富士通_松尾圭祐

CVC Vol.004 富士通株式会社 / FUJITSU ACCELERATOR事業開発担当 松尾 圭祐さん

投資家、VC、CVCで働く方々にお話をお伺いする企画。 
第4回は、FUJITSU ACCELERATORの運営を行う松尾圭祐さんにインタビューさせて頂きました。スタートアップと大企業の事業共創におけるハードルや、その乗り越え方などについてお伺いしました。

松尾 圭祐 Matsuo Keisuke / 富士通株式会社
Strategic Growth & Investment /FUJITSU ACCELERATOR事業開発担当

関西学院大学社会学部卒。2002年、富士通株式会社に入社。サーバーのマーケティング業務を担当し、国内トップシェア獲得に貢献。その後、商品戦略の企画部門への異動を通して、スタートアップ協業を推進する『FUJITSU ACCELERATOR」の立ち上げに参画。現在はスタートアップとの協業による新規事業開発を担当。

Point01 ビジネスモデルの違いを理解する

NovolBa西(以下、西):スタートアップが大企業と一緒に事業を作るためには、乗り越えるべきハードルがありそうです。大企業協業を検討する際に、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。

富士通 松尾(以下、松尾):大手企業とスタートアップでは、プロダクトやサービスの、売り先と売り方に大きな違いがあります。それをお互いに理解し合えるかがひとつのポイントになります。
例えば、SaaSを提供するスタートアップは、ある特定の課題に対して、サービスの価格を抑えて多くの顧客に販売するビジネスモデルを考える傾向があります。一方当社は、大企業の課題に対してコンサルティングを行い、細かくカスタマイズしながら、大きな売上を作るビジネスをしています。

この前提を理解し、大手企業ができないことをスタートアップの強みでカバーできる、というシナリオに導ける人材が必要になります。大手企業にはそういった人材は少ないでしょうし、逆もしかりだと思うので、相互理解が重要になると思います。

西:スタートアップは大企業のビジネスモデルを理解し、一緒に協業ストーリーを考えられるようになることが大切ですね。

Point02 オープンイノベーションを目指す

西:松尾さんはどのような協業の形が理想的だと思いますか。例えば、お互いが技術を出し合うのはいかがですか?

松尾:そうですね。アクセラレーションプログラムの”あるある”として、スタートアップに対し、“この技術を求めます”と打ち出すものがあります。既存事業を拡大していくために足りない「ピース」を、スタートアップが補うことが目的になっています。大企業側が、スタートアップから技術を調達して、事業を作ろうとする。これがオープンソーシングです。

もう一つ、オープンイノベーションという形があります。 JR東日本スタートップ株式会社とサインポスト株式会社の無人コンビニ事業は、まさにその一例かもしれません。

無人コンビニを実現するためには、コンビニ事業のノウハウや、無人化に必要なカメラ、センサー、決済方法など必要な要素を掛け合わせる必要がありました。事業案はあったもののリソースが何もないところに、それぞれのリソースを持ち寄ることで、無人コンビニが実現しました。
僕はこれが、本当の意味でのオープンイノベーションだと思います。
「これを実現させたい」から逆算して、ビジネスモデルを考えることが本当は望ましいですが、なかなか難しいですね。
現実的には、大企業側からのオープンソーシングになることが多いです。

Point03 大企業側のキーマンを巻込む

西:スタートアップと協業する際に、どんな社内体制にしていますか?

松尾:我々はまず、オープンイノベーションを行うにあたり、各事業部門で決裁権を持つ役員・または本部長以上に、事業責任者になっていただくようにお願いしにいきます。本部長は毎回スタートアップとの打合せに参加できないため、本部長直下に当たる事業部長を事業推進者にアサインします。例えば、その場の判断に迫られたときに、本部長との関係性が近いため、ある程度判断ができますし、できない場合でも本部長とコミュニケーションが取りやすい関係なのでスピード感を落とさず進められます。よく事業部の部長や課長を事業推進者にアサインすることがありますが決裁権がなく、本部長とも距離が遠いのでオススメしません。

西:松尾さんは、決裁者を巻込んだうえで、どのような役割をされていますか?

松尾:僕たちは、コンサルティング会社を真似た動き方をします。
まず、役員に話を聞いてくれもらえる関係を構築します。あとは、一例ですが、事業が進む中で例外規定の対応に迷うことがあります。その時に、規定の解釈を変えるか、考え方を変える必要が出てきますので、そのお手伝いをしています。特に大企業の社員は、既存のルールを変更することに対して怖がる傾向があります僕たちは、彼らの不安を払拭することを意識的にやっています。

西:スタートアップが大企業と協業する際に、松尾さんのような人材がいるととても心強いですね。

松尾:ありがとうございます。会社にとって難しいことをやるのが自分の価値だと思って努力しています。オープンイノベーションを進めるにあたり、ハードルをできる限り取り除き、スタートアップや社内の人が動きやくなるよう日々精進しています。

西:最後に、FUJITSU ACCELERATORの実績について教えてください。

松尾:6年間の実績は、協業検討が約200社、そのうち110社は実証実験、または事業化に進みました。

西:すごい確率ですね!

松尾:実証実験で終わったしまった案件も少なからずありますが、事業化に至ったのは約30社です。
30社結婚したと言っても、離婚もあれば、仮面夫婦もあります。当初は明るい家族計画をしていましたが…(笑)事業はローンチして終わりではありません。しっかりグロースさせることが今後の課題ですね。

西:なるほど。とても参考になります。本日は、スタートアップと大企業の協業について、貴重なお話をいただきまして本当にありがとうございました。

松尾:こちらこそ、ありがとうございました!

FUJITSU ACCELERATOR

革新的なスタートアップの技術・製品と富士通グループの製品・ソリューション・サービスを組合せ、世の中へ新たな価値を提供することを目的としています。豊富な顧客基盤を持つ富士通事業部門とのマッチングによる新たな事業機会の創出を目指します。

URL :富士通株式会社
URL :FUJITSU ACCELERATOR


【編集後記】
インタビュー中はユーモアを混じえて回答してくださる松尾さん。現場は終始笑いに包まれていました。


取材日:2022年3月9日
取材・文:西 かなこ

写真:山田 直哉  
校正:神成 美智子

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