【イベントレポート】キーワードはシーンペアリングと共創〜SEAMとスマドリから学ぶ商品開発

こんにちは。NovolBaライターの麓(ふもと)です。ここ2年、お酒は飲まなくなりました。
それでも気心知れた仲間との飲み会では、ちょっと「一緒に飲んだ気分」になってみたくなったりして。
そんな時のノンアルコール飲料はとても素敵なアイテムだと思っています。

そんなノンアルコールや低アルコール飲料の開発の詳細が聴けると聞いて、楽しみにしていたイベントを取材しました。スタートアップが勝つための商品開発ストーリーをお伝えします。

イベント概要

  • テーマ:クラフトカクテルから学ぶ新しい商品開発ストーリー

  • 開催日:2023年10月11日(水)19:00〜21:00

  • 場所:Open Innovation Biotope “Sea”
    東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR 13階 株式会社オカムラ内

  • 登壇者:
    石根 友理恵(株式会社SEAM/代表取締役CEO)
    京谷 めい(スマドリ株式会社/ブランドマネージャー)

  • ファシリテーター:
    岡本 栄理(株式会社オカムラ/働き方コンサルティング事業部 WORK MILL統括センター コミュニティマネージャー)
    原 康太(株式会社NovolBa/メディア『WITH』編集長・プロジェクトマネージャー)

  • 共催:株式会社NovolBa・株式会社オカムラ

ファシリテーター、登壇者 

岡本 栄理
大阪生まれの大阪育ちです。新卒でオカムラに入り、コミュニティマネージャーなどをやってきました。この春から東京の運営マネージャーになりました。この”Sea”は「波打ちまざり、つながる場」がコンセプトです。人の集積地東京で好奇心を中心に繋がり「働く」を変えたら、生き方や生きがいも変わると思います。仲間になってください。
原 康太
新卒でオカムラに入り、大企業や研究施設の設計をしていましたが、貪欲に挑戦する人の場づくりを掲げるオカムラ初のスタートアップNovolBaに魅せられてジョインしました。サブスク型のオフィス事業、リユース家具事業に関わる他に、メディア事業『WITH』の編集長もしています。よろしくお願いします。


石根 友理恵
神戸大学からメガベンチャーのITでキャリアを積んできましたが、実父が早くに亡くなり、アルコール依存が一因にあったことから飲酒の課題を強く感じ、より幸せなアルコール文化を作りたいと低アルコールカクテルブランド『koyoi』を立ち上げました。プライベートでは6歳の子の母です、よろしくお願いします。


京谷 めい
新卒でアサヒビールに入社して、さまざまな職を経て「お酒を飲まない/飲めない」人を巻き込んだ「スマートドリンキング」を掲げるスマドリ(アサヒビールの子会社)とアサヒビールを兼職しています。気づけばいつも新しいことに挑んでいる気がします。石根さんとは同学年で、私も8歳と5歳の子の母です。今日はよろしくお願いします。


イベント内容

共通点は「飲み方の多様性」もっとお酒を自由に(各社紹介)

岡本2社に共通するキーワードは「飲み方の多様性」だと思います。このキーワードにそれぞれどう関わって事業をしていらっしゃるのか教えてください。

>より幸せなアルコール体験を(SEAM)

石根低アルコールカクテルブランド『koyoi』を提供するSEAMは、低アルコールというややニッチな領域に挑んでいます。私がお酒大好きなのもありますが、お酒は人と人をつなぐツールであり、癒しのアイテム、人を幸せにする嗜好品だと考えています。

一方でアルコール依存などの課題もあり、より幸せなアルコール文化を作るにはどうすれば良いのかを考えて、ブランドを創ってしまおうと2020年に立ち上げました。2021年9月に1stブランド『koyoi』をリリース、ECサイト中心に販売しています。低アルコールという文化を確立したいですね。

  

>「スマートドリンキング」を広めたい(スマドリ)

京谷「スマートドリンキング」は飲み方の多様性を広げる活動です。飲む人も飲まない人も飲めない人も同じ空間を楽しめるといいなと考えています。ノンアルコール、低アルコールはWHOやSDGsの適正飲酒を進める動きや選択肢の多様化・健康志向の広がり等もあって、世界的に伸びている分野です。

消費者の選択が多様化する中、乾杯も多様化するし、飲酒の強要はあってはならないことです。アルコールメーカーアサヒビールとして、これらのことを責任もって、かつお客様に楽しんでいただける形で広めたいと、2022年1月にスマドリ株式会社を立ち上げました。渋谷に飲めない人も楽しめる「スマドリバー渋谷」と、よりNEW AUTHENTIC BARをコンセプトにした「THE 5th by SUMADORI-BAR」を展開しています。

共創のきっかけはミッションの重なりと違い

SEAMとスマドリは「mellowl」という商品でコラボしていますが、どんなきっかけで始まったのでしょうか。

石根:私が資金調達のプレスリリースを書いている時に、ちょうどスマドリさんが立ち上げのプレスリリースを出していらっしゃって、「同じミッションを掲げている!」と運命を感じてしまいました。そのまま直球でご連絡を差し上げてご縁がつながり、さらにいろんな人と手を取り合って生まれた商品です。

京谷「飲み方の多様性」というキーワードで、SEAMとスマドリのミッションが重なったのです。飲酒問題は社会課題で、一企業の力では解決できません。ソーシャルインパクトを大きくしていく必要があるのです。その想いが一致しました。さらに、大企業とベンチャーという違いがいいふうに作用しましたね。

