Vol.026 株式会社Another works / 代表取締役CEO・大林 尚朝さん

第26回は、複業したい人と企業をつなぐSaaS型の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を提供する株式会社Another works(以下、Another works)、代表取締役CEO大林 尚朝さんにインタビューさせて頂きました。2019年創業のAnother worksは、26道府県34自治体(5月13日現在)と連携協定を実現させ、正社員数は10倍に増加しました。自治体向けの「複業クラウド for Public」だけでなく、スポーツチーム向けの「複業クラウド for Sport」、教育機関向けの「複業クラウド for Academy」も展開しています。今回は、事業を飛躍的に成長させる”バリューの運用術”についてお話いただきました。

大林 尚朝 Obayashi Naotomo  / 代表取締役CEO

早稲田大学在学中に株式会社リアライブに参画しマーケティング責任者に就任。新卒で株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーに入社し、新規事業に従事。2018年、株式会社ビズリーチでM&A領域の新規事業の創業メンバーとして参画。2019年5月、株式会社Another worksを創業。複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営。

https://twitter.com/obayashi_aw


NovolBa 西(以下、西):はじめに、事業内容について教えて下さい。

Another works大林(以下、大林)当社は複業クラウドというサービスを運営しています。
従来、人材紹介会社を使うと成約手数料が必要で、一般的には正社員を1名採用する場合は年収の約数十%、業務委託であれば1採用あたりで約数十万円の費用がかかりました。
一方、複業クラウドは成約手数料が無料、企業は定額で何人でも採用可能な日本初の人材マッチングプラットフォームです。2022年5月時点で、法人登録は累計約800社、個人登録は実名顔写真付きで約3万5000名の方に登録して頂いています。
民間だけでなく、自治体や教育機関、地域の持続発展を目指すスポーツクラブが複業クラウドを導入し、実際に複業人材として採用された方はとても活躍されています。

西:創業から 3年で26道府県32の自治体との連携は、とてもスピード感がありますね。
なぜ自治体との連携に注力されているのですか。

大林:当社が掲げるミッション「複業の社会実装を実現する」、これを最短で実現していくためには、行政機関をまき込む必要があると思いました。行政機関が地方創生のために複業人材を登用する取り組みを見た地場の中小企業は刺激を受けて、複業人材の導入を検討しやすくなります。

また、私自身が地方出身者なので、個人的にも地方創生やSDGsに貢献していきたい、という思いが非常に強いです。

Point 1:パーパスに共感する人しか採用しない

西:Twitterをフォローさせて頂いているのですが、大林さんは会社の使命や大義をとても大切にされていますよね。

大林:
ありがとうございます。僕は、当社が掲げているビジョンを実現するためでしたら何でもしますし、逆に言うと、それに繋がらないものには全く興味がなく、何もやらないと決めています。
採用では、僕たちのパーパス*に興味がある人にしか門戸を開かないということを明確に決めています。

西:なぜパーパスを大切にするのでしょうか。


大林:
自分が会社を持つのであれば、全員が同じベクトルで、熱量高く、心から信頼し合える組織を作りたいと思いました。
人間なので価値観が合う、合わないはあると思いますが、根っこにある想いが同じだと、協力しあえたり、熱量の高い状態を保てることを学生時代の野球を通じて学びました。それは会社も同じで、パーパスを元に仲間が集まれば実現できると思っています。
そして、集まった仲間たちが信頼し合えるメンバーとなり続ける指針として”9つのバリュー”を制定しています。

*パーパス:自社が何のために存在するのか、社会における自社の存在意義

西:創業期にミッションやバリューを既に言語化されていたそうですが、良かったと思うことはありますか?

大林:採用の軸が全くぶれないことですね。ベンチャーは常に人材に飢えているので、前職で活躍されていたスキルフルな候補者がきたら、別に大好物じゃなくても食べますよね(笑)
我々は、たとえお腹が空いていたとしても、、実現したい世界に共感し、9つのバリューを体現できる素質のある方しか採用しないと決めています。 そのため採用面談では、それを体現できる人間かを判断するための質問項目と回答のチェックポイントを設けています。

西:入社後、大林さんの想定以上に力を発揮されているメンバーはいますか?

大林:そういうメンバーは、実はとても多いです。ここに居る広報の高岡は、当初はオウンドメディアの運用をやってくれていましたが、彼女ほど複業や地方創生を語れて、バリューを体現できる人間は他にいないと思い、未経験ですが広報を任せました。複業で創業期から広報を任せている方とタッグを組み、昨年度は100件以上のメディアに掲載して頂くことができました。

(左)広報:高岡 慧さん

Point 2:バリューは策定が1割、運用が9割

西:9つのバリューの中で、Another worksらしさを体現しているものを1つご紹介ください!

大林:9番の「Heartful time(ハートフルタイム) 感謝を伝える」ですね。
僕は、「伝えること」にすごく価値があると感じています。なぜなら、誰かが何かをしてくれた時に、「ありがとう」を伝えない人は多いですよね。ですが、「感謝」は伝えないと成仏されない。
そのため定例で、感謝を伝える時間を設けています。一例ですが、「○○さんのこの行動がすごく良かったです。ありがとうございます。」というような感謝の気持ちを一人一人がチャットで伝え合います。
これは、創業当初からの取り組みで、人数が少ないときは対面で行っていました。今はメンバーが40名近くいるのでチャットを使っていますが、これだけは欠かさずやっていますし、これからも続けていきます。

西:感謝を伝える時間を設けようと思ったきっかけはなんですか?

