投資家、ベンチャーキャピタリスト、VCで働く方々のパーソナリティーにフォーカスして、様々なお話を伺う企画。
第2回は、独立系ベンチャーキャピタルの株式会社ANOBAKA(以下、ANOBAKA)で、コミュニティ・マネージャーとして活躍する槙原 ありさ さんに、これまでの経緯や、スタートアップのコミュニティの在り方についてインタビューさせて頂きました!
槙原ありさ Makihara Arisa / コミュニティマネージャー
ANOBAKAのコワーキングスペースである”ANOBASHO”の企画・運営、100人規模の資金調達イベントの開催など、VCや資金調達フェーズに縛られない横断的なコミュニティづくりに携わる。
また、採用や企業PRを初めとした投資先のサポートも行っている。
“人と人をつなぎたい” コミュニティマネージャーになるまで
NovolBa 西(以下 西): コミュニティマネージャーになるまでの経緯を教えてください!
ANOBAKA 槙原(以下 槙原):就職活動のときは、スタートアップやVCの存在を知らず、新卒ではハウスメーカーに入社しました。コミュニティマネージャーになったきっかけは、学生時代の就職活動の在り方や、企業の選び方に違和感を持ったことです。
人生は人それぞれですが、もっと自分の人生で何をしたいのか、自分のありたい姿や送りたい人生から逆算して企業を選ぶのが本質的だと思いました。ですが、周りの就活生をみると、就職活動の時期になってはじめて、就きたい職や志望動機を考えはじめ、人気ランキングや知名度など、周りの価値基準で就職先を選んでしまいます。
こういった就職活動に違和感を持ち、もっと自分軸で企業選びができるようなサポートを始めました。
西:具体的に、学生に対してどのようなサポートをされていたのですか?
槙原:就職活動とは関係ないような、「いつ結婚したいか」「どう老後を過ごしたいか」といった質問をすることで、自分が大切にしたい生き方を認識してもらい、その上でどの職種や会社を選ぶべきかを、学生さんと一緒に考えていました。
西:自分の就活を振り返ってみると、内定をもらえるまでは特に孤独を感じやすかったなと思います。寄り添って考えてくださる人がいることは、学生さんにとって心強いですね!
槙原:ありがとうございます。ただ、難しかったのは「どういう人生にしたいか」から一緒に考えても、大半の人は人気のある会社を選びます。結局、体感的には就職活動の現状を変えることができませんでした。
「私の介在価値はあるのかな」と悩んでいた時に、ある”起業を志す学生”と出会いました。
その学生から 「就職するか」、「起業するか」の相談をうけました。
自分自身に起業の経験がないことから、「起業しなよ」と自信を持って背中を押すことができず、悔しい思いをしました。それなら、言える人を繋げればいいと思い、同じテーマに取り組む起業家を紹介することにしました。
西:損得なく、この時から既にコミュニティマネージャーの役割をされている・・・!!
槙原:いえいえ、ただ起業家さんとの接点を作っただけです。
同じテーマに対して課題を持っている二人なので、話はとても盛り上がりました。そして、人と人を繋げる役割をした時に、私は幸せを感じました。
また、起業家の想いを聞くことも好きで、それを応援したいと思い、ビジコン運営のお手伝いをしていました。ある起業家交流会でVCの方に会い、「人と人を繋げること」が仕事として存在することを初めて知りました。
その時に出会ったのが、ジャフコグループ株式会社の清田怜さんと、インキュベイトファンド株式会社の清水夕稀さんです。お二人にも相談をさせて頂きながら、紆余曲折あり、最終的にANOBAKAに転職しました。
コミュニティマネージャーの仕事とは
西:ANOBAKAでのコミュニティマネージャーのお仕事を教えてください!
槙原:投資先であるスタートアップが集まるコミュニティを企画・運営し、支援して行く仕事です。具体的には、「ANOBASHO」というANOBAKAのコワーキングスペースの運営、代表者向け勉強会の企画、その他イベントの企画を行っています。例えば、『ANOBAKA PITCH』という資金調達の大きなイベントですと、約120社にご参加いただくこともあります。他にも投資先から相談があれば、採用支援やPR支援も行います。
西:スタートアップにとって、コミュニティマネージャーがいるといないとでは、入ってくる情報量が変わるので、とっても重要なお仕事ですね!
