グランストーリー 越智敬之 Ochi Hiroshi STORIUM

Vol.46 株式会社グランストーリー・代表取締役CEO 越智 敬之 さん

第46回は「意志ある人の可能性を解き放ち、新たな価値を生み出すプラットフォームをつくる」をミッションに掲げ、邁進する株式会社グランストーリー・代表取締役CEO 越智 敬之さんにインタビューさせていただきました。

なお、社会課題に果敢に挑む挑戦者たちに光をあてるメディア『WITH』が、全4回の連載でお届けする特別企画・第一弾です。

同社は、これからの社会イノベーションを担うスタートアップ・投資家・事業会社イノベーターに特化した、次世代型ネットワーキングインフラとして『STORIUM』を運営。スタートアップ界隈で注目を集め、話題になっているサービスです。
今回のインタビューではSTORIUMが目指す世界、この「場」­をつくるに至った背景についてお聞きします。


越智 敬之 
Ochi Hiroshi
株式会社グランストーリー
/代表取締役 CEO

【 Profile 】早稲田大学在学中にWEB制作会社を起業したのち、2002年サイバーエージェントに入社。インターネット黎明期より大企業のデジタルシフトを11年にわたり支援。AOI Pro.(現AOI TYOホールディング)にてグループ全体のデジタル戦略と組織再編プロジェクトを担当後、グループ会社の執行役員に就任。ガリバーインターナショナル(現IDOM Inc.)では、事業企画やスタートアップとのアクセラレーター運営に携わったのち、採用人事責任者として採用戦略やリーダーシップ開発インターンプログラムを企画。2019年株式会社グランストーリーを創業。


スタートアップと投資家、事業会社が最適につながる場

NovolBa 神成:初めて『STORIUM』について伺った時は、まさに我々の目指したい世界そのものだ、と共感しかありませんでした。改めて事業コンセプトについてご説明いただけますか?

グランストーリー 越智 :STORIUMは、世の中のイノベーションを増やすために立ち上げた事業です。スタートアップがもつアイデア・技術・世界観が社会に広く行き渡っていくことで、この国の未来はきっと今より豊かになるはず。この想いを実現するため、スタートアップと企業価値向上をサポートするVCやCVC、そして社会実装の共創先となるイノベーティブな事業会社を、最適にマッチングする「場」を提供する。それが『STORIUM』です。

神成:誰でも入れるコミュニティだと質の担保が難しくなる気がします。何か入会基準のようなものはありますか?

越智:事業会社が登録する際に審査基準を設けています。スタートアップは「VCからの出資を受けていること」を条件にさせていただいています。

神成:スタートアップ企業はどのような流れでSTORIUMに登録するのでしょうか?

越智:VCやCVCからのご紹介がほとんどです。それが「STORIUMがもつポジティブなエネルギー」に変換されているように感じます。新規登録していただく際に、必ず私かメンバーが企業のご担当者とオンラインで面談しています。信頼関係を築く入口として、どのような目的でSTORIUMに登録しどんな企業とつながりたいのか確認し、当社からどういった支援をさせていただくのが良さそうか把握するためです。

神成:かなり手厚くサポートをされているのですね。事業としては順調ですか?

越智:おかげさまでリリースから2年が経ちました。今では300社超の企業が登録してくださり、累計600件を超える新たな出会いが生まれています。起業家が描くビジョンに共感し、支援・協業を検討する機会が広がり、新たなストーリーが始まる。まだほんの通過点ですが、起業家がずっと出会いたかった投資家や大企業のキーマンとのご縁をつくれていると大きな手応えを感じています。
STORIUMの語源は「STORYを生む場所(stadium)」からきています。

神成:そこにstream(流れ)も隠れていますね

越智:気付いていただきありがとうございます!
私個人としては、STORIUMが発する「挑戦者を応援する互助共助な価値観」に共感いただき、その共感の連鎖が広がってきているように思います。スタートアップ政策に積極的な地方自治体の方をご紹介いただいたり、スタートアップスタジオの方々とパートナー連携させていただいたり…。「もっと起業家を応援するためにプラットフォーム同士の連携を促進しましょう」と、前向きな相談や協議も寄せられるようになってきました。

神成:応援の輪が広がっていくのはワクワクしますね。
プラットフォームの熱量を表す指標のようなものはあったりするのでしょうか?

