第23回は、「ユーザーさんの、うれしいを創る」をミッションに掲げ、お花の定期便サービス『ブルーミー(bloomee)』を展開するユーザーライク株式会社・久保 裕太郎 さんにインタビューさせて頂きました。ミッションやバリューを浸透させる仕組みづくりや、それが事業の成長にどういった影響をもたらすのか、など、3つのポイントにまとめてご紹介します。
久保 裕太郎 Kubo Yutaro / 執行役員
高専卒業後、メタウォーター株式会社に入社し、アマゾンジャパン合同会社へ転職。国内外の公共インフラ施設や巨大物流拠点の計画から立上げまで、大小様々なプロジェクトを完遂。アグリホールディングス株式会社では執行役員として、一次産業周辺で国内外含む様々な新規事業立上げ等を実行。
2020年9月、ユーザーライクに入社し、D2C拠点の立上げ及び、オペレーション開発、 組織開発、 運営責任者として従事。花卉(かき) 生産者との関係性構築等、様々な業務を管掌。
Point 1: 全職種参加のユーザーヒアリング
NovolBa 西(以下、西):事業が拡大して従業員が増えていく中で、ユーザーライクさんはどのようにミッションやバリューを浸透させ、カルチャーの醸成に繋げているかを教えて頂きたいです。
User Like 久保(以下、久保):我々が大切にしているバリューが3つありますが、その一つに、「ユーザー起点」があります。ユーザーさんが何を求めているのか、何を考えているのかなど、徹底的に調べてサービスをアップデートしており、とても大事にしているバリューです。
西:「ユーザー起点」を社員に浸透させるために、どのような取り組みをされていますか?
久保:全員にこのバリューを理解してもらうために、ユーザーヒアリングはフロントメンバーだけでなく、人事や経理担当者、アルバイトなど、関わる全てのメンバーが参加しています。
また、ヒアリングをして終わりではなく、「ユーザーヒアリング報告会」を月に1回以上開催し、共有しています。そこでは、参加者が主体的になれるように、クイズ形式にするなど楽しみながら体感できるような工夫をしています。
報告会が終わる頃には、ユーザーさんの声をたくさん聞いて、メンバーの士気が上がっているのを感じますし、僕自身も気が引き締まります。
西:なるほど。そういった取り組みを通して、バリューが浸透していくのですね。
久保:そうですね。また、我々が定義している「ユーザー起点」は、ユーザーさんも嬉しいし、事業もグロースすることです。ユーザーさんの意見を受け止めて終わりではなく、常に「事業を成長させる」という意識も持って、取り組んでいます。
Point2: 本音で言い合える関係性づくり
西:ユーザーライクさんは、オフィスに出社し、対面でのコミュニケーションを大切されているとお伺いしました。その理由を教えて下さい。
久保:日々、「ユーザーさんの、うれしいを創る」ため、社員同士が厳しくフィードバックし合うこともあります。そのため、言い合える関係性の土台である心理的安全性が確保されていないと、「これは言うのをやめて、両者の意見の間をとろう」と、ソーシャル・コヒージョン*が生まれてしまうことがあります。
これは、Amazonの創始者であるジェフ・ベゾス氏が大切にしている「顧客第一」主義を貫くためには、こういった馴れ合いは絶対に排除しておきたいと考えられていることです。
そうならないために、日頃からに対面のコミュニケーションを大切にし、本音で言い合えるような濃い関係性を築いています。
また、私たちは「ユーザー起点」でヒアリングした内容を基に「データドリブン**」で戦略策定や意思決定を行っています。採用面接などで、定量データを重視しているカルチャーがあることをお伝えすると、「冷たい組織なのでは」と思う方もいますが、実際は全くそうではありませんよ。
*人間関係を無難かつ良好に維持しようとすることで、さまざまな妥協が起きてしまう状態
**データを収集・分析し、それに基づいてビジネス上のさまざまな課題を判断・意思決定を行うこと
西:建設的な議論にするために、工夫されていることはありますか?
