第11回は、「国際物流をより最適に、よりスマートに。」をミッションに掲げ、国際物流の効率化に挑戦されているWillbox株式会社 代表取締役の神 一誠さん。起業を決断した経緯や会社経営の中で得た学び、今後の展望などについてお話を伺いしました!
神 一誠 Kami Motonari / 代表取締役
1989年生まれ。大学卒業後、ディップ株式会社にて法人営業に従事。その後、株式会社マイナビにて新卒採用サイト「マイナビ」の法人営業に従事し、当時最短最年少で支部長に就任。その後、家業の総合物流会社を経て2019年、Willbox株式会社を創業。
国際物流の効率化を実現するサービスとは
NovolBa山田(以下、山田):まず始めに、事業内容を教えてください。
Willbox 神(以下、神):シンプルに説明しますと、国際物流における「荷主」と「物流事業者」のマッチングを、ITで効率化しています。国際物流では、貨物の種類や大きさなどに合わせ、複数の物流事業者をマッチングする必要があり、そのマッチングを効率的に行うシステム『Giho』を提供しています。
山田:通常、企業が製品を輸出したい時にフォワーダー*が物流事業者を複数社ピックアップしてマッチングしていますが、それを効率化できるということでしょうか?
*フォワーダー:輸送の依頼主(荷主)と実際の輸送業者(キャリア)の間に立って、貿易事務や輸送手配に付随して発生する業務を担う会社。
神:その通りです。『Giho』は、今までフォワーダーがマニュアルでやっていたことを自動化するので、物流業務がより効率的になり、コストダウンにも繋がります。荷主や物流事業者には大きなメリットがあるのですが、フォワーダーの仕事が『Giho』に置き換わるので、事業を始めた時は、恨まれていつか私が港に浮いてしまうのではないか、と心配しました。それは冗談ですが(笑)。
現在は、物流事業者を始め多くのパートナーの方々にご協力頂き、フォワーダーが対抗するのが難しい状況まできています。
起業家を目指していなかった自分が起業した理由
山田:国際物流の効率化に挑戦している神さんですが、もともとは起業家を目指していなかったと伺いました。
起業を決断した理由、その経緯を教えて下さい。
神:決断した大きなきっかけは、父親が30年前に書いたノートを読んだ時でした。
私の父は物流会社を経営しており、起業する前は私もそこで働いていました。物流業界で働き始めると、物流業界の非効率さに直面し、それを解決できるサービスがないものかと思い、考えたものが現在の『Giho』でした。そのことを父に話したところ、「実は俺も30年前に同じことを思って、ここに書いたんだ」と、古いノートを見せてくれたのです。もう鳥肌が立ちました。父親が当時から感じていた物流業界の課題が、今も変わっていない。ならば自分がやるしかない、自分の使命だと感じて、起業しようと決断しました。
プロダクト開発で得た学び
山田:起業されてからは、順調にユーザー数も増え事業を拡大しているように思いますが、大きな困難、失敗などはありましたか?
神:創業期のプロダクト開発において、大きな反省があります。私は開発の知識がないのに、システムについて無理難題な指示を出し、エンジニアチームを苦しめてしまったのです。具体的には、私は分かり易く伝えたいという思いで「Gmail のようなインターフェースが良い」、「Slackみたいなコミュニケーションができる」などとエンジニアチームに依頼をしていました。エンジニアの方々は真面目で優しいので、どうにか私の思いを実現しようとしてくれていました。今では、GmailやSlackのようなシステムを作るのがどれほど大変なことか分かるので、すごく反省しています。
山田:それからは、プロダクト開発への関わり方は変化しましたか?
神:はい、気を付けていることは2つあります。
1つ目は、開発しているプロダクトの目的がWillboxのミッションに沿っているのか、をしっかり考えるようにすること。これが代表である私の大事な仕事の一つだと思っています。WhatやHowにあたる、どのようなシステムを作るか、課題をどう解決するシステムか、についてはエンジニアに任せて考えてもらうようにしています。
2つ目は、「解決したい課題は何か」についてディスカッションすることです。これは私だけでなく、メンバー全員にも意識してもらっています。プロダクトの仕様を考える前に、しっかりディスカッションをして、それはシステムで解決するべきなのか否かを決定します。このフローを大切にしないと、何を解決したいのかという本質を見失ってしまいますので、とても大事なことです。
Willboxが実現したい世界と一緒に走りたい仲間
山田:今後の展望について聞かせてください。
神:『Giho』をさらに多くのユーザーに使って頂き、物流業務の効率化に貢献したいと思っています。また、国内だけでなく世界に広めて、世界的な物流インフラにしたいと思っています。誰もが簡単に『Giho』にアクセスできて、物流が最適化される世界を作りたいですね。ですから、将来的には海外進出も視野に入れています。また、会社としての大きな目標はIPOです。これは投資して頂いた方々と約束したことですので、絶対に守りたいと思っています。IPOがゴールではなく通過点ではありますが、投資家の皆様と応援してくれている物流事業者様たちへの恩返しをするためにも、必ず達成しようと心に決めています。
山田:投資家への恩返しや責任、コミットの意思がすごく強く感じられますね。そのような神さんの人柄が会社の文化を作っているのではないかと思います。
最後にお聞きしたいのですが、神さんはどのような人と緒に働きたいと思っていますか。
神:スキルも重要ですが、強いマインドを持っている方と働きたいと思っています。
物流はレガシー産業ですし、複雑な業界です。それを変えていこうとするモチベーション、仕事をやり遂げる強い気持ちが必要です。それを知らずに入社してしまうと、ミスマッチングになって、お互いが不幸になると思っています。そのため、面接ではできる限り隠さずに業務のことをお伝えしているつもりです。それを知ってもらった上で、「それでもWillboxに入りたい」と思って頂ける方と働けたら大変嬉しいです。
Willbox株式会社
【編集後記】
「物流業界を変えよう」という神さんの熱い想いと、取材の質問に対して一つ一つ真摯に回答して下さる人柄が、とても魅力的でした。また、Gihoが物流事業者にいかに求められているかが分かり、今後さらに事業が拡大して行くだろうと期待の膨らむインタビューでした。神さんの今後のご活躍を楽しみにしております!(山田 )
取材日:2022年1月24日
インタビュアー:山田 直哉 写真:原 康太 編集:神成 美智子