SARAH 髙橋洋太 CEO 高橋  WITH_神成美智子

Vol.013 株式会社SARAH / 代表取締役・髙橋 洋太 さん

第13回は、「よりよいごはんとの出会いをつくる」をミッションに掲げ、食の行動データを活用してより良い社会を目指す、株式会社SARAH(以下、SARAH)。セブン-イレブン・ジャパンを筆頭に、なぜ多くの大手企業がSARAHに投資するのか。事業の拡げ方、社長自らコミットした採用活動の極意、今後の事業展開など、代表取締役・髙橋 洋太さんに多岐に渡ってお話を伺いました。

SARAH 髙橋洋太

髙橋 洋太  Takahashi Yota  / 代表取締役 

大学在学中に起業、2009年より㈱エニグモにてBUYMA事業を担当し、上場を経験。2014年、メニュー単位で口コミ検索できるグルメサイト『SARÀH』を運営する株式会社SARAHを設立、代表取締役に就任。法政大学で「アントレプレナーシップ論」講師も務める。

自分たちにしか提供できない価値は何か?悩み続けた1年半

NovolBa神成(以下、神成):はじめに事業について伺います。グルメコミュニティアプリ『SARÀH』の他に、外食ビッグデータ分析サービス 『FoodDataBank』、飲食店向けメニュー電子化サービス『SmartMenu』の3事業を展開されていますが、創業当初からこういった大きな構想はあったのでしょうか。

SARAH髙橋(以下、髙橋):全くありませんでした。はじめは消費者視点で「美味しいポテサラが見つからない」という課題を発見して、Googleの検索ボリュームを調べたところ、エリア×料理ジャンルで年間1億回くらい検索されていることがわかりました。でも、一皿のメニューに対して口コミを書くサービスが無かったので、「ならばやろう!」というノリで『SARÀH』を始めました。

グルメサイトはどこも、広告収入で利益を得ているのですが、ユーザー数と投稿数が伸びてきた時に、他の企業が提供している価値と同じものを提供しても意味がないと思って、今後何を強みにしていくか、どこでマネタイズしていくか、かなり悩みました。
経営陣で毎週土曜日に10時間近くミーティングをしました。時には温泉で、海が見える場所で、個人の過去まで振り返って、結局1年半くらい続きましたね。そんな中、食品メーカーやコンビニから「データを分析したい」という連絡がきはじめて、「これはいける!」と手ごたえを感じて立ち上げたのが『FoodDataBank』というサービスです。

神成:1年半ミーティングを繰り返されたのはすごいですね。この時間がチームの結束を強固なものにして、会社のミッション、ビジョンの礎になっているのですね。

大きな戦略を描くことが、大手企業からの資金調達を可能にする

神成:何社もの大手企業から資金調達をされていますが、なぜ大企業がこぞってSARAHに興味を持つのだと思われますか。

髙橋:
大企業が目指す、大きな戦略を具体的に示せているからだと推測しています。

少し背景からお話しますね。当時、中国のアリババ社やテンセント社がQRコード決済でとったデータから、色々なものをレコメンドするサービスを展開して、伸びに伸びていました。少し遅れて日本でもPayPayなどのQRコード決済が普及しはじめ、その時に「どこでいくら使った」だけでなく「誰が何を食べた」「何にこだわっている」といった食のデータにも価値があるのではないか、という仮説を持ち始めました。
実際、こういった個別のデータが商品開発にも活きてきます。また、食の嗜好が旅行やファッションといった他の領域にも大きく関係するので、レコメンドにも活用できると考えるようになりました。

どこのベンチャー企業もミッションは大きいじゃないですか。ただ、戦略も大きい会社ってそう多くなくて、大抵「ユニコーン企業目指します」くらいに収まってしまう。
1年半悩んだ結果、大企業レベルの大きな構想を打ち出せているので、投資してくれる企業も「ここに向かった方がいい、一緒にここのデータを集めていきましょう」みたいになっている気がします。大企業の困りごとにうまくフィットしているだけなら、コンサルでも出来てしまいますが、「データ」と「ユーザーとの接点」という2つのアセットをもっているので、関係が強固になっているのだと思っています。

あと、これはテクニック的なお話になりますが、相手の担当者を役職で選ぶのではなく、アントレプレナーシップを持った担当者を探しだして、若い人でも「この人だ!」と思ったら集中してその人と仲良くなるようにしています。大企業を変えるのは、役職ではなく個のパワーだと思うので、その人と一緒に、様々な大企業の壁を突破しています。

この2つが、上手に大手企業を巻き込めている理由ではないでしょうか。

採用活動は、代表自らやるのがオススメ

神成:どんどん事業を拡大していくと、任せられる人財が必要になってくると思います。御社のnoteを拝見すると、年齢も国籍も幅広い素敵なメンバーが揃っていますが、社風に合った優秀な人をどのように集めているのか、秘策を教えてください!

