広報のプロが伝授!! ベンチャー・スタートアップ経営者が知るべき広報術とは【下:具体編】

広報のプロが伝授!! ベンチャー・スタートアップ経営者が知るべき広報術とは【下:具体編】

前回はベンチャー・スタートアップ経営者が知るべき広報術の「理論編」をお届けしましたが、今回は「具体編」になります。実際に広報支援を行ったスタートアップの事例や、広報の”成功術”について、広報のプロである三上毅一氏が説明します。

広報には“攻めの広報”と“守りの広報”が存在する

私は、これまで40年にわたり、上場企業から中堅・ベンチャー企業までの広報コンサルティングを手掛け、これまでに500社以上の経験があります。民間企業のほかにも自治体、大学、政党、宗教法人、博覧会事務局と、あらゆる組織広報の経験があります。BtoBからBtoC企業を幅広く担当しました。

実は広報には、“攻めの広報”と“守りの広報”があります。企業の不祥事や事件などネガティブな報道について対応していくのが、“守りの広報”です。今回は皆さんの商品やサービスをメディアに情報提供して、多くの生活者に認知・理解させていくか、“攻めの広報”について紹介します。

 

広告よりも広報は効果的?

企業では事業に関する積極的な情報発信により、製品やサービスの認知・理解促進・売上にも直結していきます。大企業から中堅・中小企業をはじめ、多くのベンチャー・スタートアップ企業も広報セクションを設立し、広報活動を優先して取り組んでいます。弊社でも多くの企業の広報業務を支援しています。

例えば、皆さんもご存知の㈱タイミー。ちょうど上場された話題の企業です。学生起業家の小川嶺代表が2018年8月にローンチさせました。弊社がローンチから設立当初の広報業務をさせて頂きました。設立当初は広告展開をされず、弊社の広報活動により多くのメディア報道の獲得ができ、会社の礎に寄与しました。

最近では、弊社で運営しているゼロイチ広報会員のレンティオ㈱。三輪謙二朗代表が2015年4月創業。家電のサブスク・レンタルサービス レンティオ(Rentio)を手がけています。同社も広報主軸に、年間100件の報道獲得した、注目のスタートアップ企業です。

※広告と広報の違いは上編をぜひお読みください。

トップが広報マインドを持つことが成長の分かれ道に~パンフォーユーの事例

こちらの企業もご存じかと思いますが、㈱パンフォーユー。ミッションは、“新しいパン経済圏を作り、地域経済に貢献する”。地域のパン屋さんが抱えるあらゆる課題を独自の冷凍技術とITで解決し、パン業界のDXを推進”をミッションに、矢野健太代表が2017年1月に設立。地域のパン屋さんのパンを冷凍で自宅に配送するビジネスが大成功されています。

設立当初は、なんと矢野代表自らプレスリリースを作成、配信されていましたが、個人投資家からのアドバイスがきっかけで弊社を知って頂きました。「冷凍パンは焼き立てに劣る」という世間の認知を飛び越えたいと、相談がありました。1年以上広報PRのみで情報発信を続け、認知度が上がってきたタイミングで広告を展開されました。

 

株式会社パンフォーユー 矢野 代表取締役

矢野代表は、メディア露出が増えて変わったことは、3つあると言われています。
1つは、「純粋にお客様が増えたこと。パンの商品情報だけでなく、どういった思いでこのサービスが始まったのかを知っていただいた上で買っていただけるようになりました。
2つ目は「採用面です。丁寧に取材していただく機会を設けていただいたおかげで、私自身の思いや、弊社が目指しているところを認知した上で、弊社で働きたいと言っていただけることが増えました。」
3つ目は「資金調達です。投資を検討する前の段階からすでに弊社のことを知っていただいているので、説明などのやり取りがスムーズに進みました。これだけ多くの方が気にかけてくださっているのか、と、起業当初との違いを感じています。」「また、ビジネス系メディアで取り上げていただく機会があると、提携するパン屋さんの開拓がしやすくなるなど、ビジネスを展開する上でも多くの利点もありました。」

ちなみに、報道実績では多くの企業の経営者が取材されたい4大テレビ番組、テレビ東京の「WBS」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」、TBSテレビ「がっちりマンデー!!」全てで紹介されています。

その他にも、私の本や下記のサイトでも紹介されていますので、ご覧下さいませ。

https://www.v-pr.net/customers/

企業の成長をもたらす“広報の成功術”とは

私がコンサルさせて頂いたベンチャー・スタートアップ企業で、広報を上手く導入して成長をされている企業には以下の成功への法則があります。

▼経営トップが、広報マインドを持つこと。

先ほど紹介しました㈱パンフォーユーの矢野代表は、電通ご出身のバリバリのアドパーソンでした。広告と広報の違いを大変理解されています。代表は「広報は、広告と違って会社のメッセージをコントロールできない側面があります。ズレが生じないように、弊社のメッセージを常に共有し続けるのは、常に意識していることですね。また、些細なことかもしれませんが、弊社の思いがメディアに正しく伝わるよう、言い方や言い回しについても都度アドバイスをいただいています。」情報発信側として、また受けてのメディア特性を十分理解され、日々情報発信をされています。

 

▼広報のお客様は“メディア=記者です!!”

