革新的な挑戦に躍動するスタートアップとベンチャーキャピタル、大企業の次期経営幹部などキーパーソン限定の新産業創造プラットフォーム『STORIUM』。
5月25日にオンラインで開催されたシード、アーリーを中心とした4社のリーダーズのピッチに潜入した。
宇宙視点で地球をハック、衛星データ解析プラットフォーム
1. 株式会社Solafune・上地 練 氏
人工衛星が取得する地球の観測データ、すなわち衛星データを利用するためのアルゴリズムの開発と、それを提供するプラットフォームの開発をしている。
衛星データは、石油の貯蔵量による石油の先物取引、災害の被害状況を定量的に把握による査定者被害査定のデジタル化、農作物の健康状態・育成状況のモニタリングなど多岐の分野での活用が可能である。
膨大な衛星データが日々生み出されているが、民間での衛星データ活用は、高額な費用と長期の開発期間を要することから、進んでいないのが現状。そんな課題を解決し、あらゆる産業に衛星データとアルゴリズムを届け、技術を民主化していくという目標を掲げるのが、Solafuneだ。
Solafuneの運営するプラットフォームでは、AI開発に必要なデータを公開し、世界中の開発者によるコンテストを行う。上位にきたアルゴリズムを、ビジネス利用に最適化する形で改善し、企業向けに提供する。これにより、従来とは異なり、企業側は技術開発・お金・時間の3方向のリスクを負うことなく、衛星データを自社事業に活用することが可能となる。
全ての会社にデータドリブン経営を
2. 株式会社Hogetic Lab・大竹 諒 氏
一般的に、データ分析の仕事の8割が、最初のステップである「データの前処理」だと言われている。
生産性の低い工程にかかる時間を減らし、データ分析者が、価値ある仕事にもっと集中できるようにしたい、と思い創業。データ収集に特化したデータプラットフォーム『Collectro』を提供する。
Collectroが他のデータ収集サービスと大きく異なる点は、「データ量やユーザー数の制限がない」、「データの種類の豊富さ」、「自社内で完結するセキュリティ」という3点である。
Collectroが活用される場は、消費者変化が早く、自社データ以外のデータ活用が求められる業界である。
消費者を中心に考えると、コト消費でエンタメ、モノ消費で小売がコアターゲットであり巨大市場で活躍が望める。
障害を障害でなくするテクノロジーを
3. LIFEHUB株式会社・中野 裕士 氏
AaaS(Augmentation as a Service)、LIFEHUBの提唱する理念。
これは、高度なテクノロジーによって「人間の体を代替するデバイス」を生み出し、全ての人から身体的な制約をなくすというものである。
その第1弾として、次世代の椅子型モビリティ開発を行っている。
これは、車いすユーザーを対象としたもので、彼らの足を代替し健常者と同じように生活させるものである。従来の車いすでは不可能であった動作を可能にすることを目標に、開発が進められている。
競合他社の開発する高性能な車いすと比較し、「車いす然としていない」、「乗っていてカッコイイ」、「障害者と思われない」製品を目指している。
2023年にプロダクト発売予定、2025年にはさらにその廉価版を発表する計画である。
持続可能なエネルギーを必要なときに必要なところへ届ける
4. Tensor Energy株式会社・堀 ナナ 氏
2022年の制度変更により、再エネ事業者に課されたマネジメントを効率化し、持続可能な成長を支えることを目的としたサービスが、Tensorクラウドである。
様残なデータに基づき、今後30年の予測を、30分単位で算出したシミュレーションが行えるサービスである。
これにより、新制度の下でも新規の投資を続けて発電事業を行うことができる。
さらに、投資検討にかかる日数を半分に短縮することで、意思決定のスピードを加速していくことが可能となる。制度変更に合わせ、今年の1月から動き出したTensorクラウドであるが、2030年にはターゲットである分散型の太陽光風力蓄電池の市場は1000億円への成長が見込まれる。さらに2050年にはさらに倍になると予測され、大きなポテンシャルを秘めたサービスであると言えるだろう。
【編集後記】
今まで扱いにくかった衛星データの利用を容易にする、データ分析における「最も複雑かつ生産性の低い工程を簡略化」する、障害を持った人の生活を容易にする、再エネ事業者の経営を容易にする…、いずれのサービスも、誰かにとっての壁(ペイン)を取り除く、素晴らしい事業であると思いました。
科学が発展し、様々なビジネスが生まれている現代においても、まだ解決されていない課題は多い。
「誰かの困難を取り除く」ということに、大きなビジネスチャンスがまだまだ隠されていると感じた。
取材日:2022年5月25日
記事作成:佐々井 統太
校閲:原 康太