久保:ユーザーライクの人達は、普段は本当に他愛もない話をするのですが、会議になるとぱっと切り替えていますね。そうすることで、白熱した議論ができるのかもしれません。特に、経営層はメンバーとフランクに冗談を言い合える関係作りを意識しています。執務室に卓球台があって、一緒に遊ぶこともあります。
Point3: 小さな積み重ねが、カルチャーを醸成する
西:人数が増えてくると、ミッションや代表の想いが社員に伝わりづらくなりますよね。ユーザーライクさんはどのような取り組みをしていますか。
久保:例えば、本社から物理的に離れているお花を作っている現場では、従業員が見える場所に、ミッションやバリューを伝える掲示物を置いています。また、よりメンバーの心に響くように、読みたいと思えるようなデザインに変えたり、分かり易いメッセージに作り変えたり、頻繁に見直しています。
また、代表がインタビューされた記事は全て共有します。それが会社のミッションの共感に繋がり、ユーザーライクで働くことを前向きに捉えてくれることに繋がります。
こういう小さい積み重ねが、ミッションやバリューを体現することに繋がり、ユーザーライクのカルチャー醸成に繋がっていると思います。またそれは、製造現場では品質担保や生産性の向上に繋がり、自社の競争優位性を高めていると感じています。
一次産業の課題を解決したい
西:久保さんが入社されたきっかけは何でしたか?
久保:前職は、アマゾンの後に転職した一次産業関連のスタートアップ、アグリホールディングスやその関連会社で役員や代表をしていました。
採用のために、人材エージェントさんとお仕事をしていたのですが、エージェントさんから逆にユーザーライクの求人を提案頂きまして(笑)事業内容や世界観がとっても面白いなと思い、入社することになりました。
西:そんな出会いがあったのですね。どのようなところが面白いと感じたのですか?
久保:花業界を変えていく事業モデルですね。前職の時から、一次産業を底上げするためには、いかにして消費を作るかに課題を感じていました。ユーザーライクは、廃棄される花も扱っていますし、業界の課題解決に貢献している事業です。
それと、代表の武井や取締役の戸口と会話をしていて、雰囲気が合いそうだと感じたこともポイントでした。
西:「一次産業の課題を解決したい」、となぜ思ったのですか?
久保:父方の実家が米農家で、農業が身近にありました。最近は、高齢化や病気などで、多くの農家が引退し、耕作放棄地や空き地がたくさんできてしまっています。
一次産業は国力の源泉の土台でもあると思っているので、それを解決したい。そうでないと、日本は貧しい国になるのではと、危機感を持っており、自分にできることは何かを考えていました。
西:実際に働いてみて、ユーザーライクのどんなところに惹かれていますか?
久保:やっぱり、徹底的にユーザーさんに向き合い、意思決定をするところです。
たまたまユーザーさんのニーズとプロダクトの提供価値が合致しただけですと、売上に限界がありますし、事業が与える世の中への影響は小さくなってしまいますから。
西:久保さんの、ユーザーさんに向き合う姿勢に強い一貫性がありますね。
本日はありがとうございました!
久保:こちらこそありがとうございました。
ユーザーライク株式会社
2014年9月に設立。会員数10万世帯を突破する日本初・最大級のお花のサブスク「ブルーミー」を軸として事業を展開し、「ユーザーさんの、うれしいを創る」をミッションとしています。
■ bloomee(ブルーミー)
「ブルーミー」は、会員数10万世帯を突破している、日本初・最大規模の花のサブスクリプションサービスです。現在、200店舗以上の提携生花店から、毎週季節の花をポストにお届けしています。プランは550円・880円・1,980円の3種類から選ぶことができます。
取材日:2022年3月15日
インタビュー・文:西 かなこ
写真:原 康太
校正:山田 直哉