Studyplus スタディプラス 廣瀬高志 代表取締役

Vol.051 スタディプラス株式会社/代表取締役・廣瀬 高志さん

「スタートアップと共に歩んでいきたい」という想いから立ち上がった、スタートアップの挑戦に”光”を当てるWebメディア『WITH by NovolBa』
第51回は「学ぶ喜びをすべての人へ」をミッションに掲げ、学習を習慣化する学習管理アプリを運営する、株式会社スタディプラス・代表取締役CEOの廣瀬高志さんにお話しを伺いました。

同社が提供する学習管理アプリ『Sdutyplus(スタディプラス)』 は、今でこそ大学受験生の2人に1人が利用している人気アプリですが、創業から長い間売上が伸び悩んだといいます。広告が取れるようになるまでの苦しい時期に、どのようにして累計会員数800万人まで伸ばすことが出来たのか。
シリーズA以降の経営メンバーにオススメの内容です。

 

スタディプラス studyplus 廣瀬高志 代表取締役  

    廣瀬 高志  
    Hirose Takashi 
    スタディプラス株式会社 / 代表取締役

【 Profile 】1987年生まれ。慶應義塾大学法学部在学中の2010年にスタディプラス株式会社を創業。2012年より学習管理プラットフォーム『Studyplus』の提供をスタート。2016年からは法人向けサービス『Studyplus for School』を提供開始し、大学受験だけではなく幅広いジャンルに展開している。

 

売上ゼロでもユーザーと向き合い続けたからこその現在

スタディプラス studyplus 廣瀬高志 代表取締役

NovolBa神成:創業から5年で会員数は数十万人、売上が立たなかったそうですね。その時のお話を聞かせてください。

スタディプラス廣瀬:2010年に創業、2012年にアプリをリリースして、マネタイズできたのが2016年なので…創業からだと6年間売上がゼロに近い数字でした。リリース以来、ユーザーからのレビューは上々で、当初から支持されていましたし、口コミでユーザー数も増えていました。
一方で「学習を主体的にしよう」というユーザーしかおらず、Facebookのような、誰もがお客様になるものではなかったため、ユーザーの伸び率は低かったです。そんな状況のなか、広告でマネタイズをしようと営業活動をしましたが、なかなか売れなくて…。

神成:ユーザーにある程度支持されていても、売上が上がらないと心折れそうになりますよね…。焦りはなかったですか?

廣瀬:世間に求められている良いサービスだ、という手応えがあったのは大きかったです。リリース直後から、ユーザーの方からは「Studyplusを使うようになって、勉強が続くようになった」「Studyplusのおかげで志望校に合格できた」といった声を多くいただいていましたし、その期待にはこれからも応え続けていきたいと思っていました。
ですから、その期間はとにかくユーザーに向き合って、サービス改善と機能のブラッシュアップなど、良いサービスをつくることに専念しました。

もちろん「将来絶対にうまくいく」みたいな確信は正直持てていませんでしたが、ユーザー数が100万を超えたあたりから、ようやく手応えを感じました。すでに4億円くらいの資金調達をしていましたので、会社を信じてお金を託してくださった投資家の方々のためにも、ここで投げ出すわけにはいかない、期待に応えたい、と前だけを見ていました。

例えば、エンジェル投資家の造田さんは、取締役として参画して頂いているのですが、公認会計士で資金調達を始めとするバックオフィス系全般をすべて担っていただいていました。造田さんのように、がっちり事業に入って下さるエンジェル投資家は珍しいと思うのですが、仲間として一緒に動き、相談に乗っていただいて…。最初にこういう方に投資していただけたことは、本当にラッキーだったと思います。

神成:起業家と投資家の相性はかなり重要でしょうね。廣瀬さんのお人柄と実行力あっての理想的な関係性なのではないでしょうか。

廣瀬:初期からmixi、JAFCO、Femtoから投資をしていただいていますが、売上が全く立たなかった時期にも短期的な売上を詰め寄ることなく、信頼して任せてもらっているのは幸せなことです。僕もあまり口出しされたくないタイプなので、投資家の皆さんと良い距離感でお付き合いできています。

 

創業以来、一貫して採用活動にコミット

スタディプラス studyplus 廣瀬高志 代表取締役

神成:採用活動について伺います。いま14期目だと思いますが、廣瀬さんはどれくらい採用活動に関わっていますか?