越智:特に「メッセージ数」と「返信率」は、ユーザーの利用実態を把握する指標になるので、チェックしています。一般的に、営業メールの返信率は0.1~0.2%と言われていて、見知らぬ企業同士の出会いから協業までには長い時間を要します。
一方、STORIUMは信頼を重視するクローズドな場である為、初回から安心感をもってかなり踏み込んだ相談や問い合わせが生まれやすくなっています。
私たちにとっての「メッセージ返信率」は、心理障壁を極力感じず、円滑なコミュニケーションが実現できているかを押し測る「成果指標」なのです。おかげさまで今では80%を超える返信率で、これは本当にうれしい数字ですね。

神成:80%! それは驚異的な数字ですね!!

大企業で感じたイノベーションのジレンマ

神成:この領域にはいつ頃から関わってこられたのでしょうか?経歴をお聞かせください。

越智:私の社会人キャリアは、インターネット産業黎明期のサイバーエージェントに始まります。同社に11年在籍する中、社員数はわずか100人から4000人に急成長し、若いメンバーが志高く躍動し続けることで、新たな事業がバンバン立ち上がり成果を出し続けていく。そんな圧倒的な成長をつづける組織のダイナミズムの中で、私自身も多くのことを経験し、成果を生むことができました。

その後、2012年より既存産業の変革と創造にチャレンジするべく、AOI Pro.ではデジタルクリエイティブ部門の事業再生、またガリバーでは新規事業や組織改革に携わってきました。IDOMではスタートアップとのオープンイノベーションを推進するアクセラプログラムのメンターと事務局、どちらの立場も経験しました。

こういった経験を通じて、「未来を見ているスタートアップ」と「既存産業を支える企業」の根本的な違いを理解し、日本中のそこかしこで起きている「イノベーションのジレンマ」の根深い原因について考える経験を繰り返してきました。

神成:越智さんの実体験からくる解像度の高さなので、説得力がありますね。

越智:ここ数年で多くの大企業がDXを中心とした組織改革や事業創造に力を入れるようになりました。特にスタートアップとの連携促進を目的に、CVCを立ち上げるケースも増えています。「イノベーションのジレンマを打ち破ろう」と、本気で奮闘される大企業のリーダーの皆さんとお会いする機会も増え、この新たな潮流には大いなる可能性があると信じています。

今の当たり前は当たり前でなくなる

神成:初めてお会いした時から思ったことですが、越智さんの溢れ出す熱量は一体どこからくるのですか?

越智:「危機感に対する意識」でしょうか。私は生まれ育ちが兵庫県の神戸市でして、大学時代に阪神淡路大震災を経験しました。あれから28年もの歳月が流れましたが、あの時の灰色な景色と焦げた匂いは今も昨日のことのようにクリアに記憶しています。震災の衝撃的な経験は「当たり前と思っていることも、突如として当たり前でなくなることがある」ということを私に教えてくれました。
自然が及ぼす未曾有の災害には、誰しもが危機感を覚えますが、いま社会に忍び寄っている目に見えない危機を気にしている人は少ないように感じています。

神成:「目に見えない危機」とは何でしょう?

越智:色々とありますが、例えば「リーダーシップ不全で他律的な人と組織が多いこと」に危機感をもっています。様々な会社に関わる中、すべてが超一流な組織でもリーダーシップと当事者意識を持つリーダーがおらず、本来のポテンシャルを活かせない、熱量も高まらない組織が本当に多い。そしてそういう組織がこの国のあらゆるところに点在し、日本社会全体のイノベーションの可能性を阻んでしまっているように感じるのです。
いかに組織のリーダーを増やし、組織全体の熱量を高められるか。それぞれの「WILL(したいこと)」を叶えるために、熱量の高いリーダー同士が繋がる機会をどう増やすか。この問いの答えが「意志ある人の可能性を解き放ち、新たな価値を生むプラットフォームをつくる」という当社のミッションに繋がります。

