2023年6月28日(水)から3日間、京都で行われた日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2023 KYOTO」は、過去最高の10,000人規模となり、大盛況のうちに幕を閉じました。
IVSのプラチナスポンサーでもある GrandTech Cloud Servicesは、2017年創業以来、6年余りで東南アジアに数百社という顧客をもち、アジアを席巻するクラウドサービス事業を展開する台湾企業です。親会社であるGrandTech社は、台湾屈指のソフトウェア・ディストリビューターで、その強固なユーザベースとグローバルなネットワーク、資金力を活かして事業を拡大しています。
NovolBa代表の鄧 雯(トウ ブン)が、GrandTech Cloud Services(以下、GCS)ボードアドバイザーで日本窓口のEric Wei(エリック・ウェイ)氏、CSOのArthur Huang(アーサー・フアン)氏に中国語でインタビュー。
「クラウドサービスの提供だけでなく、日本のスタートアップのアジア進出をサポートしたい」という、GCSの思いを伺った。
魏 嘉宏 エリック・ウェイ
GrandTech Cloud Services Japan / Board Adviser
【Profile】台湾出身。台湾の国立成功大学、同大学院を卒業後、来日。「アマゾン・ジャパン」で様々なサプライチェーンシステムを導入やKindle事業を立ち上げ、「グーグル・ジャパン」ではGoogle Playのアジア地区でのEntertainmentビジネス展開を図る。Googleの推薦で米ペンシルベニア大学ウォートン校エグゼクティブ・マーケティング・アカデミーを修了。「DiDiモビリティジャパン」でのCPOを経て、デリバリーヒーロージャパンのCEOとしてフードデリバリービジネス「foodpanda」の日本事業を統括。 20年以上にわたるeコマース分野でのビジネス開発の経験を活かし、2021年Dimes株式会社を創業、代表取締役に就任。 スキルと時間をグローバルにマッチングするプラットフォーム「timelyhero」を運営している。 |
ユニコーンを目指すならグローバルに!
鄧:エリックさんは誰もが知るグローバル企業の日本法人で仕事をされたり、海外企業の日本法人立上げや代表をされたりと、日本でのビジネス経験が豊富でいらっしゃいますね。
日本のスタートアップ、マーケットはどのように映っていますか。
Eric:日本の創業者はみなさん優秀で志が高いですよね。でも海外に進出する経験が少ない、繋がりがないから、方法がわからなくて悩んでいる人が多い気がします。
これからの時代、少子化で日本のマーケットは縮小傾向にあるので、ユニコーンを目指すのであれば、グローバル化をもっと視野に入れるべきだと思います。
岸田政権が「スタートアップ育成5か年計画」を発表し、スタートアップが益々増え、手厚いサポートが受けられることも追い風です。
また、日本人の気質としてアダプションが苦手な人が多いので、海外進出に関しては、経験がある会社と一緒に行くのが最適解だと感じますね。
鄧:確かに。私も中国人ですが、同じような印象を持っています。
他に特徴はありますか?
Eric:日本人とのパートナーシップは、他国の方に比べると信用を得るまでには時間がかかります。しかし、一度信頼関係が結べると、価格が安いサービスが出てきた時に、簡単に裏切ったりはしないように思います。
ビジネス上の人間関係だとしても、損得の経済的メリットだけではなく、会社・人のデューデリをしているのだと感じています。
日本のスタートアップに最適なクラウドサービスを
Arthur Huang アーサー・フアン
GrandTech Cloud Services / CSO
【Profile】台湾出身。台北理工大学・電気工学部コンピューター学科、NZオークランド大学コンピューター学部卒、ニューヨーク市立大学でMBA、国立台湾大学でEMBAを修了。 深セン振興技術基金のパートナー、世界最大手の電子機器受託製造会社「鴻海精密工業 (別名:Foxconn)」で投資、M&A、運営管理、IR/PRを担当。その後、ネットワーク機器会社を共同創業し、クロスボーダー投資、M&Aで20年以上の実務経験を持っている。2019年よりGrandTech Cloud Servicesにジョインし、世界No.1産業用コンピューターであるAdvantechの最高投資責任者を務め、投資戦略の策定と実行管理を担っている。 |
鄧:日本にようこそ!お会いできて光栄です!(欢迎来到日本!很荣幸能够见到您!)
Arthur:今日はインタビューの時間を作ってくれてありがとうございます!(感谢今天为我们抽出时间采访!)
