革新的なビジネスに挑戦するスタートアップやベンチャーキャピタル、大企業の次期経営幹部など、キーパーソン限定の新産業創造プラットフォームである『STORIUM』。7月27日にオンラインで開催されたスタートアップ企業のピッチに潜入した。
※STORIUM https://storium.jp/about/
データで医療・ヘルスケアの世界をひとつに結う
1. 株式会社Yuimedi・グライムス 英美里 氏
日々、診療を行う中で蓄積されていく医療データは膨大な量となっており、これを活用すれば患者へより良い情報提供や、新薬の開発、医療費の適正化に寄与すると考えられている。しかし、医療データの多くは様々なフォーマットで各医療施設に保管されており、それを整理することのできる専門人材も不足していることが大きな課題となっている。Yuimediはこうした課題解決を行うために、医療データの*クレンジングや*データマートの設計などの前処理を自動化し、医療データの利活用を促進するネットワークプラットフォームを構築しようとしている。
現在、ネットワークプラットフォームの前段階として提供する*ETLツール、Yuicleanerは現在一般的に使われているETLツールと違い、医療業界特有のニーズに対応している。具体的には、オフラインで動作するため、個人情報である医療情報を安全に取り扱うことが可能。また、標準規格への変換等の医療データ独自のアルゴリズム辞書が連プレートとして搭載されており、変換履歴を確認できるレビュー機能も搭載している点が特徴である。
今後は、グローバル展開とネットワークプラットフォームのローンチに向けて動いており、最終的には治験においても対応可能なサービスの開発を目指している。
株式会社Yuimedi
Yuicleaner
*クレンジング・・・データを整備すること
*データーマート・・・企業などで情報システムに記録・蓄積されたデータから、利用部門や用途、目的などに応じて必要なものだけを抽出、集計し、利用しやすい形に格納したデータベースのこと。
*ETLツール・・・ETLとは「Extract, Transform and Load」の頭文字をとった言葉で、Extractはデータの抽出、Transformはデータの変換、Loadはデータの書き出しを意味する。各システムから抽出したデータを変換して集約したものを書き出して、分析などに活用することが目的のツール。
クリエイターに新しいファンプラットフォームを届ける
2. ミーチュー株式会社・小泉 拓学 氏
新型コロナウイルスによってライブエンタメ業界が大きな打撃を受けている。多くのクリエイターがオンラインでの活動に移行していく中で課題となっているのが、オンラインサービスの手数料の高さである。スマホアプリの場合、GoogleやAppleに支払う決済手数料が30%、サービス提供者のプラットフォーム手数料が50%になる場合もあるそうだ。それに対してミーチュー株式会社が提供する、「オンラインファンコミュニティMechu」はプラットフォーム手数料は0%、かつWebサービスなのでGoogleやAppleに支払う手数料がなく、費用はクレジットカードの決済手数料の5%のみ。ファンの支援の95%がクリエイターに届く仕組みになっている。
Mechuではクリエイターによる3つのマネタイズ方法が用意されている。まず1つめは基本機能である月額課金制のコミュニティである。グループチャット形式であり、気軽に使うことが可能である。2つめは投げ銭による都度課金システムである。この際に使用されるサービス内コインの販売価格から得られる手数料がMechuの主な収益源である。3つめは抽選、ライブ配信、NFT連携などの様々な拡張機能である。
プラットフォームの流通総額は5,464万円(2021年)。JR東日本などの大企業ともアライアンスを組んでおり、2022年は10倍成長を目指す。
今後は、クリエイター以外にも対象を広げていき、いわゆるファンコミュニティというものから、誰でもサブスクビジネスが行えるというプラットフォームに進化していくことを目標としている。
ミーチュー株式会社
Mechu
継続率99%以上の、新しい受発注システムを拡げる
3. CO-NECT株式会社・田口 雄介 氏
BtoBにおける受発注において、いまだに7割がFAXや電話といったアナログな手段が主流を占めていると言われている。そのため、発注する側は毎回手書きでFAXを送信し手間がかかり、一方で受注する側は、毎日大量のFAX用紙をさばくことに時間を取られる。アナログな受発注により消費される無駄な労力を失くしたいという思いから生まれたのが、受発注システムCO-NECTである。
CO-NECTはわかりやすいUIとシンプルな料金設定により、アナログな手段に慣れ親しんできた人でも抵抗なく利用できることや、食品、薬品、工具など、商材の領域を問わない発注システムであること、アナログよりも受発注時の正確性が向上することなどから、継続利用率99%以上という結果を出しており、スギ薬局やすかいらーくグループなどにも利用されている。
ビジネスモデルとしては発注側からは料金を取らず、受注側から年間利用料を取るモデルとなっている。
受発注システムCO-NECT
遠隔接客サービスを通じて新しい店舗の在り方を創る
4. タイムリープ株式会社・望月 亮輔 氏
2030年にはサービス業だけで400万人の人手不足が発生すると言われる中で、店舗の無人化や人材の無駄のない活用といったことが今後の課題になってくる。この課題を解決するために生まれたのが遠隔接客サービスのRURAである。これは店舗に来た顧客に対して、各店舗に設置されたRURA OSの搭載されたデバイスを通じて、遠隔地にいる従業員が接客するというものである。店舗を無人化しつつ、少人数で複数店舗での接客ができるために人件費の面において大きな効率化が図れる。また、顧客側は特に何も操作することなく、スタッフ側から能動的に声がけすることができるので、これまでの接客と変わらない体験を実現することができる。
モデルハウスやJR東日本ホテルメッツにも導入されており、今後は国内1万店舗への導入を目指している。
タイムリープ株式会社
【編集後記】
DXや様々なオンラインサービスが広まる中で、いまだにアナログなビジネス環境やデータを活用しきれていないような課題が多く存在することを実感した。今回のピッチで、スタートアップがこれらの課題解決に挑戦しようとしていて、すでに大企業などで利用され始めている、つまり課題解決の実現性が高いことを感じることができた。引き続き、これらのスタートアップの動向を注視し、社会にどのような変化が現れていくかをレポートしていきたい。
取材日:2022年7月27日
記事作成:佐々井 統太
校閲:山田 直哉