みなさんの会社のお客様は、製品やサービスを買って頂く(or導入頂く)方々です。では広報セクションのお客様は、そうですね、情報提供先となる“メディア=記者”になります。だからと言って、おもねる必要はありません。情報提供側と受け手側は平等の立場です。

ただ、より自社の情報を正しく理解し、関心を持ってもらうには、良好なコミュニケーションが必要となります。相手の立場に立って考えることが重要となります。言い換えれば、メディア=記者の満足度を高める努力が必要です。明るく正確に且つスピーディーにメディアサイドのリクエストに対応できれば満足度が高くなります。詳しくは、私の本で広報のKPIについて紹介されています。

 

▼広報パーソンはいつも“アンテナ”を張り巡らす

アンテナとは何か? これは情報通を指します。広報ではとにかくリサーチ力が問われます。

社内にある情報全てを把握して、ニュースとしてネタとなるのか的確に判断しなければいけません。単なる営業情報は、ニュース・情報として受け入れもらえません。

上記で、広報のお客様はメディアとお伝えしました。では、お客様に営業する場合、自社の製品やサービスを買ってもらうにはどうしますか? お客様の個人情報、趣味やライフスタイルなど顧客情報を捉え、営業します。広報の世界では、これがメディア=記者となります。同様に記者の関心時やどのような分野の取材をしているのか、過去報道のリサーチが必要となります。

また、自社情報だけではニュースとしては成立しません。なぜこの製品、サービスをリリースするのか。社会的な背景やトレンド情報を敏感にキャッチして、自社情報と結びつけることも必要となります。今、社会的な課題・問題を解消するために開発した理由がニュースに結びつける大きなポイントになります

 

▼自社の情報を正しく、的確に情報発信ができること。~「盛った情報」は、すぐに見抜かれる!!

では、広報マインドを養い、実際に活動するためには、どうすればいいでしょうか。

SNSによる情報発信が個人にとっても当たり前の時代です。このようなメディア環境では、より広く深く媒体を知ることが重要となります。まずは、自社の情報発信ニーズを満たすための最適な媒体を探すことです。先ずはリサーチすることが必要になります。定点的に記事を読むことで、その媒体の傾向を知ることができます。これにより関心分野やテーマが想定でき、効果的な情報提供にも近づきます。

記者とのコンタクトは、まずは編集部に電話をしてみることがオーソドックスなやり方ですが、記者自身もSNSで発信していることが珍しくありませんから、ここからコンタクトすることも効果的な方法です。まずは顧客=記者を知ることが基本です。

後は、プレスリリースの発信や個別取材などを通じて的確な情報発信を行います。ここで重要なのは等身大の正しい情報提供に徹することです。

最近はプレスリリースの配信サービスにより、宣伝色の強い情報や自社絶賛の脚色過多なプレスリリースが増えています。しかし「盛った情報」は、情報受発信のプロである記者には、すぐに見抜かれます。ここは基本に返って「正直さ」を基本とすること。その方がメディアには新鮮に映るはずです。

 

▼社員 ひとり一人が広報パーソン

スタートアップ企業では、起業当初のシードステージからアーリーステージ期は、なかなか広報専任者もおけません。矢野代表のように経営トップ自ら広報担当になって積極的に情報発信も重要な活動となります。他のメンバーでも広報経験を持てば、メディアの視点、考え方も養えて、事業拡大に向けて大きな力にもなります。ミドルステージとなり、広報専任者も据えて時も、各セクションの情報が、情報ネタになるのかも判断でき、スピーディー且つ的確に広報にも共有ができます。

私の本でも、広報パーソンの方はもちろん、ベンチャー・スタートアップの経営者の皆さんにも理解できるように基本的かつ効果的な広報術を紹介しています。もっと広報を詳しく勉強したい、効果を上げたいという方はぜひ本を読んでみて下さい。

Amazon: https://amzn.asia/d/bx5fFa3

 

三上毅一(みかみきいち)
㈱ベンチャー広報 CKO (Chief Knowledge Officer)最高知識責任者
ゼロイチ広報 代表コンサル
学校法人事業構想大学院大学ゲスト講師(青山忠靖特任教授ゼミ)

大学時代から広報PR業界に入り、キャリアは40年。
これまで上場企業から中堅・ベンチャー企業までの広報コンサルティングを手掛け、これまでに500社以上の経験を持つ。
また民間企業のほかにも自治体、大学、政党、宗教法人、博覧会事務局と、あらゆる組織広報の経験を持つ。加えて“攻めの広報”
“守りの広報”の経験も豊富で戦略策定から広報担当者の教育・育成まで多岐にわたり経験。
現在は、BtoBからBtoC企業を幅広く担当した経験とキャリアで培った豊富なマスコミ人脈を活かした、広報PRの指南役としてマネジメントも担当。
また生涯現役を掲げ、自身でもクライアントを持ち広報業務も行っている。
ゼロイチ広報では、年間のべ200名の広報パーソンに向けた個別コンサルや「広報いろは勉強会」の講師を担当。“広報の現場を熟知した”ベテラン広報パーソン。
著書に『広報のプロが教えるメディアのトリセツ―取材獲得への5ステップ』(中央経済社)
9月より『MIKAMI広報アカデミー』の代表コンサルに就任。これまでの経験を活かし、個別指導により、広報知識から広報実践に関するスキルを身につけ、内製化を目指します。

ベンチャー広報 https://www.v-pr.net/
MIKAMI広報アカデミー https://lp.k3r.jp/venturepr/mikamipracademy

 

※前回の「理論編」は以下からお読みいただけます
広報のプロが伝授!! ベンチャー・スタートアップ経営者が知るべき広報術とは

広報のプロが伝授!! ベンチャー・スタートアップ経営者が知るべき広報術とは【下:具体編】
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