鄧:GCSが提供しているサービス内容を簡単にお聞かせください。
Arthur:先に時代背景と私たちの変遷をお話します。親会社のGrandTechは、1991年に設立された創業30年ほどの会社です。1991年~2013年は台湾のインターネット、クリティブ産業を代理店として支えてきました。2013年~2021年はSaaS、2022年からDXOを提供し、売上総額 400億円くらいの会社です。
GCSは2017年に香港からスタートし、インドネシア、マレーシア、シンガポールなど、東南アジアで既に数百社の顧客がいまして、中にはユニコーン企業もあります。2020年からは自社でマルチクラウドプラットフォームを開発し、クラウドコストの最適化を実現しています。
*DXO– DX+Organization、ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること
クラウドのコストは、業種業態にもよりますが、全体支出の6~60%を占めるといわれています。
今までは代理店業という形だったのですが、販管費が高く利益が薄い、ベンダーとお客様の板挟みになってしまうケースがよくありました。
例え話ですが、台湾では両親が共働きで乳母に子どもを任せる家庭が多いのですが、乳母が良すぎても悪すぎてもイヤ、という現象が起こるんですね。代理店が良すぎると、ベンダーとしては嬉しい反面、お客様を奪われるような気持ちになるのです。
そのため、自社のプラットフォームを持って、従来のコンサル型ではない、汎用性があってコピペできるモデルに変えました。これは私たちの挑戦です。
日本のスタートアップを全方位でサポート
鄧:クラウドサービスを最適化し、コストを削減する以外にも、GCSの強みがあるんですよね?
Eric:はい、私たちには3つの強みがあります。
1. 資金面
クラウドを最適化して再構築することで、クラウドにかかるコストをカットをします。
2. 海外進出のノウハウとネットワーク
既に6か国で展開しているため、アジアのスタートアップ、投資会社、事業会社などパートナー企業を紹介することができます。
3. CVCとしてサポート
成長してスケールしていけば、クラウドのコストも増えていきます。私たちはCVCとして投資もしています。
鄧:カネ・ヒト・モノ…スタートアップに必要なすべてがそろっている気がします!
なぜ「スタートアップ」にこだわるのでしょうか。
Arthur:やらないことを決める「引き算の経営」です。魅力的な、伝統産業のDXには手を出さず、あえてスタートアップにフォーカスすると決めています。
シード期は先がわからず不確実性が高い。クラウドに対する投資も、そこまでかけられないと思うので、我々は特にシリーズA,B以降の拡大フェースにあるスタートアップのクラウドサービスと、海外進出のサポートをしていきたいと考えています。
海外で成功する秘訣
鄧:海外に進出する際に、どのようなことを気を付けていますか?
Arthur:まず一番大切なことは、少数精鋭のローカルチームを作ることです。「郷に入れば郷に従え(入郷随俗)」という言葉の通り、その土地のビジネス慣習を一番理解しているメンバーに任せるべきです。
2つ目は「コミュニティの輪に入る」こと。ローカルメンバーがローカルのコミュニティに入って広げていくことが大切です。
3つ目は「リソースの開拓」。その土地で使うことができるリソース、ネットワークをどんどん開拓することが重要です。
国内だけで活動するのと、海外に出るのでは、市場規模が全然違ってきます。GoogleやSalesforceのように、海外で展開している会社の方がバリュエーションが圧倒的に高い。
日本のスタートアップの皆さんも、我々とアジアに出ましょう。
番外編 ~日本のような「文武両道な経営者」が少ないって本当?~
鄧:アーサーさんは、元サッカープレーヤーで、当時は台湾No.1ゴールキーパーとも言われていたそうですね!
Arthur:事前調査がすごいですね(笑)随分と昔の話ですが、国際マッチでオーストラリアと対戦したことがあります。
鄧:日本では積極的に文武両道で子供に運動をさせますが、台湾も中国も違いますよね。学歴社会で競争も激しいので、私はひたすら勉強だけさせられました(笑)
Eric:私はバスケットボールをずっとやっていましたが、確かに珍しかったかもしれません。私たちからすると、日本人の子供が真冬に短パンで外を歩いているのが不思議でしょうがない(笑)暖かくして風邪をひかせないようにするのが常識で、子供に過保護な家庭が多いですね。
日本人のように子育てに対してストイックな、厳しい部分はないですね。「可愛い子には旅をさせよ」みたいな言葉や考えがそもそもないですから。
鄧:全くおっしゃる通りです!
あと、貧乏な家の子ははやく自立する、とも言われています。私は両親が共働きだったので、小学生からお料理をしていましたし、夏休みとかは一人でお留守番していたので、テレビっ子になりました(笑)
その点では、裕福な家庭の子は苦労を知らないから性格が悪くなる、ダメになるとも言われていますね。
Arthur:これは中国と台湾の共通認識ですね。
会社概要
会社名:GrandTech Cloud Services Japan株式会社
設立:2023年5月
住所:港区三田1-2-18 TTDビル
事業内容:クラウドサービス、スタートアップサポート
Website:https://www.grandtechcloud.com/jp
問合せ窓口:千田 斎 ✉itsuki.chida@grandgtechcloud.com
合言葉は「Be Friend with Start up!」
取材日:2023年6月28日
インタビュー:鄧 雯
編集/文/写真:神成 美智子
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