ANOBAKA_長野泰和_代表

VC Vol.003 株式会社ANOBAKA / 代表取締役社長・長野 泰和 さん

投資家、ベンチャーキャピタリスト、VCで働く方々のパーソナリティーにフォーカスして、様々なお話を伺う企画。 
第3回は、「だれもがもっと挑戦できる社会」を目指し、シード期、アーリーステージ期の起業家を応援するベンチャーキャピタル株式会社ANOBAKAの代表取締役社長/パートナー 長野 泰和さんにインタビューさせて頂きました!
 


長野 泰和 Nagano Hirokazu  代表取締役社長/パートナー 

KLab株式会社入社後、BtoB営業を経て、新規事業開発チームのリーダ―に就任。2011年12月に設立したKLab Venturesの立ち上げに携わり、取締役に。2012年には同社の代表取締役社長に就任し、スタートアップ17社に投資。2015年にKLab株式会社のグループ会社として、株式会社KVPを設立し、代表取締役社長に就任。5年間で80社以上のスタートアップへ投資。2020年にMBO*を実施し、株式会社ANOBAKAを設立。  
*経営陣自ら会社の株式、事業などを所有者から買収すること 

ピュアで確固たる想いを持っている人を応援したい

NovolBa とう(以下、とう):ANOBAKAのポートフォリオを見るとCBcloud株式会社や株式会社Crunch Style(現ユーザーライク株式会社)のような、急成長を遂げているスタートアップが数多くいます。
長野さんは、どんな起業家に投資したいと思いますか?

ANOBAKA 長野(以下、長野):やっぱりピュアな人が好きですね。振り返ってみると、「この社会課題を解決したい」のような熱い想いを持っている人に投資することが多いです。事業を起こすにあたり、なぜ自分がやるのかをしっかりと論理立てて、ストーリーとして語れる確固たる意志がある人は魅力的ですし、そういう方は、必ず成し遂げる力があると思っています。
急成長されているCBcloud代表の松本さんは、創業当初から「物流業界を変えたい」「ドライバーさんの生活を良くしたい」という熱い想いと、「なぜ自分がこの課題に取り組むのか」という理由が明確でした。
だからこそ、私の中で非常に腹落ちし、投資をさせて欲しいと思いました。

とう:なるほど。社会課題を自分で解決する、という想いのある起業家に惹かれるのですね。
投資判断の際に、成長市場であるかどうかは重要な要因になりますか?

長野:
成長市場であるかは、シード期に議論してもあまり意味がないと思っています。それよりも、初期プロダクトを検証しつつ、可能性のある市場にフィットさせていく、プロダクトマーケットフィットが重要です。
また、スタートアップは日々なにが正解か分からない中で、細かい意思決定を繰返しています。その中でスピード感を落とさずに意思決定できるチームワークは大事です。チーム内での意見統一に時間がかかると、事業のスピードが落ちてしまいます。
なにが正解かはさておき、素早い判断ができるチームであることは、初期のフェーズでは特に求められます

とう:「良いチーム」の定義は様々ありますが、代表がチームを作っていけるかどうかは、投資判断をする要素になりますか?

長野:重要な要素の一つだと僕は思っています。
チーム作りが上手くいかないと、売上が順調に伸びていても、その後のスケールはしづらいです。

やれることは全部サポート

とう:スタートアップは調達以外にもマーケティングや採用など、乗り越えなければならない壁が沢山あると思いますが、長野さんはどこまでサポートをしていますか?

長野:やれることは全部やっています(笑)
事業を作っていくうえで、足りていないピースに対し、ANOBAKAが必要だと思えば何でも支援させて頂いております。
例えば事業の戦略作りや具体的な施策を一緒に考えたり、販路先の紹介を行ったりもします。
僕個人としては、前職でファンド立ち上げの営業を数多く経験したので、経営戦略や営業戦略で困っている起業家とは、かなり相性が良いのではないかと思います。

0から1を作り出すことが好き。だからシード期にこだわる。

とう:全方位的にサポートしてくださるのは、スタートアップにとっては、とても心強いですね!!
シード期はプロダクトが確立されていなかったり、財務状況も見えにくかったりと、投資リスクがとても高いイメージです。

長野さんはなぜ、あえてシード期に投資するのでしょうか?

