コークッキング TABETE 川越一磨CEO

Vol.040 株式会社コークッキング・CEO 川越 一磨さん

コークッキング TABETE 川越一磨CEO

第40回は、廃棄予定の食品をレスキュー!フードロス問題に楽しさとベネフィットで挑むシェアリングサービスTABETEを運営する株式会社コークッキング、代表取締役CEO 川越一磨さんにインタビュー。
「ムーブメントを起こしたい」と語る一方で、「当たり前のことを当たり前に考えて行動する」ことを大切にする川越さん。事業からおすすめの書物、既存投資家への思い、TABETEの今後、と縦横無尽にお話しいただきました。

川越 一磨 
Kawagoe Kazuma
株式会社コークッキング / CEO

【 Profile 】慶應義塾大学総合政策学部卒。 和食料理店での料理人修行、株式会社サッポロライオンで店舗運営の経験を経て、2015年7月に退職。 山梨県富士吉田市に移住し、コミュニティカフェ「LITTLE ROBOT」の立ち上げなどを行う。 2015年12月に株式会社コークッキングを創業。2016年7月にSlow Food Youth Network Tokyoの事務局長、翌年5月より代表に就任。2016年10月からは「フードロス問題」に挑戦するフードシェアリングサービス『TABETE』の事業化に取組んでいる。

TABETEはフードロス解消事業。中食小売の空中戦を促進したい

NovolBa 神成:フードロスに興味を持たれたのはいつ頃ですか?

コークッキング 川越 :2016年にスローフード活動に出会い、ディスコ・スープ*というフードロスの啓蒙啓発の活動に参加するようになったのがきっかけです。青山のファーマーズマーケットで、規格外の野菜などを使って災害用の大鍋で600人分振る舞うイベントを、月に一度手伝っていました。

しかし限界を感じていました。経済的ベネフィットは必要だと感じて調べる中、海外の「Too Good To Go**」というサービスを知りました。日本でやっている人はいなかったため、自分でTABETEを立ち上げることにしました。

*音楽と共に規格外野菜を楽しく調理して食べる、世界規模のエンターテイメント型フードロス啓蒙プロジェクト
**欧州14か国と北米で展開される売れ残りの飲食店や店舗とお客様をモバイルアプリでつなぐサービス

神成:SDGsって賛同や共感を得やすいが故に、表面的になりやすい分野でもありますね。本当の意味での賛同を得るためにどのような取組みをされましたか。

川越 :TABETEに限らずフードロスの活動って、レスキューするユーザー側の経済的ベネフィットは勝手に増えるのですが、事業者側のベネフィットはフードロス問題を本気の課題に位置付けているかどうかで左右されます。
2018年から2020年の最初の2年は、レストランにフォーカスしていました。でも、レスキューできない食べ残しが多くて、登録はしても休眠状態の事業者さんが増えていきました。そこで中食小売へフォーカスを変えたら、一定数捨てることを織り込み済みのビジネスモデルなので、レスキュー食数が増えて売上が出てきました。レスキューする側の消費者は、夕方恒例の値引きセールを狙うのか、フードロスを自分ごと化して主体的に「助ける」のか、意識が問われる部分です。

中食小売の最重要KPIは「来客数」と言われています。でもTABETEを導入すると、来客予定のなかったお客様と繋がれて、来店のきっかけをつくります。事業者は、来客数で争う地上戦から、インターネットを活用した空中戦へ持ち込めるのです。中食小売の最後の課題とも言われている空中戦への転換。そのムーブメントをどう作るかに挑戦しているところです。

神成:レスキュー、地上戦から空中戦へ、言葉選びと戦略がユニークで素敵です。ユーザー側にはフードロスの自分ごと化が課題かと思いますが、どうマーケティングなさっていますか?

川越 :ユーザーが爆発的に増えるよりもじわじわと増えること、「安く手に入るから」というベネフィット目的の方にもぜひ使ってほしいです。アプリを使い続けることで、レスキューしたときの達成感や楽しさを感じられますし、「フードロス」の問題に強制的に触れることになり、「良いこと」につながる体験が普段の消費行動の変容にもつながると思っています。アプリのダウンロードはレスキュー隊への強制入隊でもあるんです(笑)

思考を支える書物は『論語』。人として正しく在りたい

神成:川越さんの言葉選びが「深イイ」のですが、おすすめの本や、起業家は読んでおいた方がいいよという本があれば教えてください。

川越 :僕は孔子の『論語』を推します。ビジネス書として色々な訳が出ているので、読みやすいものを選ぶと良いと思います。大企業の本部長クラスの方も「原理原則に立ち帰れるか、が起業の行く末を大きく変える。経営者に一番大切なのは原理原則だ」と話しておられました。原理原則って何か、というと、人としての正しさだと思うし、それを忘れないことだと思っています。そういうことを学べる原点となる書物が『論語』ですね。

神成:川越さんのお話は、スタートアップに重要なミッションやバリューに立ち帰るとか、会社云々以前に個人として自分がどうあるべきか、ということですよね。

川越 :そうですね。でもそうは言っても、会社は法人格という人格があり、社会の一構成員な訳です。そして、会社の人格には社長の影響がとてつもなく大きい。だからこそ、人として筋を通して正しいことをする、という心構えが重要だなと思っています。

– 投資家への誠実さを問う

神成:法人としての会社の正しさってどういうものだとお考えですか?