スタートアップコミュニティの一つで、居抜き物件を共有するグループがあるとお伺いしました。どんな経緯で立ち上げることになったか、教えてください。
槙原:あるスタートアップが、社員のための憩いの場として、オフィスにバーカウンターを造作しました。移転の際に、原状回復費として80万かかると言われ、そのまま入居してくれる企業を探して欲しいと我々に相談がありました。原状回復のような、価値を生み出さないものに費用がかかることが、私にはとても衝撃でした。80万円あれば、新規事業を始めたり、広告を出したり、人が雇えたり、できることがたくさんあります。
スタートアップのタイミングで移転ができることが理想ですが、通常は入居期間が2年という縛りがあったり、原状回復費用がかかります。
我々もSNSで声掛けはしたのですが、結局見つからず、そのスタートアップは原状回復費用を支払いました。
もっと移転しやすい仕組みをつくれないかと考え、株式会社オフィスバンクの方に相談をして「居抜きコミュニティ」をつくることになりました。
西:スタートアップのニーズに合っていない不動産のビジネスモデルに課題を感じたということですね。居抜きコミュニティではどのようなことをされているのか、教えてください。
槙原:そもそも居抜き物件の情報は、オーナーの意向であまり公開したくないという意向があり、それならばクローズドで情報を共有できるグループを作ろうということになりました。twitterでスタートアップに呼びかけたところ、すぐに30社ほどが集まり、現在は130名以上の企業の代表者が集まるコミュニティになっています。
参加者はANOBAKAの投資先に絞っておらず、様々なVCさんにも入って頂いております。
西:居抜き物件を選んだ理由は何ですか。
槙原:最初にオフィスを持つ際、どこにオフィスを構えるのか、何の家具を購入するかなど、時間と手間がかかると聞きます。内装が不要で、家具備え付きであれば、代表者は意思決定が少なくすみます。
例えば、NovolBaさんのサービスなら契約期間が短いので、一旦入居して他を探すことも、継続することもできます。契約期間を柔軟に対応してもらえるのは利用しやすいなと思いました。
西:NovolBaについてのコメントも(涙)ありがとうございます・・・!
スタートアップコミュニティの在り方について
槙原:前職時代にシリコンバレーに行きました。アメリカではコミュニティが根付いており、起業家と投資家が集まって活発な情報交換がされています。日本では、VCごとにコミュニティはありますが、その枠を超えたいと思っています。例えばSaaS企業同士、不動産テック同士など、業界ごとで横断的に繋がれる場所があればよいなと思います。
また、どのスタートアップの方も同じような悩みを持っていると思うので、気軽に相談ができる環境をつくっていきたいです!
起業家を最後まで信じ続ける
西:最後に、ありささんのミッションを教えてください。
槙原:「起業家のビジョンを最後まで信じて支え、信頼される存在になる」が、私のミッションです。
事業が順調に進んでいるときは、みなさん応援してくれます。ですが、上手くいっていないときこそ、支えてくれる存在が必要だと思っています。
あるスタートアップさんが資金が無くなるかもしれない時に、誰にも相談をしないという状況が起きました。それを知り、自分は相談される存在でありたいと思いました。「起業家を最後まで信じて、支えられる関係であり続けたい」と思っています。
なぜそれを強く思っているかというと、私は松岡修造さんがすごく好きでして(笑)プロの世界は大きなプレッシャーもあって、いつ怪我をして選手生命が終わるか分からない厳しい世界だと思います。
でも、あんなに全力で自分を応援してくれる人がいたら、どれだけ大変な時でもすごく元気を貰えますよね。
私も起業家の方と、そういう関係であり続けたいなと思っています。
西:松岡修造さん!(笑)ありささんの「スタートアップを支えたい」という熱い想いにスタートアップも集まってくるのだなと感じました。本日はありがとうございました!
株式会社ANOBAKA
“Empowering Mad Dreams”をビジョンとしてシード期のスタートアップを対象としたベンチャーキャピタルのファンドを運営。
「チャレンジ」を至高の概念とし、起業家に勇気を与え、夢を実現させるプロフェッショナルファーム。
【居抜き物件情報グループ】
1日1物件、スタートアップのための居抜きオフィス物件情報をクローズドにて投稿しております。宜しければご活用ください!
取材日:2021年11月9日
インタビュアー: 西 可菜子 写真: 原 康太 編集:山田 直哉