石根どちらもお客さまがZ世代と合致していました。大企業アサヒビールは技術力、我々はスタートアップでECを戦場にしています。一方で、スマドリさんはバーというリアルの場をもっていらっしゃる。共通の世代、相互の知見、相互の場という3つが柱になってコラボが決まりました。

体験から味を創り出す「シーンペアリング」とは

今日はSEAMの商品開発の手法「シーンペアリング」に興味をもって参加された方も多いです。どんな手法なのか、説明お願いします。

石根「シーンペアリング」は私の造語なのですが、お酒を片手に過ごしたいシーン(体験)を設定して、そのシーンに合わせてお酒の味を開発します。ブランドを作るという時は、いろいろな勝負をかける必要があります。でも価格競争では勝てない。だったら、商品にいろいろな情緒的価値をつけようということになったのです。

お酒の美味しさは飲む環境に紐付きます。例えば家飲みよりも野球観戦や屋外でのBBQの方が美味しい記憶が残ります。お酒の価値は、思い出や誰と飲むかといった五感で決まるのです。我々はBtoCなので、n=1のお客様の意見で商品を作っていきます。『mellowl』はスマドリバーでワークショップを開いて味を決めていきました。

「お酒を片手にふとときめく瞬間」をWhen(いつ)Where(どこで)Who(誰と)What(何をしているか) How(どんな気持ちか)で深掘りしていきました。結果として「マンションのベランダで、夜風を浴びながら大切な人と飲む」が『mellowl』のテーマになりました。

私も京谷さんもミレニアル世代なのですが、Z世代の方々の日常を愛して背伸びをせず、手の届くささやかな幸せを大切にする感覚、遠くのリゾートよりも、ちょっと足を伸ばした葉山の古民家で飲みたいという希望はすごく勉強になりました。特に印象的だったのは、「後から振り返って楽しかった…と思うのが何よりエモい」というご意見で、そういった大切な事柄を炙り出すことができたワークショップでした。

「シーンペアリング」でドリンクを作ってみよう(WSの様子)

「飲み方の多様性」をもっと文化に

岡本最後に、おふたりが今後目指していることを教えてください。

京谷:「飲み方の多様性」としての「スマートドリンキング」の文化がお客様の生活の一部として楽しまれるよう、もっと広めていきたいです。新しい文化発祥の地としての渋谷区と組んで「渋谷スマドリプロジェクト」も進んでいます。文化としてのスマドリを定着させるために、社会を動かしていきたいです。

石根:『koyoi』も『mellowl』も味はもちろん、コンセプトやパッケージの工夫などに魅力を感じていただき、高めの価格帯にも関わらず、プレゼントやご褒美の需要として売上を伸ばしました。今後はしっかりと低アルコール領域を確立し、SEAMは低アルコール飲料ナンバーワン企業になっていきたいです。

今日は美味しくて力強いお話をありがとうございました!

参加者の声

商品開発の流れを学んだり、体験することができて勉強になりました。

シーンを想起し、ドリンクを実際に作ったことが印象的で興味深かったです。

ワークショップでシーンから商品(今回でいうと味)に落とし込む作業が想像以上に難しかったです。それゆえ、面白かったです!

ベンチャーと大企業のコラボに至った過程の話が興味深かったです。

関連情報


株式会社SEAM(https://koyoi.jp/shop
「ココロとカラダを満たす食体験を創る」をミッションに、食のD2C事業を展開。低アルコールカクテルブランド『koyoi』を2021年9月にローンチし、パーソナライズ診断を行い、好みに合わせて数十種類のラインナップの中からナチュラル製法のクラフトカクテルを提供。食の価値観が多様化する中、一人ひとりのライフスタイルに沿った食ブランドを展開する”食のライフスタイルカンパニー”を目指す。

スマドリ株式会社(https://www.asahibeer.co.jp/smartdrinking/
「お酒を飲まない/飲めない」方に焦点を当て、デジタルを中心としたコミュニケーション活動の設計やデータマーケティングを行う。多様な生活者ニーズの把握や理解を促進することで、アサヒビールの「お酒を飲まない/飲めない」方との関係強化、多様性を尊重し合える環境づくりを推進する商品やサービスの展開、体験の場の創出など様々な取り組みを支援する。 スマドリ体験・体感の場として、新しい文化発祥の地である渋谷を拠点に、「スマドリバー渋谷」「THE 5th by SUMADORI-BAR」を展開中。

株式会社NovolBa(https://novolba.com/
「挑戦するスタートアップの成長を支える」をミッションに掲げ、スタートアップ向けに最適なオフィス・家具のサブスクリプションサービスを展開。スタートアップに光を当てるメディア「WITH」では、起業や経営、投資にフォーカスした情報発信をしています。挑戦するスタートアップの”昇る場”を提供します。

株式会社オカムラhttps://www.okamura.co.jp/)
オフィス、教育・医療・研究・商業施設、物流センターなど、さまざまなシーンにおいて、クオリティの高い製品とサービスを社会に提供することに努めています。「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をオカムラのミッションとし、トータルソリューション企業への変革とグローバル化の推進を図るとともに、持続的な企業価値の向上と社会課題の解決を目指します。

 


取材日:2023年10月11日(水)
文 / 編集:麓 加誉子
写真:NovolBa・オカムラ
編集/校正:原 康太

 

 

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