革新的な挑戦に躍動するスタートアップとベンチャーキャピタル、大企業の次期経営幹部などキーパーソン限定の新産業創造プラットフォーム『STORIUM』。
12月21日にオンラインで開催されたスタートアップ企業のピッチ#11に潜入した。
クラウドサービスのセキュリティチェックを支援する
1. 株式会社Conoris Technologies
株式会社Conoris Technologiesは、企業がクラウドサービスを導入する際に実施するセキュリティチェックを支援するサービス、「Conoris」を提供している会社だ。企業が何かしらのクラウドサービスを導入する際、通常はその企業独自のセキュリティチェックシートを使って多大な労力と時間をかけて審査を行っている。本業務を効率化し、継続的なセキュリティ・リスク管理も実現できるのが「Conoris」の特徴である。
取引先がセキュリティ関連で何か問題を起こしてしまうとそれが自社にも降りかかってくる可能性があるため、そういった事態を避けるためにもクラウドサービスを提供するベンダー(取引先)やプロダクトのリスクマネジメントを行うことでできるプロダクトである。
日本ではこのようなサービスはまだ馴染がないかもしれないが、代表の井上氏によると、海外では2026年までに1.5兆円ほどのマーケット規模になるとのことだ。しかし、海外のサービスは日本の企業に合わなかったり、価格が高いなど、日本ではあまり展開されてこなかった状況があるという。
一方、「Conoris」は、日本の商習慣にあった取引先やサービスのリスク管理をサポートすることを目指している。現在は、導入する企業とベンダーの間でExcelシートを利用したやり取りを実施していることが多いが、これをオンラインで実行できる。また、リスク状況が分かるマネジメント機能を持ったダッシュボードなど、使いやすいインターフェースも用意している。
2022年に、有料ユーザーとしてすでに売上高数兆円規模の日本の大企業が利用を開始しているそうで、2023年もこのユーザーとの関係を強固にしながらプロダクトをブラッシュアップしていく予定とのこと。それ以降は、さらにサービスの領域を拡げながらアップセル・クロスセルを通して、2028年以降には日本の大企業向けにIT・GRC*の領域で総合的に支援できる日本を代表する企業に成長したいという大きな目標を掲げている。Conoris Technologiesを起業する前に、井上氏はVCとして多くのスタートアップと伴走してきた知識・経験を活かして、井上氏自身が大きな目標を実現することに期待をしたい。
*GRC・・・Governance・Risk・Complianceの略。 経営の意思決定効率を高めるための統合的リスク管理手法。
教員が外部人材を活用できる仕組みを創り、教育業界の課題を解決する
2. 株式会社LX DESIGN
株式会社LX DESIGNは、教育業界の課題解決のために学校・教育機関と外部人材をマッチングする「複業先生」というサービスを提供している。
代表の金谷氏によると、日本は100万人の教員に毎年10兆円が使われているが、主要国内産業の中で生産性が最下位となっているとのこと。さらに、毎年1万人の教師が学校に入るが半分の5,000人がうつ病などで職を離れており、働いている教師の半数が長時間労働による過労死ラインで働いている状態にあること。これらの問題について、国も現場も上手く対応できていないため、全く改善されていない状況とのこと。
金谷氏は、小学校で4年間教員をしていた経験から学校の課題を解像度高く捉えており、それをもとに現在のサービス、「複業先生」の提供を始めた。学校で働いていない休眠免許保有者が数多く存在。さらには教育にかかわりたいという民間企業等も「複業先生」として教壇に立つことが可能だ。「複業先生」は学校とのマッチングの機会だけでなく、学校教員出身者によるオンボーディングも 提供している。すでに現時点で、学校は300校ほどが利用しており、1,000名以上が複業先生に登録 。登録者は大学生、大手企業からベンチャーまで多彩な民間企業、NGOなどの各種団体など様々。
学校は全国・離島に津々浦々あるため、サービスの認知・普及がとても難しい業界でもある。そこは、 自治体やメディアを巻き込んでいくのと、すでにベネッセグループとも資本業務提携をして営業連携等を開始している。教育業界はペインの深い業界ではあるが、それだけにLX DESIGNの価値が高まれば利用者、利用する学校は伸びていくと思われるので、ぜひ今後の拡がりを期待したい。
「OPTEMO」がインサイドセールスを最適化する
3. 株式会社ジェイタマズ
株式会社ジェイタマズは、インサイドセールスの業務をアップデートする「OPTEMO」を提供している会社だ。
BtoB営業の業界では、顧客がどこかの企業のWebサイトを訪問し、問合せフォームに入力し、商談までいく確率はとても低い。代表の小池氏によると、その確率はWebサイト訪問者の1%ほどとのことだ。Webサイトを訪問してくれる1%との顧客と商談はできるが、残りの99%の見込み顧客と全くコミュニケーションが取れていないのが企業のWebサイトの実態である。だからこそ、多くの企業で問合せを増やすためにチャットボットなどを導入しているが、顧客にとっては必ずしも良いWeb体験ではなく、顧客と企業が良い関係性を構築できるものになっていない。
この課題に対して、新しいソリューションを提供するのが「OPTEMO」だ。このサービスは、問合せフォームへの入力やアポイントの調整をせずに、”その場で商談する”というWeb体験を実現している。そこには3つの特徴があり、一つ目が、顧客が自社のWebサイトのどこのページを、どのように見ているのかをリアルタイムで可視化できること。二つ目が、顧客がその時に見ているウェブサイト上でそのまま音声通話が可能なこと。三つ目は、Webサイトの訪問者の中でアプローチすべき見込みの高い顧客が来ると、OPTEMOから通知が来ること。この三つを組み合わせることで、Webサイトを訪問した見込みの高い顧客が離れてしまう前に、最適なタイミングでコミュニケーションが取れる。
さらにこのサービスの良いところは、現在使っているWebサイトに専用タグを入れることですぐに使えて、導入後はOPTEMOを常に見ている必要はなく、温度感の高い顧客が訪問しているという通知が来たら対応すればいい、ということだ。これであれば、企業にとって導入ハードルが低く、インサイドセールスを最適化する方法の一つとして検討できる。
実際にどのようなインターフェースで運用ができるのか、デモで見るのが一番分かり易いので、インサイドセールスの改善に興味のある企業は一度ジェイタマズに問合せして体験してみるのが良いと感じた。また、このような新しいサービスが今後様々な企業に拡まって、効率的で最適な企業間のコミュニケーションが増えていくのがとても楽しみである。
記事作成:山田 直哉