PalledAd安彦賢

Vol.014 株式会社PalledAd / 代表取締役社長・安彦 賢 さん

第14回は、屋外広告のダイレクトマーケットプレイスを展開する、株式会社PalledAd(以下、PalledAd)、代表取締役社長・安彦 賢さんにインタビューさせて頂きました!
高校生の頃からビジネスに興味を持ち、東大在学中にPalledAdを創業。安彦さんが描くビジョンとそれに向かっていく熱い想いを伺いました。

安彦 賢 Abiko ken  / 代表取締役社長 

高校在学中に株式会社DiverFrontの設立に参画し、広告管理を中心に情報メディア運営に携わる。2018年5月、株式会社PalledAd(パルダット)を創業。東京大学主催のビジネスコンテストをはじめとする多数のコンテストに出場し、優秀な成績をおさめる。

共同創業で感じたこと

NovolBa林(以下、林)安彦さんは大学在学中に起業されていますが、仲間や共同創業者のような方はいらっしゃったのでしょうか?


PalledAd安彦(以下、安彦):実は高校生の時に同じ志を持った仲間と、共同創業の形でビジネスを立ち上げたことがあるのですが、意見がぶつかることが多く、うまくいかなかったんです。今振り返ると、まずはそれぞれで行動して決めていけば良かったのですが、当時はそう考えることが出来ませんでした。

その後、大学でも学生メンバーでビジネスを進めていましたが、重要なポジションのメンバーが就職で抜けたこともあり、自分と同じ熱量や行動を仲間に求めるのは難しいと感じました。
そういった経験から、今は、やりたいことや事業方針は自分で組み立てて、それに共感してくれる人と事業を進めています。

東大発ベンチャーの実態

林:安彦さんは東京大学在学中にPalledAdを創業されていて、「東大創業者の会応援ファンド」からも出資をうけていらっしゃいますよね。
東大発ベンチャーというと、数多くの成功者がいて、周囲からもとても注目されていると思いますが、起業家が生まれる土壌やコミュニティの実態を教えいただけますか。

安彦:よく話題になるのは工学部のテック系や経済学部から出ている起業家ですね。あと、起業をテーマにした授業があったり、起業を志す人達が集まるサークルやコミュニティもあります。また、必要なときには、すぐに優秀なエンジニアと出会えますし、学校の先輩のネットワークや繋がりがあるのはとてもありがたいです。

高校生の時に既にビジネスを始めていたので、そういった東大コミュニティにどっぷりつかっている感じではなかったです。私は文学部ですしね(笑)

Vision: Everyone Can Be a Hero.

林:学生の頃から群れることなく、すごく真剣にビジネスに取り組まれている印象を受けます。安彦さんはどのようなビジョンをお持ちですか。

安彦:私は「誰もが主人公でいられる社会」を目指しています。幼少期に、大手企業に勤めるサラリーマンの父が、「仕事がつまらない」と話していたのをずっと覚えていて、自分は会社の歯車のような生き方はしたくない、と思っていました。

林:親世代は家族のために我慢して働いてくれている印象ですよね。

安彦:私の父も、おそらく自分のやりたいことよりも、安定した大企業で家族のために働いてくれていて、そういった価値観が今の日本をつくってくれたのだと思います。

ただ、自分にとってビジネスは「やりたいことをやる」ことだと思っていたので、起業することが自然な流れでした。

自分のように自由な選択を後押しできるような仕組みをつくることで、私の目指すビジョンに近づけるのではないかと考えています。

あと、私は海外旅行が好きで、世界中の様々な場所に行きました。そこで出会う人達はみな、自由に、自分の人生を楽しんでいるように見えました。

一度きりの人生ですから、自分の人生を楽しく、主体的に生きられたら素敵だな、と改めて思います。

Idea: 屋外広告で民間版ベーシックインカムを

林:そのような素敵なビジョンを実現するにあたり、屋外広告に着目した経緯を教えてください。

安彦:YouTuberやブロガーなどが活躍するオンラインの世界では、自分のやりたいことで生きていく仕組みができ始めています。これを支えているのは広告収入です。
一方、屋外広告のようなオフラインの世界ではデジタル化が遅れていて、本来広告枠としてお金を生むはずのスペースが、活用されていないのが現状です。

