴み、ユニークなアプローチで挑んでいる4社。技術が進む中で生まれる課題に果敢に挑み、より人々の仕事や生活が豊かになるように取り組んでいる。4社のビジョンに共通しているのは、専門家ではない人に目を向けていること、そしてその技術をブーストさせていることではないかと感じた。テクノロジーの分野に対して身構えてしまう人にこそ着目してほしい(不二山)。


取材日:2022年6月22日
記事作成:不二山 七海

校閲:原 康太

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