第42回は、スタートアップを100人規模まで成長させるための戦略をテーマに、DXコンサルティング事業やDX人材のスキルシェアプラットフォームを展開する株式会社GIGの代表取締役・岩上貴洋さんにインタビューしました。
一般的に、スタートアップは従業員数が30人・50人・100人の各ステージに達するとき、組織として大きな問題が生じやすいといわれています。株式会社GIGはその壁をどう乗り越えてきたのか、そして現在、100人をどのように越えようとしているのか、岩上さんに秘訣を伺いました!
岩上 貴洋
Iwakami Takahiro
株式会社GIG / 代表取締役
【 Profile 】株式会社GIG・代表取締役。学生時代からアーリーステージ(起業直後の段階)を対象とした独立系投資会社にて、投資業務やコンサルティング業務に従事。2007年、システム開発やWeb制作の事業を展開するLIG株式会社を創業し、10年間で従業員数はグループ会社合わせ200名まで拡大。その後、2017年4月に株式会社GIGを創業。これまで、月間数億PVのメディア制作やWebサービス開発、Webマーケティング戦略など、数多くの大規模開発案件を手がける。
30人・50人の壁をどう乗り越えるか
ライター紺野:スタートアップが成長するためには、「組織づくり」が重要だと思います。今回は、どのように組織を大きくしてきたのか、その過程をお伺いしたいです。
GIG 岩上:GIGの従業員は現在100名弱で、平均年齢が28歳と若手メンバーが主体になっています。 僕は以前にLIGという会社を創業し、10年ほどかけて100名以上の組織を作りました。10年の中で、組織を拡張させようとしては壁にぶつかり、乗り越えるために試行錯誤を重ねてきました。今回は、LIGでの経験も踏まえつつ、GIGのお話ができればと思います。
紺野:ありがとうございます。スタートアップが直面するといわれる30人、50人の壁にはどのような対策をしていたのですか?
岩上:30人の壁を乗り越えるためには、役員を中心とした経営チームを中心にPurpose、Mission、Valuesの策定と組織で発生しうる問題と対策を共有していました。そうすることで、問題が起きても、メンバーは「乗り越えられる課題」として認識しますので、落ち着いて対応することができます。
50人を越えるあたりからは、組織内にマネージャーなどの役職の階層を設ける必要があり、経営陣と現場に距離が生まれ、スピード感が落ち、コミュニケーションコストもかかります。ですので、私たち経営陣もプレイングマネージャーとして実際のプロジェクトをリードすることで、状況把握を常にしながら適切な意思決定をすることを心がけていました。
組織を大きくするための、事業の在り方
紺野:大きくなった組織が崩れないようにするには、組織体制と同時にどのような収益モデルにするのかも大事でしょうか。
岩上:そうですね。私たちは、安定した売上を作っていくために「マーケティング力の強化」と「ストック型のビジネスモデルの確立」を両立させて、集客の属人化を防いでいます。様々なマーケティング施策により、当社のサービスが自動的に認知される仕組みを作ると、お客様との接点が生まれやすくなります。さらに、ストック型(※)のビジネス構造をつくり、お客様との長期的な関係を構築してきました。
※継続的に収益を得る仕組みのビジネスモデル
紺野:「属人化させない」という考えは、LIGでの経営経験から得られたのですか?
岩上:そうです。例えば、インフルエンサーのようなキャラクターの強い人がいると求心力があり場が明るくなりますし、成長する姿を見るのは楽しいんです。ただ、「個」の力が強くなると、属人化し、転職や独立で卒業していく場合、集客力が低下してしまいます。つまり、個人の集客力に売上が大きく影響するんです。
そういった優秀なメンバーがいること自体は何も問題ではないのですが、属人的な集客を基盤にしてしまうと、中長期的な組織成長にはつながりにくくなります。ですので、組織の規模が100人に向かう中で、できる限り集客やサービスの質が属人化しないビジネスモデルを作っていくことに注力してきました。
100人の壁を乗り越えるための施策
未経験者が力を発揮できる土壌をつくる
紺野:組織が100名程度になってくると、多くの新入社員や未経験者が入社してくると思います。一人ひとりが活躍できる環境を、どのように作っているのでしょうか。
岩上:経営チームが教育に関わったりもしますが、それよりも僕らはメンバーたちが“できる”と思える空気感をつくり出すことを重要視しています。未経験者でもポテンシャルの高いメンバーを採用して各プロジェクトに初期から巻き込んでいけば、パフォーマンスの高い組織構築ができます。
紺野:ポテンシャルの高い人とはどういう人でしょうか?
