CBcloud松本隆一(代表取締役)

Vol.029 CBcloud株式会社 / 代表取締役CEO・ 松本 隆一さん

第29回は、「世の中の眠る力に革新を」というミッションを掲げ、物流業界におけるドライバーの価値向上に取り組むCBcloud株式会社。 シリーズCラウンドで60億円を調達するなど、注目が集まる会社をどうやって経営されているのか?代表取締役CEO 松本 隆一さんに、企業文化の醸成や大企業との連携などについて、詳しくお話を伺いました。

松本 隆一 Matsumoto Ryuichi / 代表取締役CEO

1988年生まれ、沖縄県出身。高校時代に独学でプログラミングを修得。高校卒業後、2007年航空保安大学校入学と同時に国土交通省に入省。2009年より航空管制官として羽田空港に勤務。2013年に退省し、他界した義父の運送業を継ぐ。会社経営をしながら自身もドライバーを経験し、同年CBcloud株式会社を設立。

CBcloudは、「ドライバーの価値」を上げる

NovolBa山田(以下、山田):まず初めに、CBcloudという会社の特長について教えてください。

CBcloud松本(以下、松本):特長というのかわかりませんが「ドライバーの価値を上げる」という強い信念があること、だと思います。
例えば、取引先との新しい案件について社内で議論をするとき、「この案件は本当にドライバーのためになっているか」、「運送業者の価値が上がるのか」、といったことが会話の中心になります。また、この信念が意思決定の基準にもなっています。ドライバーの過酷な労働環境や待遇面を改善したいという想いで起業したので、それが会社の文化のように浸透してきていると感じています。

山田:文化醸成のために、何かルール作りをしていますか?

松本:特別な制度を作ったりしている訳ではありません。これまで提供してきたサービスは「ドライバーの価値を上げる」ことが反映されていて、自然と社員の考えに落とし込まれているのだと思います。 例えば、ドライバーとお客様を直接繋ぐ配送プラットフォームである「PickGo」は、日々の努力がきちんと仕事に繋がるように評価の高いドライバーが選ばれる仕組みにしています。一般的なマッチングプラットフォームですと、何かの案件に対して早い者勝ちでそれを取りに行かなければならないのですが、当社のサービスでは、良いドライバーが選ばれるように意識しています。 このような仕組み作りを通して、会社全体に浸透してきているのだと思います。

Mission、Vision、Valueが大切な理由

山田:2020年にMission、Vision、Valueをリニューアルされているようですが、その経緯について教えてください。

松本:正確にはリニューアルしたというより、既にあったものを、より分かり易くしました。
例えば、valueは7つあるのですが、日本語だけでなく英語との併記にすることで社員が覚えやすく、言いやすいものにしました。 当時、会社の部署間で“対立構造”が生まれやすかったため、Valueに加え、より分かりやすくして社員に覚えてもらいたかったという背景がありました。

山田:対立構造が生まれやすいとは、どういうことでしょうか?

松本:例えば、配送を利用するお客様の立場からすると、できるだけ便利に、そしてコストは抑えたいですよね。一方、当社はドライバー・ファーストの観点から、彼らを疲弊させるようなことはしたくない。 そうなると、営業側が新しい案件を取ってきたけれども、ドライバー側をケアしているパートナーズサクセスという部署とせめぎ合いが起きやすい、ということがあります。

そのような時に、会社のMission, 、Visionを明確にしておくと、どのような世界を実現したいのかを再確認することができます。

私たちのMissionは、「世の中の眠る力に革新を」と定義しています。ドライバーのスキルを伸ばす、何か活躍できる場所を作る、成長できるチャンスを作る。そういったことをやりたい会社なんだ、という点を常に意識するので、目の前のことで対立構造が生まれても、最終的には同じ方向に向かっていけるのでは、と思っています。

山田:社内で浸透させる仕組みがあったりするのでしょうか?