廣瀬:採用活動に関しては、創業以来、一貫してものすごくコミットしていまして、4~5割を採用にかけています。自分でスカウトメールも送りますし、最終面接よりも前に自分が面接に出るタイミングも多いです。ベンチャー、スタートアップは待っていてもなかなか良い人を採用できないので、自分から能動的に声をかけにいって、口説いて…というのは必須だと思っています。
採用の戦略をつくるのも大きな経営アジェンダであって、各事業部のリーダーと話し合いながら意思決定していく、というのは、経営マターですね。

神成:色々な方にインタビューする中、採用活動がうまくていっている会社は「代表自らが時間と労力をかけている」という仮説を持っています。採用活動で大切にしていることと、基準があれば教えてください。

廣瀬:「妥協しないこと」でしょうか。メンバーになってくれる大切な仲間なので、妥協しないでしっかり見極めたいと思っています。
採用する時の基準としては、まず「主体性(リーダーシップ)」です。自分で考えて意思決定して行動する、ということを今までもやってきた人かどうか。スタディプラスとして「学んで成長していくこと」を大事にしているので、そういった「学習する力」もみています。あとは、その人が持つ「エネルギー量」も結構感じるものはありますね。

神成:会社に合う・合わない、の相性よりも、しっかりと「求める像」があるんですね。

廣瀬:そうですね、多様性を重んじているので、色々な人がいた方が面白くなると思っているからこそ、自社との相性はそこまで重視していません。業界に対するモチベーションも不問で「教育をどうしてもやりたいんだ」という教育に対する熱意も必須ではありません。
結果的には、より抽象度高く「社会に貢献したい」「ユーザーに貢献したい」という想いを持っている人が集まっているように感じます。自分のキャリアアップを優先する、がつがつしている人よりも、比較的心おだやかで落ち着いている人が多いです。

XTech(クロステック)の中でも、流行りすたりがないEdTechは、少し地味でスポットライトが当たりづらい。急成長している感じではなく、中長期的な、不可逆的な変化が起きていて、徐々にじわじわと変わっていく業界なので、それも社風に関係しているかもしれません。

「学び」の本質は、変わること

スタディプラス studyplus 機能
Studyplusの機能

神成:10年以上前から教育分野でサービスをつくり続けてきた廣瀬さんから見て、「学び」とはどうあるべきだと考えていますか?

廣瀬:私は「学ぶことは変わること」という言葉を大事にしています。ビジネスモデルの変化や技術革新に対応するため「リスキリング」が求められる時代において、学生だけでなく社会人も含めた一人ひとりが、学んで変わり続けることが不可欠だと思うのです。
机の前で勉強することだけが学びではなく「人から話を聞く」「ディスカッションする」そういう機会をつくることで、仕事での気付きを得ることって多いですよね。社会人だと、本を読んで学ぶ方も多いと思いますが、大切なのは「本を読むこと」ではなく「変化すること」です。行動や思考の変化がなければ、それは本質的な学びではないと思います。
「学び」の定義は様々ですが、人生において最も大事なことの一つではないでしょうか。

神成:確かに、読書して満足してしまうことは多いかもしれません。御社の学習管理アプリ『Studyplus(スタディプラス)』は、学びの先の「変化」まで促してくれますか?

廣瀬:はい、そうなります。Studyplusはただ自主学習を管理するアプリと思われがちですが、そうではありません。「学習記録」と「コミュニケーション」を通じて、学習者にとって本質的な課題である「勉強が続かない」を解決するアプリです。
Studyplusでは、様々な教材の学習記録をつけて、教材や科目ごとの学習時間をグラフで可視化することができるため、自身の頑張りを把握しながらバランスよく勉強することができるようになります。
また、同じ志望校や同じ資格試験勉強をしているユーザーとSNS機能で繋がることができ、お互いの学習記録に「いいね」や「コメント」をつけながら、勉強のモチベーションを維持することができます。