岩上:何かを深く考え抜いたり、投げ出さずに取り組んだりした経験がある人だと思っています。 そのような経験をしている人は、周りから頼られますよね。頼られるメンバーがいるほうがチームとしても機能しやすいし、努力して諦めずに何かを解決してくれるから、クライアントが他社さんよりも私たちを選んでくださるようになります。
例えば、ここにいる内田は、2018年に新卒で入社した当時、対人コミュニケーションを苦手としていたんです。一方で、大学時代に自分でメディアを作っていたりと、ポテンシャルの高さを感じてGIGに参画してもらいました。
優れたポテンシャルがあればそこを伸ばして、欠けている部分はチームで補い合えば良いと考えています。今ではメディア事業部で事業部長を務めています。
GIG内田:そうですね。入社当初はコミュニケーション力が本当に足りていませんでした。 当時からメディア業務に携わっていて、お客様にインタビューをさせていただく機会がありましたが、過度に緊張してしまい、自分でも何を言っているのか分からない状態になっていましたね。
改善できたのは、岩上をはじめとした上長たちが「インタビュー道場」というインタビューの模擬練習をする機会を作ってくれたからです。それに、責任のある仕事を何度も任せてくれて。そのおかげで、今は緊張せずにインタビューができています。
GIGには、メンバーの能力不足を受け入れた上で、それを補う場を成長の機会として与えてくれる体制や、文化があるんです。
「集客の再現性」は採用も同じ
紺野:未経験でもポテンシャルがある人材を多く確保するために、採用で特に工夫していることはありますか??
岩上:プロダクトのマーケティングと同様に、採用でも求職者からのエントリー数を安定して一定数確保できるかが重要だと思います。
年間100人の応募があるのと、年間10,000人の応募があるのとでは、やはり自社にマッチする人材と出会える可能性は違いますから。
そのためにも、僕ではなく社員のみんなを前に出して、「GIGはこういう会社だよ」とリアルな様子を伝えています。応募者からのアプローチに対して、レスポンスをできるだけ早くするように心掛けるなど、一つひとつの接点を大切にして、結びつきを強くすることも意識しています。
今後の展望
紺野:最後に、事業への思いや今後の展望についてお話いただけますか。
岩上:僕にとって経営は、お客様も含めた「仲間づくり」です。少子高齢化が進んでいる日本において、デジタルやITを活用しようとした際に「人材が足りない」「スキルが足りない」という問題に悩まされる企業は多いし、今後も増え続けるはずです。そのようなことが企業の挑戦の障害とならないよう、さらに多くの方々へサービスを届けて、「仲間」の成長をサポートさせていただきたいと思っています。
GIGが目指す「テクノロジーとクリエイティブで、セカイをより良くする」の実現を目指し、これからもお客様の挑戦を後押しし続けます。
株式会社GIG
Web制作やWebマーケティングをはじめとしたDXコンサルティング事業を主軸に、デジタル領域の課題をワンストップで支援している。スキルシェア事業として、フリーランスとプロジェクトをつなげるサービス「Workship」も運営。「テクノロジーとクリエイティブで、セカイをより良くする」をミッションとして掲げ、スタートアップから大企業、さらには官公庁と、多岐にわたって支援している。。
株式会社GIG公式サイト:https://giginc.co.jp/
【編集後記】
今回の取材に同席いただいた事業部長の内田さんは、5年前の入社当初を振り返りながら、自らの成長や自社の魅力について、手振りを交えて語っておられました。「コミュニケーションが苦手だった」。その事実を感じさせないほど生き生きと話す内田さんの様子と、その話を聞く岩上さんの晴れやかな表情が、100人の壁に向かうGIGの今を物語っているように感じました。
取材日:2022年10月4日
取材/文:紺野 天地
編集:西 かな子
写真:原 康太