長野:僕は20代の頃、新規事業を担当していました。0から1を作り出すような、何かを生み出すことにとても惹かれました。
VC業界には金融系出身者が多く、ファイナンスが強い人はいるのですが、事業の立ち上げを経験した人は少ないです。
僕は前職の経験を強みとして、困っている起業家の力になれると思いました。

とう:シード期への投資はどのような楽しさがありますか?

長野:起業家と一緒に仮説を検証していく過程がとても楽しいです。
また、シード期は事業がどんどん成長していく姿が見られるので、非常にやりがいを感じます。僕が投資した時点では2~3名くらいの会社が、わずか数年で100名規模になるケースが何件もあります。人数が増えた会社に訪問し、社員がすごく楽しそうに、和気あいあいと働く姿を見る瞬間はたまりませんね。
もし僕が数年前に投資していなかったら、社長と社員の繋がりや、この100名規模のコミュニティはなかったわけですから。当時の投資額は数千万と小さいものかもしれませんが、それが会社の成長に繋がり、その会社に所属する社員の人生に繋がっている
そう思うと、シード期の投資はすごくレバレッジの効く仕事だな、と感じています。

冒頭にお話したCrunch Style(現ユーザーライク)は、僕がはじめて代表の武井さんに会った時は、まだ3名くらいで小さなオフィスでした。今は恵比寿のおしゃれなオフィスで、メンバーたちも仲良く楽しそうに働いています。
CBcloudも同様です。初回の打ち合わせは、松本さんと奥様と3人で、奥様の実家の屋根裏部屋でした(笑)今は秋葉原のかっこいいオフィスになっていて、大成長を遂げています。
僕があの時投資していなかったら、この会社はなかったのかなと思うと、非常に誇らしいです!

ANOBAKAが目指す先

シード期を支えるインフラになりたい

長野:VC立ち上げ当初から、シード期スタートアップのインフラのような存在になりたい、スタートアップエコシステム*のインフラ作りをしたいと考えておりました。
ファンド規模の話をしますと、第3号**が60億円になり、ようやくスタートラインに立てた気がします。
これからは、投資という「カネ」だけでなく、「ヒト」や「モノ」の支援もしていきます。
その第1弾として、大企業の方がスタートアップに出向できる『CROSS WORK』という事業を去年始めました。
今後もスタートアップエコシステムに貢献できる事業をたくさん作っていきたいと思っています。

*スタートアップエコシステム:大企業や大学の研究機関、公的機関などでネットワークを作り、スタートアップを生み出していくシステム。

番外編!長野さんの人生プラン ~実は超ネガティブ?!~

とう:ここからは番外編です。長野さんはバリバリの起業家でキャピタリストですが、個人的な人生プランはありますか。

長野:人生プランという具体的なものは正直ありません。ただチャレンジし続ける環境を創ることを大切にしています。
なぜなら、僕は目標を達成すると、その後に訪れる虚無感がとても大きくて、すごくネガティブな気持ちになって、気力が無くなってしまうんです。

とう:意外です!!ネガティブなんですか?!

長野:そうですね。元々はすごくネガティブ人間で、何かやることがないと鬱っぽくなるし、人ともあまり喋らないし、引き籠っちゃいます。そうならないために、目標を決め、ポジティブなエネルギーを出せるようにしています。
今後も、僕自身の「絶対やりたい」を絶やさずに、アグレッシブに生きていきます。


株式会社ANOBAKA

“Empowering Mad Dreams”をビジョンとしてシード期のスタートアップを対象としたベンチャーキャピタルのファンドを運営。「チャレンジ」を至高の概念とし、起業家に勇気を与え、夢を実現させるプロフェッショナルファーム。

https://anobaka.jp/
スタートアップ留学サービス『CROSS WORK』

【編集後記】
一見強面の長野さんですが、実は人間が大好き。ポジティブに見える一方で、実はネガティブを消すためにご自分に負荷をかけ続けているように見えて、とても素敵な方だと思いました。私たちが目指している、「起業やスタートアップで挑戦する人が、どんどん増える社会を創る」と共通する部分が沢山あり、とても楽しい取材でした。(とう)


取材日:2022年1月21日
インタビュアー: 鄧 雯  写真: 原 康太  編集:西 可菜子

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