素敵な投資家との出会いが、起業家のさらなる本気に火を点ける

神成:STORIUMを立ち上げた背景やきっかけを教えてください。

越智:大きくは2つあります。
1つ目は、日本にはスタートアップの成長・成功を支える持続的な仕組みがないと感じたからです。2022年11月に岸田内閣が発表した「スタートアップ育成5か年計画」では、スタートアップ投資の税制を優遇するなど、緩和的政策は多くなってきました。しかし肝心な投資家とスタートアップが出会う機会は、全国各地で行われるオフラインのイベントやカンファレンスなど、依然として旧来の仕組みが残っており、ITを用いた抜本的なアイデアは聞こえてきません。
2つ目は、新産業創造に関わる人たちが、より本質的な事業やユーザー、チームに集中して時間と気持ちを投下できれば、もっと事業の成功確率は高まるのではと考えてきました。このプロセスをDX化できれば、スタートアップエコシステム全体に大きなインパクトを残せるのではないか。

オンラインを起点にし、将来有望なスタートアップと、有力な投資家・事業会社が出会うプロセスや機会を最適化し、一期一会の確率を上げることで、イノベーションの総量を増やし、新産業創造を活性化させたいと考えました。

「最適な一期一会」とは、パートナーとして出会い、それぞれが描くビジョンや解決したいテーマや課題に共感し、双方の強みやアイデアを活かしあいながら、クリエイティブなシナジーが新たに生まれる。そんな関係を見据えた出会いだと思っています。

神成:なるほど。情報や仕組みの整備が、結果的にイノベーションの総量を増やし、起業家の成功確率向上にもつながっていくということなんですね。

「次世代に活力と希望に溢れる豊かな未来」をつなぐために

神成:スタートアップエコシステム、Society 5.0など、世の中の流れもSTORIUMを後押ししているように思えます。VUCAの時代だからこそ、スタートアップという存在は絶対に必要ですよね。

越智:はい、今の日本にイノベーションが必要だということは、誰もが頭では分かっています。その「種」は往々にしてスタートアップがもっているので、大企業もスタートアップと組みたがっているのです。そして、イノベーションの種を一緒に育てたい、と考えるキャピタリストもたくさんいます。

神成:その出会いの場を提供するのが『STORIUM』なわけですね!

越智:起業家が描くビジョンが1つでも多く実を結び、新たな社会の礎(いしづえ)をつくり、次の世代の人たちにより良い未来を残したい。それが、私たちが見たいビジョン「次世代に活力と希望に溢れる豊かな未来をつなぐ」ことであり、その信念は「豊かな未来のストーリーを生む」という願いを込めた『STORIUM』の名称にも繋がっています。

私たちグランストーリーは、STORIUMを通じて起業家やイノベーターの成功確率を高め、社会イノベーションを促進する公益インフラを目指しています。

神成:越智さんの思い、熱量がビシビシ伝わってきました。本日はありがとうございました!

次号予告 】 1月31日 配信予定
連載2話目は、オリックス・キャピタルの田中正人氏、木村彰利氏との対談でお届けします。
起業家の「真のパートナー」になるのは?スタートアップ界の課題について語り合います。

株式会社グランストーリー

「次世代に活力と希望に溢れる豊かな未来をつなぐ」をビジョンに掲げ「意志ある人の可能性を解き放ち、新たな価値を生み出すプラットフォームをつくる」をミッションに活動するスタートアップ。革新的な挑戦に躍動するスタートアップと、国内外の有力投資家、豊富な叡智とアセットを有する事業会社のキーパーソンがつながり出会う新産業創造プラットフォーム「STORIUM」を企画・運営している。


【 編集後記 】

越智さんのSTORIUMにかける想い、高い熱量、そして何よりも「周りをチームとして巻き込みながら推し進めていく力」に、いつも圧倒されます。越智さんと関わった人は、一人残らず「とりこ」になってしまうのではないでしょうか。NovolBaも、いちスタートアップとして、このプラットフォームの必要性と社会的意義を大いに感じています。次号もお楽しみに!(神成みちこ)


取材日:2022年10月27日
インタビュー/文:神成 美智子
編集:高野 比呂史
写真:Kowaki

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