そこで、余っているスペースを気軽に活用できるようになれば、メルカリのように、個人間で簡単に取引ができ、新たな収入を得る仕組みをつくることができるのではないかと考えました。
長期的に見れば、民間版ベーシックインカムに近いものになる可能性を秘めていると思っています。

林:なるほど、ただのデジタル化が目的ではないのですね。

Value: 何度でも起き上がる諦めない心

林:安彦さんのお話を聞いていると、「屋外広告のDX」というレベルの話を超えて、広告業界の大きなゲームチェンジ、個々の働き方や生き方の変革など、業界構造や価値観の変換点にあるようなスケールの大きさを感じます。
ビジョンの実現に向けて、現在はどのようなアプローチをされていますか。

安彦:ビジネスアイデアとしての形は描けたのですが、なかなか実現に向けてのハードルは高いですね。マーケットプレイスさえ作れば流通するかと思ったのですが、なかなかうまくいきませんでした。
色々と考えているうちに、広告枠の視認性を数値化できた方が良いと思い、VRアイトラッキングで測定し、広告の視認率の指標をつくりました。

安彦:いける!と思ったときに新型コロナの影響で誰も外出しなくなり、屋外広告は一気に冷え込みました。
これはヤバイ、もうダメかも、と何度も思いましたが、屋外広告にしかない“体験価値”に可能性を感じていたので、試しにファンコミュニティを対象とした屋外広告を出してみました。すると、多くのファンが写真を撮ってSNSで拡散してくれました。
他の広告と組み合わせて屋外広告を出すとバズるのではないか、という新たな仮説をみつけた瞬間です。

林:ファンからすると、街中で偶然広告を見つけると共有したくなりますよね。
壁にぶつかりながらも、転んでもただでは起きないというか・・。常にワクワクする次の展開が出てきますね!

安彦:そうですね。考えて、やってみて、ダメだったらまた考える。
とにかく諦めずにやっていると、必ず次の扉が見えてきます。
これを繰り返していけば、いつかビッグチャンスに出くわすと思っています。

ただ、一人の力では限界もありますし、ここまで来られたのもたくさんの方々の協力のおかげです。これからも感謝を忘れず粘り強く続けていきます。

広告の未来と目指す世界

林:最後に、安彦さんが目指す広告の未来について聞かせてください。

安彦:広告の市場と技術動向を見ながら、常に様々な可能性を考えて事業展開をしていきます。テクノロジーも進化してきているので、メタバース空間における広告や、NFTの技術を駆使して、広告をよりクリエイティブなアート作品のように売り買いできるような仕組みを作っていきたいです。

いずれにしても、広告の市場が活性化され、今までなかった市場を作り出し、広告枠をもっと簡単に売り買いできる世の中にしていきたいですね。

株式会社PalledAd

個人が所有するスペースを広告枠として売買可能にするプラットフォーム事業を展開。
Web広告やマスメディアに比べ、効果の可視化が難しかった屋外広告の領域を、独自の技術で数値化し、自分の目的にあった媒体に代理店を通さずに注文することができるマーケットプレイス「AdVice(アドバイス)」を開発・運営。

https://www.palledad.com/

【編集後記】
安彦さん自身が描くビジョンの山の登り方を、様々な方向から試している感じがしました。

この起業家の物語はまだまだ序章だが、
きっとこれから立ちはだかる壁も、
インテリジェンスと、不屈の精神で扉をこじ開け、
飄々と進んでいくのだろう。
その先には「誰もが主人公でいられる」素敵なゲームチェンジが待っている。

次に開く扉はどこにつながっているのか。
PalledAdの物語に今後も注目です。(林 昌毅)


取材日:2022年1月26日
インタビュアー:林 昌毅
写真:原 康太
編集:神成 美智子


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