松本:そうですね。ちょうど2ヵ月前にもMission、Vision、Valueを解説する会を開催しました。今後も、四半期ごとに定期的にできればと考えています。
また、日々の業務の中でValueを意識して行動できる仕掛けもあります。
社内で使用しているSlackに、7つのValue*のスタンプを作りました。誰かが素敵な考え・アイデアをシェアした時には「Think Big」のスタンプを送ったり、お願いしたアクションを素早く対応してくれた人に対して、「Move Fast」を送ったりしています。
それはピアボーナスと連動しており、獲得したスタンプ数に応じて報償を受けられる制度になっています。 社員が楽しんで使ってくれているようで、とても良い取り組みだと思っています。

*実際に使われているSlackのスタンプ。7種類があり、他メンバーからスタンプをもらう度に数がたまる仕組み。

大企業との連携で大切なのは、「同じ志」かどうか

山田:CBcloudさんは、佐川急便など多くの大企業と連携していますが、その背景についてお伺いしたいです。

松本:物流業界は、配送業者から個人事業主までプレーヤーが多く、一社がインフラを変えたり、作り上げていくのはなかなか現実的じゃないと思っています。私たちの「ドライバーの価値を上げる」ことに共感していただける企業と連携することで、私たちが作りたい社会を一緒に実現したいと思っていました。 「大企業さんとの付き合いは大変でしょう」と言われることもあるのですが、そう感じたことは正直あまりないです。同じ志を持って、同じ方向に向かって一緒に取り組みをさせてもらっているからかもしれません。

山田:大企業にアプローチするのは、敷居が高く大変なイメージがありますが、どのようなことを心掛けたのでしょうか?

松本:実は、私たちのほうから正面突破したり、この方に会いたいとアプローチしたことがほとんどなくて。ちょっとしたキッカケで紹介いただいたり、声をかけていただいたりすることが多かったように思います。 少しおこがましいかもしれませんが、日々正しいと思うこと、やりたいことを愚直に頑張っていると、ご縁をいただけるのかな、と私は感じています。

山田:一般的に大企業は、ビジョンへの共感よりも、売上や利益に直結するのかを重視するところが多いと認識していますが、いかがでしたか?

松本:日本の大手運送会社のマネージメント層は、現場上がりが多いです。ドライバーとして現場を経験して社長になることも普通にあるので、社長が内情を熟知しています。現場の課題感を的確に捉えていて、彼ら自身がその現場に入っていたときのことも想起しながら話を聞いていただける。ドライバーをどうにかしてあげたい、と思わない方はいない、といっても過言ではありません。 ですから、CBcloudの「ドライバーの価値を上げる」に共感し、協力していただけているのだと思います。

今後の展望

より多くのドライバーに、より多くの価値を

山田:最後に、CBcloudが目指す世界を教えてください!

松本:日本全国に軽貨物車は25万台ほどあるのですが、私たちのプラットフォームを利用されているのは約3万5000台で、利用率は14%程度です(2022年4月現在)。もっと多くのドライバーさんにサービスを提供したいと思っています。
軽貨物車というのは、法律上、個人事業主が所有して営業ができる車両を指します。個人事業主だからこそ起こるさまざまな課題があります。だからこそ私たちは、軽貨物車を所有している個人事業主のドライバーを様々な面から応援したいと思っています。 例えば、保険やガソリンなどの経費の負担を少なくできるようなサポートですね。さらに言うと、そのドライバーは個人事業主なので、運送に関わらず彼らの価値を上げられるように、様々なスキルを伸ばし、経験を積める環境も提供していきたいです。
私たちのMissionである「世の中の眠る力に革新を」を実現すべく、今後も真摯に淡々と努力していき、彼らが活躍できる社会づくりに邁進していきます

CBcloud株式会社

2013年の設立以来、フリーランスドライバーおよび一般貨物自動車運送事業者と荷主を即時につなぐプラットフォーム「PickGo」や宅配効率化システム「SmaRyuポスト」、運送事業者の業務支援システム「SmaRyuトラック」など、アナログと言われる運送業界に独自のITソリューションを提供。運送業界の構造改革およびラストワンマイルを担うドライバーの労働環境の改善をはじめとした業界が抱える各種課題を解決すべく、ITの活用による自動化・効率化を促進している。(CBcloud公式HPより引用)

CBcloud 公式HP: https://cb-cloud.com/
PickGo:https://pickgo.town/
SmaRyu:https://smaryu.town/


【編集後記】
数十億という資金を調達し、まさに波に乗っているスタートアップの取材!ということで緊張しておりましたが、松本さんは落ち着いた物腰で、丁寧にお話しくださいました。 印象的だったのが、「ドライバーの価値を上げる」という軸を、全てのサービス作りや協力企業連携にも当てはめていること。こういったブレない想いを大事にすることが、事業拡大においてとても重要なのだと感じました。今後も、CBcloudが物流業界を変えて行く姿を追い続けたいと思いました!(山田)


取材日:2022年4月25日
インタビュアー:山田 直哉

写真:原 康太
編集:神成 美智子

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