川越 :現実問題、お金の問題が一番メンタルにくるじゃないですか。資金調達の難しさってダイレクトに心にきちゃう。投資家に対して誠実で在りたいと思うと、「投資家に対する誠実さって何だろう」って考えてしまうのです。

新規投資家に対しては、魅力的なサービス/プロダクトであることこそが誠実さだと思います。 でも既存投資家に対しての誠実さは違うと思っていて、投資家の方も立場によって違う景色を見ていらっしゃいます。
既存投資家に対しての誠実さは、「この会社には未来がある、追加で投資する価値がある」と思ってもらえることだと考えています。売上が立っていて先行指標が取れている、だけど成長曲線が緩やかで企業としての価値がまだ出せていない、という状況であれば、勇気をもってコストカットをすることも経営者として持つべきカードだと感じています。ダウンラウンドになったとしても、既存投資家に対する責任を全うすることを選びたいですね。

神成:それも川越さんにとっての正義、原理原則ということなのですね。

川越 :はい、原理原則だし「当たり前のことを当たり前にやる」ってことで、それが「人として正しく在ること」です。そこに思い至ってから、気持ちがとても楽になりました。

スタートアップにとってステージごとに想定すべきシナリオとは

神成:資金調達をしようというスタートアップは、いかに夢を見せてワクワクを演出するかが全てのように思えますが、川越さんがおっしゃることは「良いシナリオばかりを見せるのは起業家として誠実じゃない」ということですよね。

川越 :そうです。良いシナリオはもちろん必要だし、シード期は夢物語を語れなくては意味がないです。でもある程度事業が進んで堅調に伸びたらいいですが、伸び率が良くない時に最悪のシナリオは考えておくべきだと思います。現状あまりポジティブじゃないよね、キャッシュアウトに向かっているよねっ、というスタートアップはめちゃくちゃ多いと思うのです。そういう場合には、期日を切って「いつまでにこういう成果が出なかったらこの選択をする」という宣言も、時には大切になってくるんじゃないかと。

コークッキングはもう選択肢が決まっているので、腹が決まって本当に気持ちが楽になりました。耳に痛いことをしっかり指摘してくださるのって、結局は投資家、株主、社外取締役といった方々です。そういう方たちと真摯に向き合って、大切にしたいですね。

神成:なるほど。川越さんの言葉には説得力がありますね。

社会変革のきっかけを作る。TABETEが目指すこと

神成:これからの事業の仕掛けや目指している世界など、今後の展望を聞かせてください。

川越 :TABETEは創業当時から中食小売に必要不可欠なインフラになることを目標としてきましたし、そのテーマはこれからも変わりません。また、巻き込まれてくださるステークホルダーをいかに増やすか、も大きなテーマです。これを追求できたらユーザー数も増えますし、ソーシャルインパクトを大きくすることができます。

また、ユーザー数よりもレスキュー食数をもっと増やしていきたいです。有難いことにレスキュー隊は54万人を超えてきましたが、レスキュー食数はまだ25,000食程度です。イギリスではひと月に100万食がレスキューされていますので、人口の多い日本ではもっとレスキューできるはずなのです。食数に徹底的にコミットしていきたいですし、その数こそがソーシャルインパクトになると信じています

それだけではなく、法改正やルールメイキングを含め、「社会を変えるきっかけとなるサービス」という立ち位置で社会変革のきっかけを愚直につくっていきます。その上で、「人間らしく創造的なくらしができる社会」という我々のビジョンの達成を目指して打席に立ち続けます。

神成:今日は本質的な深いお話、素敵な言葉をたくさん知ることができました。ありがとうございました!

株式会社コークッキング

TABETEは、まだおいしく安全に食べられるのに店頭では売り切るのが難しい食事を「レスキュー(購入)」できる【フードシェアリングサービス】です。つくりすぎてしまったパンやお惣菜、予約のキャンセルが出てしまった食事、食材の端材でつくったオリジナル商品など、様々なおいしい食事が出品されています。
「食品ロス」の削減に楽しく貢献できる、エコなサービスです。

https://tabete.me/


【編集後記】

川越さんとはNovolBaオフィスの方でもお付き合いがあります。どんなにお忙しくても即断即決で返信が速く、素晴らしい経営者だなと尊敬しています。今回、取材を通して「人としてこう在りたい」という本質的な部分を垣間見て、益々ファンになりました!TABETEのレスキュー活動が大きなムーブメントになっていくことを、これからも微力ながら応援いたします。(神成)


取材日:2022年10月12日
インタビュー/編集:神成 美智子
文:麓 加誉子
写真:原 康太

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