大林:シンプルに僕がメンバーに感謝し続けたいし、それを伝える場が欲しかったからです。最初はやっぱり恥ずかしかったです。メンバーも徐々に慣れてきて、そうすると会社の仲間だけでなく、恋人や家族、身近な人にも感謝を伝えるようになるんですよ。感謝を伝えあうと人生が豊かになりますよね!

西:仕事もプライベートも関係なく、バリューが行動の指針になっているんですね。

大林:バリューは策定が1割、運用が9割だと思っています。
バリューを100%浸透させることを意識して、人事評価にも落とし込んでいます。
まず、メンバーは自分がどのバリューを体現できていて、逆にどのバリューはできていないかを考え、上長と1on1ですり合わせをします。例えば、「Heartful time(ハートフルタイム)」が実行しきれていない場合は、”他部署に毎日感謝を伝える”と定量目標を設定し、それができたら評価をします。上長はメンバーに対して、どのバリューが不足しているのかをしっかりと把握しなければいけませんし、バリューに相応しい行動をしていたら、気付いて評価をしてあげないといけません。
僕がメンバー全員を評価することは難しいため、COOやCTOなど組織を統括するマネージャー陣に人事評価権を委譲しています。1年で10倍に社員が増えても組織が崩れていない理由は、バリューの浸透に取り組んでいたからだと思います。

Point 3:マネージャー陣への権限委譲で従業員も幸せに?!

大林:昨年の夏ごろに、僕が体調を崩していた期間がありました。組織が大きくなることを見据えて、権限委譲は行っていましたが、これをきっかけに完全に渡すことができました。

西:権限委譲して良かった点はどんなところですか?

大林:たくさんありますが、経営におけるマネジメントの負担が軽減されたことは大きいです。
メンバーが増えると僕だけで全員を細かくみてあげることはできません。マネージャー陣に権限を渡したことによって、メンバーの行動や思考を細かくみてあげられるようになったことは、みんなにとっても幸せなことだと思っています。権限委譲は業務の裁量権だけでなく、採用権や人事評価権も渡すことが本質だと思いました。

西:メンバーを大切に思い経営されていることが伝わっていますね。

複業を日本の文化に

西:最後に、Another worksの目指す世界について教えてください。

大林:僕らは複業の社会実装を目指しています。それを実現するために、民間企業で働く方だけでなく公務員の方も、何かに挑戦したいと思ったときに、当たり前に複業という選択肢を選べる世界を絶対に作りたいです。
全国に1700程ある自治体の中で、複業を認めている自治体はまだ片手で数えるほどしかありません。そのため、公務員の複業解禁に繋がるモデルケースを5年以内に作り、機運醸成に繋げていくことが大事だと思っています。

また、複業が当たり前になることで、キャリアの境目がなくなってくるのではと考えています。例えば、複業をきっかけに企業や自治体と関わり、その企業が良いと思えば正社員に切り替えたり、この地域が良いと思えばそこに移住して働けたり、そのような社会になれば良いなと思っています。
複業によって、人と企業・自治体の関係性や、居場所のトランスフォーメーションが非常に滑らかになっていくと思っていますし、それを狙っています。

西:企業や組織の垣根を超えて、個人が輝く時代に必要不可欠なサービスだと思います。本日はありがとうございました!





■株式会社Another works

「挑戦する全ての人の機会を最大化する」をビジョンに掲げるスタートアップ企業です。2019年9月のサービスリリース以降、一部上場企業からベンチャー企業まで、幅広く多くの企業に導入されています。
https://anotherworks.co.jp/

複業クラウド

「複業クラウド」は、複業したい人と企業をつなぐSaaS型の複業マッチングプラットフォームです。企業は毎月定額料金で求人掲載が可能。登録している全タレントから求める人材を探し、無制限にアプローチできます。採用が実現しても成約手数料は一切かからないため、採用コストが削減できる今までにないサービスです。マッチングデータを分析したAIエージェント「Nico」が採用活動のDXを支援します。
タレントは登録・利用が一切無料で、求人へ直接エントリーが可能。また、企業からのスカウトが届くこともあるので、登録するだけで複業の機会を最大化させることができます。

番外編:「私がAnother works入社した理由」

高岡 慧(Takaoka Kei)
私は富山県出身で、高専卒業まで富山で過ごしました。学生時代、行政の方とまちづくりの取り組みを行ったことがきっかけで、地方創生に興味があります。行政の方は日々の業務に追われ、専門的な知見も不足しているため、なかなか新しいことを進めていけないという現状に、課題感を抱いていました。そのような中、専門的なスキルをもった複業人材を行政に登用するプロジェクトに取り組むAnother worksに出会い、一目惚れしました。この素敵な取り組みを全国に広めていきたい、地方創生に貢献したいと強く感じ、入社を決意しました。



取材日:2022年4月11日
インタビュー/文: 西 かなこ
撮影:原 康太
編集:山田 直哉 / 神成美智子

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