第20回は、「競争から、共生へ」というミッションをもとに、温浴施設のDX化に挑戦されているHabitat株式会社・北村 功太さんが起業した理由や、実現したい世界についてお伺いしました。
北村 功太 Kitamura Kota / 代表取締役
新卒で株式会社エブリーに入社しデジタルマーケティングに従事。その後、株式会社バベル、株式会社GOを経て、2020年Habitat株式会社を創業。 温浴施設向けOMOツール”habitat”の提供と、会員制サウナ施設”CAVE by alpha”を運営。
楽しさとやりがいを追求したら、それが起業だった
NovolBa山田(以下、山田):まず始めに、起業までの経緯を教えてください。
Habitat北村(以下、北村):起業する前は、スマートフォンアプリの広告配信など、デジタルマーケティングの仕事をしていました。お客様から数十億を超える予算を頂いていたこともあり、スケールが大きく、とてもやり甲斐のある仕事でした。ただ、広告を配信したアプリのダウンロード数は分かりますが、実際にそれがどう使われているのか、役立っているのかが分かりません。キャリアを積むにつれて、デジタルマーケティング以外のこと、特にユーザーと直接コミュニケーションが取れる、オフラインの領域に関わる仕事をしたいと思い始めました。
山田:それで、転職ではなく起業を選択されたのですね。
北村: そうですね。学生時代に個人事業主として事業をやっていましたし、株式会社バベルを共同創業で立ち上げた経験もあり、起業がそこまで特別なことと感じていなかったように思います。 当時思っていたのは、複数人で一緒に事業をすることで、一人では到底できないことが達成できる。それが何よりも楽しくてやりがいがある、ということでした。 ただ、誰かの会社で自分がやり過ぎると、迷惑になるかもしれない。そこで、自分で会社を作ることにしました。計画的に起業しようと思ったというよりは、自分がやりたい事をやりたいようにやった結果、世の中はそれを“起業”と呼んでいる、という感じだと思います(笑)
短期間で資金調達ができた理由
山田:Habitatを創業して、1年くらいでVCからの投資を受けていますが、短期間で投資を受けることができた理由は何だと思いますか。
北村:まずビジネスモデルに可能性を感じてくれたことだと思います。
当時、投資家に出資してもらうために、2つの観点でビジネスアイディアを考えていました。
1つ目は、オフラインの領域で大きな市場を有していること。
2つ目は、社会で話題となっている分野であることです。
この2つの観点から考えると、温浴施設は市場が大きく、特にサウナは「ととのう」という言葉が流行語になるほど話題になっています。温浴施設のDXというビジネスは、非常に可能性があるということが、投資家に納得頂けたのかなと思います。
もう一つは、これまでのキャリアでお世話になった方々に、非常に助けられていることです。
現在の大きなクライアントの一つは、前職GO社でお付き合いのあった企業です。また、オープン予定の会員制サウナ*の物件や、それを設計してくれた建築士もそこからの紹介でした。
一緒に働くメンバーもすごく頑張ってくれていますし、「北村に力を貸してやろう」と言って下さる方たちの後押しが重なって、1年少しで投資頂けたのかなと思っています。今までのキャリアを通して、必死になって努力してきた姿を周りの方が見て信頼して下さっているということなので、とても感謝しています。
*Habitatが提供している、会員制サウナ施設”CAVE by alpha”
作りたい組織と最高の仲間
山田:北村さんは、Habitatをどのような組織にしたいですか?
北村:何か得意な領域が一点突破しているような組織にしたいと思っています。
本に書いてあるような“企業の組織論”はわかっているつもりですが、本気で組織を作っているトヨタさんのような大企業、そこでしっかりと教育を受けた人たちには勝てないと感じているので、私たちなりの一番得意な領域を持って、それを伸ばしていける組織を作り、一点突破していくことが大事だと思っています。
ただ、私自身は組織作りが苦手なところもあるため、メンバーをすごく頼りにしていますが…。
山田:メンバーへの信頼が厚いのですね。
北村:そうですね、今一緒に働いているメンバーが最高だと思っています。実は、これまでのキャリアの中で、「こんなに優秀な人がいるんだ」と感じた方たちと一緒に、いま仕事をして、結果を出すことが出来ています。前職から8年くらい一緒に働いているメンバーもいて、彼らと一緒なら負ける気がしないですし、失敗するイメージもないです。逆に、このメンバーで失敗したらもう仕方ない、そう思えるくらい信頼しています。
今後の展望
山田:Habitatさんの今後の展望について教えてください!
北村:まず私たちの事業である「温浴施設×DX」を少しお話しさせてください。昨今、DXという言葉が良く使われますが、時々見かけるのが、現金決済をクレジットカードやQRコード決済に変えるものだったりします。 私たちの考えるDXは、時代背景、テクノロジー、ユーザーに合わせた、ビジネスモデルのアップデートだと思っています。
例えば、銭湯のような温浴施設は社会インフラに近かったので、数百円という価格でこれまでビジネスが成り立っていましたが、現在は1時間4,000円といった高級温浴施設もでてきています。こういった施設は、顧客を一定数持っておく必要があるため、オンライン予約や会員制度をベースとしたサブスクリプション型にするのがマストです。このように、時代に合わせたビジネスモデルのアップデートこそが、DXの本質だと思っています。
山田:なるほど!ただの一側面をデジタル化するのではなく、業界やビジネスモデルの変化をサポートしているのですね
北村:はい、日本の温浴施設はチェーン店のように画一的ではなく、個々に特徴があって、日本のカルチャーの一部を担ってきた素晴らしい施設だと思っています。だから私たちもそのような店舗に対して、本気でコンサルティングをさせて頂いています。 私たちが良い見本となれるように、Habitatは実店舗である会員制サウナを立ち上げて新しいビジネスモデルのノウハウを蓄積しようとしています。「競争から、共生へ」という私たちのミッションの通り、私たちがその土台となって、多様性のある温浴施設が無くならず「共生」できる社会を作っていきたい。そういう想いを胸に、これからもこの事業を続けていきたいと思います。
Habitat株式会社
温浴施設向けOMOツール”habitat”を提供。顧客ごとの入退店の計測と決済金額を自動分析し、それぞれの店舗における顧客グループごとのLTVの計測と、それ に伴うCRM設計・サブスクリプションプランの提供を実現。また、会員制サウナ施設”CAVE by alpha”を運営。Primitiveな体験性のある瞑想UXをテーマに洞窟をイメージしたサウナ施設であり最高品質の温浴設備に加え、23区内の送迎サービスやラウンジバーの利用など特別な体験を提供。
https://www.habitats.co.jp/
【編集後記】
インタビュー中、北村さんのお話にどんどん自分が引き込まれていく感じがして、熱量と説得力が飛びぬけている方だなと思いました!「サウナが大好きだから」というより、「温浴施設という日本の良い文化を残していくためにDXという手段を使って挑戦している」という言葉がとても印象的でした。今後の活躍、楽しみにしております!(山田 直哉)
取材日:2022年3月1日
インタビュアー:山田 直哉
写真:原 康太
編集:神成 美智子