こんにちは。営利と非営利、両分野で頼られるPRパーソンになりたい麓(ふもと)です。
全6回でスタートアップの広報PRについて連載しています。前回はスタートアップにおける広報PRの考え方をお伝えしました。
今回はソーシャルメディアについて、考え方と使い分けについてお届けします。
1. ソーシャルメディアが消費行動にもたらした変化
そもそもソーシャルメディアとは何でしょうか。ソーシャルメディアとは、インターネットを介して、個人が情報発信できる情報交流ツール全般を指します。
具体的には、電子掲示板、ブログ、SNS、動画投稿サイト、口コミ、などです。日常会話を可視化したこと、双方向コミュニケーションが特徴的で、その点でマスメディアは含みません。
口コミやレビューといった投稿型コンテンツが一般化し、検索と共有(シェア)が消費者の購買行動に占める割合が大きくなりました。この変化は前回「AIDMA(認知→興味関心→欲求→記憶→行動)」から「AISAS(認知→興味関心→検索→行動→共有)」だとお伝えしました。
近年の分析では、この「AISAS」の行動の中でも、高額商品や初めての購入、大切な方へのプレゼントなどの際には、より慎重にこだわりを持って行動することがわかっています。この変化は「AISAS」に「比較」と「検討」を足したもので、「Attention(認知・注意)」→「Interest(興味・関心)」→「Search(検索)」→「Comparison(比較)」→「Examination(検討)」→「Action(行動)」→「Share(共有)」で「AISCEAS」とされています。
いずれのモデルも、インターネットの発達によって発展したソーシャルメディアの影響が大きく、特徴である双方向コミュニケーションから生まれた消費行動であると言えます。
2. スタートアップがソーシャルメディアを活用するメリット
前回、「PRの本質はコミュニケーションである」とお伝えしました。ソーシャルメディアが双方向コミュニケーションを特徴としていることから、現在の広報PRにソーシャルメディアが果たす役割は大きく、また欠かせないものです。
さらに、スタートアップがソーシャルメディアを活用すべき理由を、大きく3つのメリットにまとめてみました。
①ステークホルダーへの認知拡大を図れる
利用する人数が年々増加しており、ソーシャルメディアを活用して各ステークホルダーへの認知を行うことが効果的です。商品やサービスを「知ってもらう」「買ってもらう」だけでなく、採用などにも活用できます。共感してくれたステークホルダーはシェアしてくれるので、その拡散力も活用したいものです。
②顧客の本音を聞いてCSを向上させられる
SNSを中心とした双方向コミュニケーションは、顧客からのダイレクトな意見や感想を受け取ることを可能にしました。これは商品やサービスの短いサイクルで改善するスタートアップにとってとても重要なことで、顧客満足度(CS)をクイックに向上させることができます。また、顧客との直接のやり取りがより深い関係を築くことも可能になるでしょう。
③ブランディングに効果的
ソーシャルメディアの発展は、創業間もないスタートアップも自社の起業家精神やミッション、個性を発信することを可能にしました。商品やサービスの説明に留まらない発信は、多様化した消費者の好みに訴求し、従来企業に差別化したファン作りを行うことができます。
いずれのメリットも、発信を継続することでより大きな効果が得られるものです。
3. ソーシャルメディアの特徴と使い分け
主に以下のようなツールがあります。
どのツールを活用するのかは、自社の強みから決めていくのが良さそうです。1日に数回以上の発信量を見込めるならTwitter、世界観を表す上で画像に強みがあるならInstagram、動画コンテンツが得意ならYouTubeやTikTok、独自性や個性で勝負できるならnote、特定の層を狙いたいならFacebook広告、幅広い年代に届けたいならLINE、と言った感じでしょうか。
発信担当者が活用するツールの使い方や使用感、活用のコツを熟知していれば、他との差別化ができ、継続する上でも理想的です。そうでない場合も、実際のツールユーザーの率直な感想を聞きながら運用して、活用法を修正していくのが良いでしょう。
また、拡散力にも注目したいものです。即時の拡散力に優れているTwitterは、リアルタイムイベントとの相性も抜群です。ハッシュタグによって検索されるInstagramやFacebookは息の長いブームを作ることができます。
自社の強みと魅力を最大限活かせるツールはどれでしょうか。いずれのツールを使う上でも、双方向のコミュニケーションを意識し、一方的な発信にならないように心がけたいものです。
4. ソーシャルメディアをめぐる危機管理と広報PR
ソーシャルメディアはスタートアップにとって大きな力を与えてくれるものですが、それゆえに危険なこともあります。あってはならないことですが、不適切な内容や誤情報を発信してしまった時や、画像や動画の転載に違法な点があった場合、経営層などが不祥事やスキャンダルを起こした場合など、大きな危機に転じることがあり、常にチェックする必要があります。
「炎上」と呼ばれるものも、それらの危機の一つです。インターネット上で批判が殺到して収まりがつかない、議論の盛り上がりが尋常でなく、バッシングが続いてしまう状態を「炎上」と言います。創業まもないシード期、アーリー期のスタートアップにとっては、致命傷になりかねない事態となりますので、注意が必要です。
「炎上」が起こってしまった時の広報PRに求められる対応として、まずは上司やチームへ報告すること、削除よりも正確な状況把握に務めましょう。次にメディアなどへの対応に一貫性を持つこと。そのためには、日頃からある程度対応策を備えて置けると良いでしょう。加えて、なぜ炎上が起きてしまった原因を振り返り、平常時のチェック体制・対応策を見直すことをオススメします。
怖がりすぎずにまずは発信を継続しよう(まとめ)
スタートアップにとってのメリットを中心に述べてきました。「炎上」などというと怖くなって発信を縮小しがちですが、私は「背伸びをしすぎない」に留意すれば、発信を恐れなくて良いと考えています。一発の「バズり」を期待した不正確な内容、誇張した表現が自ら危機を招いてしまうのであって、ステークホルダーに対して誠実に敬意を持って行う発信に危険要因は限りなく低いものです。
継続した発信こそが組織に力を与えてくれる、ということも覚えておきたい点です。 ステークホルダーへの認知拡大も、顧客からの本音も、ましてブランディングへの活用など、発信を継続した先にしか得られない力です。共感コミュニケーションの拡散力に乗って、自社の良さ、魅力、強みを誠実に全力で届け続けていきたいものです。
次回予告
最後まで読んでくださりありがとうございます。
次回は11/2(水)「効果的なTwitter発信」をテーマに、シェア買いの「カウシェ」広報・大塚早葉さんとの対談記事でお届けする予定です。お楽しみに!
文/ 麓 加誉子
編集/ 神成 美智子
【麓 加誉子 プロフィール】
フリーランスライター+市民活動家。広く社会課題にアンテナを張ってライター活動9年目。社会課題解決のためにも「伝える」ということに特に課題感を持ち、広報PRは非営利活動分野から始めて実践を重ねている。個人的には団体広報と企業広報の融合がテーマ。