神成:自己完結で終わらず、アウトプットとコミュニケーションをすることで、その先の「変化」が生まれそうですね。

今後描きたい世界

Studyplus スタディプラス 廣瀬高志 代表取締役

神成:最後に、廣瀬さんが思い描く未来や挑戦したいことについて、お話を聞かせてください。

廣瀬:「学習記録」×「コミュニケーション」を、教育の新しいスタンダードにしていきたいです。
教育とは「人と人との繋がり」「人と人との営み」であるため、その本質は「コミュニケーション」だと考えています。それに伴い、教育者の振る舞いも変化すべきだと思っています。
これからの教育現場において、中高生が肌身離さず持っているスマホを使ったオンラインコミュニケーションは、なくてはならないものです。しかし、オンラインで生徒と繋がる手段はまだまだ少なく、授業中や面談時のリアルなコミュニケーションのみに留まっているのが現状です。 

一方で、当社が昨年7月高校生向けに実施した調査では、授業はデジタル教材に任せて、先生は一人ひとりの学習支援に注力する形態の「自立型学習塾」に、高校生の3割が通っているというデータが得られました。「3割」というこの数値は「集団型」「個別型」学習塾に通う割合とほぼ変わりません。

このように、少子化などの影響を受けて教育の在り方が「教える」から「一人ひとりの学習を支援する」というところに変容していることを考えると、先生と生徒のオンラインコミュニケーションの重要性は、物凄く高まっていると言えるでしょう。
オンラインコミュニケーションを活発に行う支援が、あらゆる教育現場の「当たり前」になれば、より一人ひとりに合った学習支援が可能になります。

学習記録の重要性は言わずもがなですが、生徒自身のためだけではなく、生徒と先生のコミュニケーションにおいて、とても重要な資料になります。生徒が教室以外で使っている教材や、教材ごとの学習状況を記録として把握することができると、より良質なコミュニケーションをとることが出来ます。

神成:ダイエットも家計簿も英語学習も、まずは記録しないと何も変わらないですよね。忘れてしまいますし、先週よりどう頑張ったかが見えないですから。

廣瀬:大手塾の河合塾様は、既にこの学習記録をベースとしたコミュニケーションの重要性を認識されていて、全校で『Studyplus for School』を導入していただいています。
一部の教育は、集団型で黒板授業を行う「ティーチング」から、生徒一人ひとりの話を聞き精神的なサポートをしながら導く「コーチング」にシフトしつつあります。
黒板授業はこれからどんどんAIやロボットがティーチングを取って変わったとしても、生身の人間である「先生にしかできない」のが、この部分です。
とはいえ、コミュニケーションの重要性に気付いて実践されているのはまだごく一部の方々です。
先生が生徒を「学習記録」をもとにした活発なコミュニケーションでサポートすることを、当たり前にしていきたいですね。あらゆる学習シーンで『Studyplus』を使っていただき、「学び」を自立的に楽しむ人が増えていくのが理想です。

神成:廣瀬さんのお話を伺って、これからも学んで変化していきたい、と痛切に思いました。
本日はありがとうございました!

 

スタディプラス株式会社

2010年創業のEdTechベンチャー企業。累計会員数800万人以上・大学受験生の2人に1人が利用する学習管理アプリ、全国の塾予備校・学校1,700校以上で導入されている学習管理プラットフォーム『Studyplus for School』を運営。

ウェブサイト:https://www.studyplus.jp/

 


【編集後記】オフィスにお邪魔してとにかく感動したのが、お会いする方すべてが、優しくて親切でホスピタリティーに溢れていたことです。それは、体育会系の「挨拶を大きい声で!」「お客さんには感じ良く」といった類のものではなく、メンバーの方一人ひとりが自社の一員であることに誇りを持っていて、素晴らしい行動変容を自ら起こしているように感じました。ちょっとシャイだけど中身は激アツな廣瀬さん、丁寧なお仕事ぶりの広報・平尾さん、素敵な機会をありがとうございました!(神成)


取材日:2023年9月6日
インタビュー・文:神成 美智子

写真:原 康太

Studyplus スタディプラス 廣瀬高志 代表取締役
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