髙橋:
採用という部分でいうと、僕がかなりコミットしてやっていまして、自分のリソースの50%くらいを採用に使っています
採用活動って、プロダクトづくり、マーケティングと同じことをやっていくべきだと思っていて、要するに「うちの会社の強みは何で、求職者のニーズが何で、競合がどこで・・」ということを分析して、打ち出していくことを決めるわけじゃないですか。
また、求職者がどこにいて、我々の欲しいターゲットがどこにいて、それに向かってコミュニケーションをとっていく必要があります。

僕が2週間ビズリーチを運用したら、面接が150件入ったんです。通常のスカウト返信率が5%平均のところ、なんと30%を超えて、稀にみる成功中の成功事例だと言われました。

神成:スカウト返信率30%、面接150件は驚異的ですね!!一人一人に合わせてチューニングして文面を考えているわけですよね。
なぜ人事に任せたりせず、髙橋さんがやろうと決めたのですか。

髙橋:代表自らやる方が良いことってあると思っていて、代表以外の立場の人だと、メディアに露出している情報以外は、いちいち確認しないと出せない。今後の戦略とか、どういう立場で仕事をして欲しいとか、情報をどこまで出すかの判断を含めて発信出来るのでオススメです。

会社の成長を実感できれば、社員のモチベーションは下がらない

神成:採用の4Pと言われる、Philosophy(理念・目的)、Profession(仕事・事業)、People(人材・風土)、Privilege(特権・待遇)で見てみると、SARAHさんは全てが高水準なように思えます。

髙橋:そうですね、意識していませんでしたが、大きなマイナスポイントはない気がします。
一般的にベンチャー企業は基本ミッションドリブンで、どこかに強みがありますが、給与が低い、サービス残業が当たり前、というところも少なくない。
僕は社員に長く活躍してもらいたいので、給与そこまで低くはないですし、創業当初からストックオプションの設計までやって、会社が成功した時に社員もきちんと対価が得られるしくみを作っています。
また、会社のステージが一段ではなく、数段上がるようなことを定期的に出して共有することは、意識してやっていますね。

神成:
メンバーがどんどんジョインして、新しいアイデアが生まれて、更に(SARAHに!)事業が加速していく理由がよくわかりました。

日本が世界に価値提供できなくなっていることに危機感を感じた学生時代


神成:ここからは、髙橋さんのパーソナルなお話を伺います。大学時代に学生起業家選手権で優勝されて起業されていますが、髙橋さんのアントレプレナーシップはどこからきているのでしょうか。

髙橋:幼少期から社会課題や政治について議論する家で育った、という家庭環境もありますが、大学でアントレプレナーシップのゼミに入ったことが大きなきっかけです。
その当時、既に日本経済は衰退し始めていて、その一番の理由が起業家率の低さだと僕は思っていました。それを解決するには、まず自分が行動して色々な影響を与えないといけないと思って、起業しました。週100時間くらい働いて、学校に行って、みたいな生活をしていました。

ゼミの先生から「若者よ、怒れ」と、いつも言われていて、僕は、ホワンとして全然こういうタイプじゃなくて、「怒れないよー」とか思っていました(笑)ただ、そういうコミュニティにずっといると価値観は変わって、色々なことに課題を感じるようになっていきました。
周りの学生を見ていると、サークルで遊んでいる、ずっと麻雀しているだけとか‥。日本の大学は簡単に卒業できちゃう環境の中で、日本が世界に対して価値提供できていない現状と、それを解決できない苛立ちみたいなものは正直あって、それが原動力だったと思います。

あと、高校時代も影響していると思っています。部活でサッカーをやっていて、ポジションはキーパーでした。めちゃくちゃ体育会系で、キーパーだけで11人いたのですが、キーパーコーチが週1しか来てくれない。だから、自分たちで練習メニューを考えたり、理論を勉強したり、みんな自立的に動いていました。
偶然ではないと思うのですが、仲間で起業家になった人が結構いまして、エウレカの赤坂優氏やバーチャルモデル『 imma(イマ)』を手がける守屋貴行氏も同じ部活にいました。

神成:すごいメンツ・・まるでアベンジャーズ!(笑)
高校の部活を通して、主体的に理論や戦略を考えPDCAを回すことを、自然とされていたのですね。

あらゆる領域で、よりよい物事との出会いをつくる

神成:SARAHの目指している世界、今後の展開を教えてください。

 

髙橋:外食、中食、内食、すべての「誰が何を食べているのか」のデータを取っていきたいと思っています。まず食のパーソナライズをして、「よりよいごはんとの出会い」をもっと増やし、外食産業を盛り上げていきたいです。

その後は、少し長期的な話になりますが、食を軸に、あらゆる領域でよりよい物事との出会いをつくっていきたいと思っています。

また、食のデータが活用できること、日本が世界に後れをとっていることは前述しましたが、「食」は世界に打って出る可能性を秘めていると思っています。ただ、日本企業ってローカライズが苦手でそのまま持っていってしまうんです。味覚は国によって違うので、そこは絶対変えていかなくてはなりません。そこで重要になるのがデータです。
商品開発力がある日本だからこそ、国内でやっていることを世界でも展開し、価値を生み出せると思います。

 

株式会社SARAH 

グルメコミュニティアプリ『SARÀH』、外食ビッグデータ分析サービス『FoodDataBank』メニュー電子化サービス『SmartMenu』の企画・開発・運営。
株式会社SARAH 

SARAH @おいしいごはん


【編集後記】
コミュニケーションを重視したこだわりのオフィスには、社員が喜ぶ仕掛けがそこかしこにあり、神保町への移転が会社の成長を感じられるビッグイベントの一つなのも納得です。ちなみにカレー激戦区としても有名な神保町ですが、髙橋さんのオススメの一皿は、南インドカレー『三燈舎』のMEALS(ランチミールス)だそうです。
髙橋さんをはじめ、メンバーの皆さんも素敵な方ばかりで、インタビューを終えた時にはすっかりSARAHちゃんの虜になっていたのでした!
(神成 美智子)


取材日:2022年1月26日
インタビュアー:神成 美智子
写真:原 康太
編集:山田 直哉

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